30年以上の歴史を持つ「老舗ブラウザ」であるIEが、間もなくサポート終了を迎える。今後はMicrosoft Edgeをはじめとする他のブラウザへの移行が必要となるが、実態として企業の対応はどの程度進んでいるのか。
キーマンズネットは2022年3月11〜18日にわたり「IEの利用状況(2022年)」に関する調査を実施した。企業における「Internet Explorer」(以下、IE)の導入状況や利用用途、サポート終了に伴う対策の有無などを調査した。多くの回答者がサポート終了を認識している一方でIEの利用を続けている状況やその背景、人気の代替策などが明らかになった。
初めに、勤務先で使用しているWebブラウザを複数回答で聞いたところ、以下のような回答を得た。
最も多かったのは「Google Chrome」で、次に「Microsoft Edge」(以下、Edge)「IE」「Firefox」「Safari」と続く。IEは「Windows 10」以降のWindows端末にもインストールされており、2022年6月15日のサポート終了が迫る中でも利用率は高い。
サポート終了後、どうしてもIEを使いたいユーザーに向けて、MicrosoftはEdgeの「IEモード」を提供する。しかし、2022年の確定申告において国税庁が提供した「e-Tax」が「IEのみの対応、EdgeやEdgeのIEモードは対応不可」としていた例のように、同モードは全ての機能を代替できるわけではない。そのような状況に、企業はどう対応しているのか。そこで、質問をIEの利用に絞って移行や対応の状況を聞いた。
IEの利用状況は上図の通り、現在も「使っている」という回答が48.9%に上り「使っていたが、やめた」(30.6%)、「EdgeのIEモードを使っている」(10.3%)と続く。「その他」の回答には「官公庁が指定するソフトを使用する際にのみに使う」や「基本的には使わないが(Webアプリなどの)動作検証のために使うことがある」などのコメントがあった。サポート終了の認知度は高く、9割超が「終了秒読み」であることを知っている。
IEを「使っている」と回答した方に限定してどのように使っているのか、具体的な業務内容を聞いたところ、以下のようなコメントが寄せられた。
社内システムや金銭の授受が絡む業務、取引先から指定されている業務システムなどにおいて「脱IE」ができていない状況が見える。これらはいずれも改修や移行の手間が大きく、ビジネスにおいて利益に直結しないため、モダナイズが後回しにされやすい領域と言える。また、Edgeへのシステム移行を完了したケースでも「移行以前のデータは旧システムでしか参照できない仕様になっている」といった声があるように、移行に積極的な企業においても、歴史的なブラウザからの完全な脱却には苦心しているようだ。
前述したように、IEは2022年6月15日にサポートを終了する。企業はそれを見据えてどのような対応を進めているのか。
IE終了に伴う「対策の有無、対策をする予定の有無」を聞いたところ「Google Chromeなど別のブラウザに移行した」が最も多く36.3%、次いで「EdgeのIEモードを使う予定」(34.6%)や「EdgeのIEモードに切り替え済み」(20.0%)などが上位に挙がった。
別のブラウザや他のシステムへの移行が4割ほどであるのに対し、EdgeのIEモードへの切り替えは「予定」を含めて54.6%ある。対策の「主流」はEdgeのIEモード使用になるようだ。
ただし、同モードも2029 年でサポートを終了することが発表されている。終了後はIE対応コンテンツが一切閲覧できなくなる可能性もある。同モードの使用もあくまで一時対応である認識が必要だ。
最後に、本調査を通じて、IE利用について業務/業務外を問わず多くの意見が寄せられたので、いくつか紹介したい。
サポート終了に向けた切り替えを推奨するもの、すでに順調に移行を済ませたもの、本当は使い続けたかったものなど、さまざまな声がある。移行を望まないという回答や移行できないことを嘆くコメントもあり「老舗ブラウザ」ならではの悲喜こもごもが見える。「長年使用してきたが、良いツールであった」とのコメントもあり、回答者がIEとの別れにさまざまな思いを抱いている様子が見えた。
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