チームスピリットが実施した調査でウェルビーイング実現のカギが明らかとなった。
「ウェルビーイング」(Well-being)とは、肉体的・精神的・社会的に満たされた良好な状態を指す。近年、多くの企業では従業員が充実した仕事や生活ができるよう、従業員のウェルビーイングに配慮する施策を講じている。
ただし、その取組みは試行錯誤が続いている状態だ。勤怠管理や工数管理、経費精算などのバックオフィスを統合したSaaS(Software as a Service)型業務支援サービスを手掛けるチームスピリットによる「ビジネスパーソンのウェルビーイングに関する実態調査」でも、そうした実態の一端が詳らかになった。
本稿はチームスピリットが調査結果の発表にあわせて開催した記者会見を基に再構成した。
今回の調査について同社は、「ビジネスパーソンの働き方における志向性や上司との理想の関係性についての考え方を明らかにし、変革に向かう企業への示唆とすることを目的とした」としている。調査対象は国内のIT/コンサルティング企業に勤める20〜59歳の一般従業員(部下がいない)800人だ。調査期間は同年6月17〜19日、インターネットで実施した。
一般的に従業員がウェルビーイングだと感じられるのは、職場環境や待遇の良さなどと同様に、「自分が会社に貢献している=自分の存在意義がある」と実感できることだと言われている。そのためには、自分の能力が活用されているかといった評価が重要であり、上司との個人面談は不可欠だ。
個人面談の頻度でいちばん多かったのが「半年に1〜3回程度」で41.5%だった。以下「月に1回以上」が19.9%、「1年に1回程度」が14.0%と続いた。一方、「ほとんど、もしくは全く行われていない」は24.6%に上った。
チームスピリットでコーポレートコミュニケーションチーム・マネージャー エバンジェリストを務める荻島将平氏は、「総合的に見ると、『現在の自分にとって良いと思える会社で働いている』と回答した人ほど、個人面談を受けている傾向がある。逆に、『自分にとって良い会社で働けていると思わない』と回答した人の39.0%が、個人面談がほとんど、もしくは全く実施されていない状態だった。こうした結果から、個人面談はウェルビーイングと密接な関係があることが分かった」と説明した。
また、「ウェルビーイングな状態で働くために役立つ上司の行動・姿勢」を聞いたところ、最も多かったのが「部下とコミュニケーションを図り、メンバーの声に傾聴してくれること」(32.3%)で、2位が「部下が達成したい目標を達成するようサポートしてくれること」(25.8%)、3位が「前向きであること」(24.4%)、4位が「部下の成功と幸せに関心を持ってくれること」(22.3%)だった。荻島氏は「部下の成功を自分事に捉えてくれる上司の下で働けるかどうかが、従業員のウェルビーイングにつながる」と指摘した。
現在勤めている会社の満足度については、55.5%が「満足している」と回答した。年代別に見ると、26歳以下のZ世代の満足度は全体の平均より6.1ポイント高い61.6%だった。一方、27歳以上40歳以下のY世代は53.0%と、Z世代よりも8.0ポイントも低い結果となった。
また、勤めている会社に満足している理由(複数回答可)を聞いたところ、1位は「働きやすい環境が整備されている」(62.6%)、2位が「ワークライフバランスが保たれている」(50.9%)、3位が「心地の良い人間関係がある」(33.6%)だった。
一方、勤めている会社に満足していない理由の1位は「給与・待遇が良くない」(65.1%)だった。以下、「働きやすい環境が整備されていない」(31.6%)、「ウェルビーイングな状態にない」(25.0%)と続いた。
荻島氏は「興味深いのは、企業規模が大きくなるほど、ウェルビーイングな状態にないことを不満の理由に挙げる人が多かったことだ」と指摘した。「総合的に見て、現在の自分にとって良いと思える会社で働いているか」との設問に「そう思う」と回答したのは、従業員数299人以下の小規模企業が50.2%、300人以上999人以下の中堅企業が53.9%、1000人以上の大規模企業では62.7%だった。荻島氏は「私見だが」としたうえで、「中堅・小規模企業にはウェルビーイングという概念が普及していないことも一因として考えられる」と指摘した。
会見ではチームスピリットのエコシステム構想についても説明した。
同社は2022年6月、SaaS型人事労務サービス「SmartHR」とのシステム連携を発表している。SmartHRに登録された従業員データを「TeamSpirit」が自動で取り込んで同期することで、TeamSpiritで従業員情報を一元管理する。これにより、例えば入退社や異動に伴う従業員マスターの更新作業が簡略化できる。また、TeamSpiritで収集できる勤怠・工数といった働き方のデータとSmartHRから自動出力した従業員情報を掛け合わせて分析し、働き方に関するデータを可視化して人的資本経営に役立てられるようになるという。
さらに、「Slack」や「Microsoft Teams」などのチャットツールとAPI(Application Programming Interface)連携し、チャットツールから特定コマンドを入力するだけで、TeamSpiritへの勤怠出勤・退勤打刻ができるようにした。社長の荻島氏は「今後もこうしたエコシステムをさらに強化し、システム全体の価値を向上させていく」と説明した。
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