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経営者の給料が高い企業は業績が悪い 「もらいすぎCEO」の弊害とは

人材不足を背景に人件費が上がっているとされる。もし一般従業員がその恩恵を感じられていないのだとすれば、CEOの報酬が多額すぎるのかもしれない。

» 2022年05月09日 08時00分 公開
[Ryan GoldenHR Dive]
HR Dive

 株主擁護非営利団体の調査によれば、CEOの給与額が株主から「多額すぎる」として否決される例が増加している。2021年は16の企業において、CEOの給与パッケージが株主の半数以上から拒否された。2020年の10社、2019年の7社と比べて大幅に増加しており、株主はCEOの過剰な報酬を問題視している。

 ある求人サイトの調査によれば、2021年は大企業のCEOと従業員の賃金差は平均して2202%に上った。経済政策研究所を含む別の機関の調査によれば、この格差は1970年代から拡大が続いている。

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 株主による給与パッケージの拒否には、特にコロナ禍における対応への不満が反映されている。パンデミックの影響で業績が変動する中、報酬額を業績に連動させるつもりのない取締役会の振る舞いに怒った株主が、CEOの給与パッケージを拒否したという。

 米国の株主擁護非営利団体(米国ESG投資推進NGO)のAs You Sowによれば、CEOの報酬は過去の実績では株式総合利回りとのとの相関はない。むしろ「過剰な報酬を受け取った」CEOのいる100社の業績は、As You Sowの2015年以降の年次報告書においてS&P 500企業の等加重平均を下回っていた。

 As You Sowは報告の中で、企業業績を加味した給与やCEOと従業員の給与比率、給与パッケージに反対票を投じた機関投資家の割合などの指標に基づく計算式で、これら100人のCEOをランク付けしている。Paycom、Norwegian Cruise Line、General Electric、T-Mobile、NikeのCEOが同リストの上位5位を占めた。

 企業は2021年末から2022年初めにかけて、役員や管理職以下の従業員を含め、広範に賃上げを実施した。しかし、最近のインフレ懸念によって財務部門は今後の賃上げにブレーキをかけている。

 また、最近の役員報酬の引き上げは、リーダー候補に有利な採用市場を反映していると見られる。データ分析およびコンサルティング企業のGlobalDataは2022年1月、2021年におけるCEO、CHRO(最高人事責任者)、CFO(最高財務責任者)などの役職の求人は、2020年と比較して「35%増加した」と発表した。

 As You Sowの役員報酬プログラムマネジャーであるロザンナ・ランディス・ウィーバー氏は、コロナ禍における取締役会の振る舞いに株主が怒っていることを指摘した上で「今こそ特定の悪習だけでなく、より多くの株主が給与の総額に反対票を投じるべき時だ」と述べる。同氏によれば、CEOの報酬の増加は不当であり、株主の利益にならない。

 米国ではCEOと平均的な労働者の賃金格差の大きさが知られ、役員報酬が正当であるかは一般市民の間でも論争の的になっている。

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