業務の中ではあまり意識することはないでしょうが、Excelの提供方法は幾つかあります。本稿では、デスクトップアプリ版Excelの注意点や、M365 Apps版Excelで利用できる便利機能などについて解説します。
「Microsoft Excel」(以下、Excel)には主に2つの提供方法があり、それぞれで利用できる機能が異なります。連載第3回目では、Microsoft 365 Appsで利用できるExcelの簡単で便利な機能を紹介します。
Excelには「Excel 2019」「Excel 2021」など製品名に西暦が入ったデスクトップアプリの「ナンバリングバージョン」と、「Microsoft 365」に含まれる「Microsoft 365 Appsバージョン」の2種類があります。ナンバリングバージョンは買い切り型で、購入時点で利用できる機能が決まっており、サポート期間中はバグフィックスやセキュリティアップデートなどのサポートプログラムを受けられます。オフラインで利用できるのはナンバリングバージョンのみです。
一方のMicrosoft 365 Appsバージョンはサブスクリプション型で、費用を支払っている間のみ利用できます。その期間は、機能追加やアップデート、サポート全般を受けられます。ナンバリングバージョンとは違い、利用期間中に随時バージョンアップが実施されるのが特長です。バージョンアップのタイミングはチャネルという概念で制御されます。
Excelの新しい関数など、Microsoft 365と連動しない機能はナンバリングバージョンとMicrosoft 365 Appsバージョンの双方に追加されます。Microsoft 365と連携する機能はナンバリングバージョンでは提供されません。
新機能はまずMicrosoft 365 Appsバージョンに実装され、月ごとや半期ごとにチャネルに展開され、最終的にナンバリングバージョンに展開されるという流れです。第2回で取り上げた「XLOOKUP関数」もこの流れで実装された機能です。2020年のMicrosoft 365 Apps版とExcel 2021では実装されましたが、Excel 2019には実装されませんでした。
バージョンは、Excel起動時に表示されるスプラッシュ画面や情報バーのアカウント情報から確認できます。スプラッシュ画面では左上のバージョン情報から(図1)、アカウント情報では製品名称から確認でき、Microsoft 365 Appsの場合はチャネルも確認できます。
Microsoft 365 AppsバージョンのExcelは、Microsoft 365と連携可能です。ナンバリングバージョンと比べて、データの保全性や共同作業などの点が強化されています。
このように、2つのExcelにはそれぞれで受けられるサポートや機能に違いがありますが、ファイルの保存先に関しても注意すべき点があります。
Microsoft 365 Apps バージョンのExcelにPCやネットワークのトラブルなどでデータを失わないように「自動保存」機能が追加されました。Microsoft 365にファイルを保存することでバージョン履歴の保持が可能になり、ボタン1つで前の状態に戻すことができるようになっています。ファイル損失防止という観点から、Microsoft 365 Appsバージョンの場合はファイルをMicrosoft 365に保存することをお薦めします。
Microsoft 365にファイルを保存すれば、自動的にバージョン履歴の保持が有効化されます。「Microsoft SharePoint」のドキュメントライブラリに保存する場合はメジャーバージョンの保持件数を変更することで履歴数を増やすことが可能です。必要に応じて保持数を変更しておきましょう。
次に、Microsoft 365に保存したExcelファイルのバージョン履歴の確認方法です。バージョン履歴はファイルごとに保持されます。Excelで対象ファイルを開き、タイトルバーにある「更新日時」をクリックすることで「バージョン履歴」を確認できます。
バージョン履歴は更新ごとに増え、ファイルを共有する場合は更新者情報が表示されます。更新者情報には「Microsoft Azure AD」に登録されたMicrosoft 365のユーザー名が利用されます。「バージョンを開く」をクリックすることで、履歴として記録されたファイルを開くことができます。別ファイルとして保存したり、ファイルを任意の時点に戻したりすることも容易です。
指定したバージョンのExcelが開いたら、情報バーに別ファイルでの保存リンクと「復元」ボタンが表示されます。それぞれを選択することで過去のファイルを利用できます。
他者とファイルを共有する場合、まず右上にある「共有」ボタンをクリックします。次に、共有する人のメールアドレスと権限を入力します。
共有範囲は「組織外を含む全てのユーザー」か「組織内のユーザーのみ」から選択でき、既に権限を持っている人がファイルにアクセスするためのリンクを再送信したり、特定のユーザーのみがアクセス可能なリンクを生成したりできます。また、編集権限についても「表示のみ許可する」「ダウンロードを禁止する」などの設定が可能です。
共有設定をすると、リアルタイムで同じファイルを複数人で共同編集ができるようになります。共同編集中は、ユーザーのセルはそれぞれの別の色で表示されます。また、共有編集者がどこを編集しているか知るには、ユーザーのアイコンをクリックすることで編集箇所に移動することもできます。
「変更内容を表示」では、共同編集で各ユーザーが変更した内容を確認できます。この機能は履歴表示と似ていますが、変更内容を一覧表示できるという点で利用方法が異なります。
「変更内容を表示」ボタンをクリックすると、右側に変更内容が表示されます。編集者と編集箇所、その内容が一覧で表示され、どのような変更を加えたのかなどを追って確認できます。
※「変更内容を表示」は2022年11月の更新でリリースされたため、更新チャネルによっては利用できない場合があります。
Microsoft 365 Apps版Excelでの共同編集は通信回線に依存する部分があり、低速回線の場合は通信速度が原因でファイルの更新を失敗することがあります。その時はWebブラウザの「Excel for the Web」を利用するといいでしょう。
今回は、Microsoft 365 Appsバージョンとナンバリングバージョンの違いや、Microsoft 365の連携について、実用度が高く、利用しやすい機能を中心に紹介しました。Excelは利用者の裾野が広い製品であるため、簡単に利用でき、効果の高い機能から利用法を覚えるといいでしょう。
ナンバリングバージョンのExcelユーザーは、これらの機能でどれだけ生産性が上がるかを試してみるといいかもしれません。特に、ファイルの共同編集では、基本機能を最大限活用することで生産性の改善が見込めます。まずは、基本機能を押さえることから始めてみてはいかがでしょうか。
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