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足立区のUiPath活用 「書かない区役所」を実現する戦略とは

東京都足立区は、RPAなどを中心とした業務自動化ツール「UiPath」を導入した。保育施設入所のオンライン申請業務などに適用させるという。

» 2022年06月29日 17時26分 公開
[キーマンズネット]

 2021年にデジタル庁が発足してもうすぐ1年がたつ中、自治体のDX(デジタルトランスフォーメーション)が進んでいる。自治体DXでは、三層分離の閉鎖的なネットワークや法規制などが壁になるが、自治体ごとにさまざまな戦略の下で取り組みを進めている状況だ。

 独自の取り組みを進めてきた自治体の一つに足立区がある。同区はオンライン申請の整備による入力業務の増加に伴い、RPA(Robotic Process Automation)の導入を決めた。誰が主体となって、どう活用するのか。

保育施設入所のオンライン申請に向けた入力業務を効率化

 足立区は、「区民サービスの向上」「データの利活用」「職員の作業効率化」をDXの3つの柱として掲げ、デジタル化を促進している。中でも区民サービスの向上については「行かない区役所、書かない区役所、待たない区役所」を目指して、オンライン申請の整備に注力している。

 2022年度中には内田洋行のオンライン申請システムを導入し、150を超える手続きをオンライン化する予定だ。

 オンライン申請の整備にあたって区民からの申請数が増えることが予想されるため、区民からの申請を効率よく処理する仕組み作りも必要になる。そこで、同区はRPAの活用を決めた。

 UiPathは2022年6月28日、同社の自動化プラットフォーム「UiPath」を東京都足立区が導入したと発表した。2020年に検討し始め、2021年4月に具体的な製品の選定を開始した。

 複数社のRPAの動作を検証した上でUiPathの導入を決定した理由は、動作の安定性が高かったことだとしている。足立区では、2022年5月から職員自身がロボットを内製し、動作検証を勧めている。

 RPAを適用する業務としては、保育施設入所時のオンライン申請に向けた入力業務など。同区の保育施設入所のオンライン申請は6ステップに分かれ、児童の基本情報の他、保護者の就労状況などを細かく記入する必要がある。書類も最大で6枚添付が求められる。これらの情報の整理にRPAを利用するとしている。

 「保育施設の入所申請は記入する項目数が多く、分岐処理も複雑だが、足立区のICT課の職員と保育施設の担当職員がやりとりを繰り返し、試行錯誤しながらシナリオを作成しているという。2022年の11月の令和5年度入所の申込受付開始前にシナリオを完成させたい」と足立区の高橋氏(ICT戦略推進担当課長)は話す。令和5年度入所の申込受付にRPAを活用することで得られる定量効果については、約150時間の削減を見込む。窓口や郵送ではなく、オンラインでの申請が増えればさらなる効果が期待できるため、オンライン申請システムのアピールも並行して進める予定だ。

 なお、既に本番運用しているRPAもある。やむを得ない事情で保育園などが休園になった場合に生じる保育料を減額について、システムに入力するシナリオだ。新型コロナウイルス感染症の拡大によって、これまで月次で数十件程度だった入力件数が約3000件に増加したため、現場の負担を軽減するために急遽開発したという。職員が就業時間外に対応していたものが、就業時間内に自動で入力されるようになり、入力ミスも防止できるため、現場から感謝の声が上がった。

 「業務効率化をフレキシブルに実現できるツールとしてRPAは優れていると実感したので、今後幅広い業務に適用していきたいと考えています。そのためには、シナリオ作成のスキルを磨かなくてはならないので、スキルの習得や継承について先行導入自治体などの取り組みを参考に進めていきたいと思います」(高橋氏)

 今後はUiPathを庁内のさまざまな業務に適用し、全庁的に自動化を推進するとしている。

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