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動作不能にさせる「時限装置」が仕込まれたあのデバイス:674th Lap

誰もが利用するあの国内メーカーのデバイスに突然使えなくなる「時限装置」が仕込まれていると話題だ。そんな危険を孕んでいるあるデバイスとは。

» 2022年08月19日 07時00分 公開
[キーマンズネット]

 愛用のデバイスが突然故障することがある。長年使っていれば仕方がないこと……と思いきや、実はそれが仕込まれたプログラムが原因で“強制的な故障”だとしたらどう思うだろうか。

 こんなことが今、現実に起きていると話題だ。日常で使うあの有名メーカーのデバイスに特定のプログラムが仕込まれていて、あるタイミングで利用できなくなるという。なぜそんなことが起こるのか?

 この問題は、ユーザーの「修理する権利」を主張するメディア「Fight to Repair」が2022年7月27日に記事を掲載したことで話題となった。同メディアが主張するのは、エプソン製のインクジェットプリンタに関する問題だ。

 同メディアが取り上げるということは、ユーザーの修理する権利が侵害されているということに他ならない。記事によれば、エプソン製のインクジェットプリンタの一部製品は、長期間使用していると突然動作しなくなるという。

 これは、同社のインクジェットプリンタに内蔵されている「廃インク吸収パッド」に原因がある。廃インク吸収パッドは、印刷時に余ったインクを吸収して集める機能を持つ。使い続けることで、このパッドに廃インクが吸い取られて劣化していく。

 長期間プリンタを使っていれば徐々に廃インクを吸い取る余裕がなくなり、インクがプリンタ内部に漏れ出して誤作動したり故障したりする。これを防ぐために、廃インク吸収パッドが劣化する時期になると、プリンタが警告を発して廃インク吸収パッドの交換もしくは本体そのものの交換を勧める。

 廃インク吸収パッドが劣化するころにはその他のパーツも劣化していて使えなくなっていたり、買い換えを考えるほど古くなっていたりすることが多い。

しかし、エプソンのプリンタを使っていた一部のユーザーは、問題なく使用していても廃インク吸収パッドの警告が表示されることがあるという。

 この問題は、警告が表示されるタイミングが必ずしも廃インク吸収パッドが廃インクで溢れ出る状態になっているとは限らないことだ。使用開始から一定期間が経過すれば必ず表示される警告なのだという。

 場合によっては、廃インク吸収パッドがそれほどダメージを受けていなくても表示され、その結果プリンタが「文鎮化」することになる。つまり、「使えなくなる時限性のプログラムが仕込まれている」と指摘されても仕方ないことなのだ。

 実際にTwitterでは「何の問題もなく使えていたエプソンの高価なプリンタが急に使えなくなった」というツイートが投稿され、それに同調する「いいね」も多数寄せられた。

 同社のプリンタユーティリティーソフトを使えば一度はその警告を消去できるのだが、その処置は1回きりで、いずれ再び警告表示が表示される。最終的に、警告が表示されれば製品をエプソン認定カスタマーケアセンターに依頼して修理するか、新製品に丸ごと交換するしかなくなる。

 Fight to Repairは記事で「エプソンのこの措置は電子廃棄物の増加の原因になり、ユーザーの修理する権利を侵害している」と主張した。エプソンはこの廃インク吸収パッドの機能制限をWebページで明確に説明しているが、ミシガン大学法学部の教授で『Right to Repair(修理する権利)』の著者であるアーロン・ペルザノウス(Aaron Perzanowski)氏は、「たとえライセンスやWebサイトで明示されていたとしても、こういった時限措置は法的に許されるものではない」と指摘する。

 一方で、ハーバード大学の国際法教授ジョナサン・ジットレイン(Jonathan Zittrain)氏は、「プリンタが時限措置で利用できなくなるのは、製品を買ったのではなくサービスを借りていたのと同意である」とし、今回の問題を一般的な事項として法的に追及するのは難しいという考えを示した。ただジットレイン教授は「この慣行を明確にすることがユーザーにとって有益」とも話している。

 デバイスは、OSの進化や、PCやスマートフォンといった主要デバイスの発展に伴い、早期に陳腐化することが多い。同一のデバイスを5年以上使い続けることができれば長寿命と言えるだろう。一方、プリンタはもはやレガシーデバイスであり、この先大きく進化することはないだろう。だからこそ本来なら長く使えるべきデバイスではないかとも考えられるが、メーカーにとって新製品が売れないのは死活問題だ。今回の問題は根が深そうだ。


上司X

上司X: エプソンのプリンタに、一定時間使うと使えなくなるプログラムが内蔵されていて大変、という話だよ。


ブラックピット

ブラックピット: 廃インク吸収パッドの寿命問題ですか。確かに内部でインクが漏れ出せば不具合がありそうですが……。そんなにびちゃびちゃになることってありますかね?


上司X

上司X: 恐らくそこまでのことは起こらないとは思うけどね。そういう問題じゃなくて、そのパッドの寿命が時限的に決められてる、っていうね。


ブラックピット

ブラックピット: 急に訪れる寿命が仕様と言われても納得できませんねえ。パッドの寿命が来たら普通は新品のパッドと交換すれば問題ない気がしますけどね。悪意を感じます。


上司X

上司X: 悪意っていうのは言い過ぎだよ。


ブラックピット

ブラックピット: でもプリンタって、本体は安いけどインクが割と高めで、結局のところランニングコストがかかるイメージがあるような気がします。


上司X

上司X: それは昔から言われてることだし、やっぱり数年たつと急に文鎮化するというか、突然死が多いというのもプリンタに関してはよく耳にするよ。


ブラックピット

ブラックピット: やっぱり悪意がある! ……と思っちゃうところですが、実際、メーカー側もいかんともしがたい理由があるんでしょうねえ。


上司X

上司X: おや、キミにしては殊勝な意見じゃないか。メーカーにしたら、ただ長く製品を使ってもらうだけでは立ち行かなくなるだろうし、サポート修理するための部材だって数年しか確保できないわけだし。そりゃ寿命を設定したくもなるというものだ。ジットレイン教授の言うように、ある程度はユーザーの理解も必要なのかもね。

川柳

ブラックピット(本名非公開)

ブラックピット

年齢:36歳(独身)
所属:某企業SE(入社6年目)

昔レーサーに憧れ、夢見ていたが断念した経歴を持つ(中学生の時にゲームセンターのレーシングゲームで全国1位を取り、なんとなく自分ならイケる気がしてしまった)。愛車は黒のスカイライン。憧れはGTR。車とF1観戦が趣味。笑いはもっぱらシュールなネタが好き。

上司X(本名なぜか非公開)

上司X

年齢:46歳
所属:某企業システム部長(かなりのITベテラン)

中学生のときに秋葉原のBit-INN(ビットイン)で見たTK-80に魅せられITの世界に入る。以来ITひと筋。もともと車が趣味だったが、ブラックピットの影響で、つい最近F1にはまる。愛車はGTR(でも中古らしい)。人懐っこく、面倒見が良い性格。


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