今年も2022年6月6〜10日にわたって開催された「WWDC」(世界開発者会議)。ティム・クック氏による初日の基調講演では、AR/VRのヘッドセットの発表が期待された。そんな中、「ARが普及しないのはAppleのせいだ」とのうわさが流れている。
このところ「VR」(仮想現実)技術によって仮想空間を生み出す「メタバース」がバズワードとして盛り上がりを見せる。その一方で、現実世界を拡張させる「AR」(拡張現実)にも期待が集まる。デバイスによって“拡張された”現実世界を実現するAR技術は、仮想空間であるVRとは異なるユーザー体験が可能だ。
ただ、AR技術やARコンテンツの普及を妨げている企業があるという。その企業とは、あのAppleだ。同社CEOのティム・クック氏は「ARやVRがテクノロジーの姿を大きく変える可能性がある」とここ数年で幾度も言及しており、「Appleの将来にとっても非常に需要」とも語る。なのに、なぜ普及の妨げとなっているのか?
この件を報じたのは、Tech系サイトのProtocolだ。2022年5月9日の記事によれば、Appleは1000人超のエンジニアチームを構成し、ARデバイスの開発に取り組んでいるという。
「Appleは2022年中に『Wi-Fi 6E』に対応したAR/VRヘッドセットを発売する」とのうわさが流れている。スマホやPCがなくてもARコンテンツを利用できるデバイスだという。また、後数年にはメガネタイプやコンタクトレンズタイプのAR/VRデバイスも発売するだろうと言われている。
それにもかかわらず、なぜAppleがARの普及を妨げていると言われているのか。
Protocolの記事によれば、Appleが独自のARデバイスの開発に大きな投資をしているのは明確なものの、WebベースのARには消極的であることが「Appleが妨げている」と言われる要因の一つだという。
ARが普及しはじめた当初、ARコンテンツの多くはスマホにアプリをインストールして楽しむタイプのものだった。アプリを起動してスマホのカメラを人物や風景に向けると、画像が合成されたり、不可視の生き物が画面内で動いていたりといったものだ。
だが、当然ながら他のアプリとの互換性はない。「そのようなARの普及の仕方は望ましくない」と主張するのは、AR技術に注力するデジタルエージェンシーPretty Big Monsterのジェイソン・スタインバーグ氏だ。同氏は「ARアプリのダウンロードとインストールを強要するとユーザー離れが加速する」と言う。確かに、ARアプリをインストールしたものの「数回使って終わり」ということもある。
スタインバーグ氏は、AR普及のためにはブラウザでARコンテンツを楽しめるよう標準仕様のAPIの普及が重要だと強く主張する。それが「WebXR」だ。GoogleやMeta、Mozilla、Samsung、Magic Leapといった企業がWebXRの策定に関わり、対応するコンテンツやデバイスの開発を進めている。
このWebXRにAppleは参加していない。「Android」スマホ向けの「Google Chrome」では2018年にWebXRのサポートを始め、SamsungやOperaもスマホ向けの対応ブラウザを提供している。だが、「iOS」向けの対応ブラウザは現時点では提供されていない。そもそも「iPhone」のブラウザはAppleの「WebKit」をベースに開発しなければならないため、WebXRのサポートは現時点で無理な話だ。
Appleは自社開発したiOS向けのARフレームワーク「ARKit」を提供しており、当然ながらApple製品でもARコンテンツは楽しめる。しかし、ARKitはあくまでもiOSデバイス向けだ。
そしてAppleは世界のデバイス市場でかなりのシェアを獲得している。現時点で、ブラウザでARコンテンツを楽しむ場合、Apple製品かそれ以外かで別れている状態であり、このことが「AppleがAR技術の普及を妨げている」とうわさされる理由だ。
なおAppleのWebKit開発チームは、2021年8月に「WebKitでもWebXRの対応を進行中」とツイートしており、いつかはiOSデバイスでもWebXRに対応したARコンテンツが楽しめる時がやって来るかもしれない。
今後、ARやVR、ひいてはメタバースの普及に大きな影響を与えそうなAppleだが、果たしてその行く末はどうなることか。
上司X: ARコンテンツがイマイチ普及しないのはAppleのせいだ! という話だよ。
ブラックピット: なるほど。Appleが独自で規格を作っているということなんですね。
上司X: まあApple自体は自分たちで頑張ってARやVRを広めて行きたいと考えているようだけどね。
ブラックピット: なんと言いましょうか、かつてのOS争いみたいなことになっているわけですね。
上司X: ま、そんなところだ。新技術の黎明(れいめい)期にはよくあることだな。
ブラックピット: 最近のゲームってプラットフォームが違っていても、ほとんど同時期にリリースされるじゃないですか。ARコンテンツもプラットフォームが別でもそのうち同じように楽しめるようになるんじゃないですかね?
上司X: その可能性はあるかもしれないけど、まだまだ普及過渡期だからなあ。
ブラックピット: 今のところARもVRもごついゴーグルやメガネをかけなきゃ楽しめないじゃないですか。わざわざあんなのを装着しないと仮想世界を楽しめない時点でどうかと思うわけですよ。僕なんて妄想だけで別の世界に行けますよ!
上司X: いやその……妄想と仮想世界を一緒にしないようにな。でもゴーグルの件はほぼ同意だ。もう少し軽装備で仮想世界を楽しめるようになれば普及する気もするんだけどな。Appleの独自技術も問題かもしれないが、その辺もできれば解決していただきたいものだが。
年齢:36歳(独身)
所属:某企業SE(入社6年目)
昔レーサーに憧れ、夢見ていたが断念した経歴を持つ(中学生の時にゲームセンターのレーシングゲームで全国1位を取り、なんとなく自分ならイケる気がしてしまった)。愛車は黒のスカイライン。憧れはGTR。車とF1観戦が趣味。笑いはもっぱらシュールなネタが好き。
年齢:46歳
所属:某企業システム部長(かなりのITベテラン)
中学生のときに秋葉原のBit-INN(ビットイン)で見たTK-80に魅せられITの世界に入る。以来ITひと筋。もともと車が趣味だったが、ブラックピットの影響で、つい最近F1にはまる。愛車はGTR(でも中古らしい)。人懐っこく、面倒見が良い性格。
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