デバイスの進化とともに、ファイル当たりのデータサイズは膨らむ一方だ。そこで直面するのが「ストレージ問題」だ。「ストレージが足りなければ自作で」と考え、数千円で大容量NASを“丸ごと”自作した大学生が現れた。筐体もOSも全て「手作り」だという。一体どうやって?
PCやスマホを使っていると、遅かれ早かれ「ストレージ問題」に直面する。特にスマホの場合、写真や動画をじゃんじゃん撮っていると、内蔵ストレージに収まりきらなくなる。そこで頼りになるのがクラウドストレージだが、無償プランでは使える容量に限りがあり、データが増え続けるとやがては有償プランを検討せざるを得なくなる。毎月一定額を支払うのはキツい……と思う人も多いことだろう。
「ならば、自作すればいい」と考えて、格安NAS(Network Attached Storage)を爆誕させた大学生が現れた。作成にかかった費用は、わずか数千円程度だという。筐体からOSまで全て自作だというが、一体どうやって?
その猛者とは、香港の大学生であるトビー・チュイ(Toby Chui)氏だ。チュイ氏はもともと、Googleが大学生向けに提供していた無償のストレージサービスを利用していたが、2021年にストレージ容量に上限が設けられた。
チュイ氏は有償サービスの利用を検討したが、料金を考えるとためらいがあった。「ならば、自分でストレージを作ればいいんだ」と、チュイ氏自身でNASを作り上げた。かかったコストはわずか60ドル。現在の日本円にして約8000円だ。
チュイ氏は、テック系DIYサイトのInstructablesにオリジナルNASの制作過程を公開して、大きな話題を呼んだ。
記事によると、チュイ氏は「フットプリントが小さくて、デバイス内部を最大限利用する」「低コストの部品を使って最高のパフォーマンスを引き出す」「互換性が高く、入手しやすい部品を使う」「単一メーカーへの依存を最小限に抑える」「最低でも下り/上りともに100Mbpsの通信速度を実現し、1080pの動画を再生可能にする」といった目標を掲げて開発に取り組んだ。自身で部品を選定するとともに、筐体も3Dプリンタで自作した。
チュイ氏がNASの心臓部に選択したのは「Orange Pi Zero」だ。オープンソースのシングルボードコンピュータで、サイズも超小型だ。チュイ氏はそれに合わせて筐体を設計した。その他、SATAからUSB 2.0への変換アダプターや電源ユニット、PCBWay製のプリント基板なども用意した。
筐体の3Dプリントには、Creality3Dの「Ender 3」を使った。高機能ではないものの、手軽に使える製品として人気が高い。ただ、プリントのスピードは決して速いとは言えず、チュイ氏が求めるクオリティーのパーツを作るのに約2日もかかったという。
Orange Pi ZeroにはベースOSとして「Armbian」をインストールした。さらに、NASの制御にはチュイ氏が自作したという「ArozOS」を採用した。ArozOSは「Chrome」「Firefox」「Safari」といった主要Webブラウザで動作するOSで、NASの制御用に改造されたという。
電子部品とHDDを筐体に組み込み、システムをセットアップしてHDDをマウントすれば自作NASの完成というわけだ。これで、自由に使える大容量のストレージが手に入る。ほんの8000円程度でNASが手に入ると思えば、さぞコスパも抜群だろう。
チュイ氏は製作過程を細かく解説し、部品の型番はもちろん、3Dプリンタ用のデータや電子回路図など、パーツの全てを公開している。もちろん、OSの設定も詳しく解説されている。やる気があれば、誰でも低価格なNASを作成することが可能ということだ。腕に覚えがある人は、ぜひ挑戦してみてはどうだろうか。
上司X: わずか8000円ほどでNASを自作したスゴ腕の大学生が登場した、という話だよ。
ブラックピット: 大したものですねえ。作り方も丁寧に記載されています。
上司X: 今は、とにかくクラウドに保存する、みたいな風潮があるけど、コストもかかるしな。
ブラックピット: ですねえ。冷静に計算すると、そこそこの額を支払っていますね、僕も。
上司X: だろ? だとしたら、チュイ氏みたいに自分でNASを作って自宅で運用した方が安く済む、ってことになりそうだ。
ブラックピット: でも、チュイ氏は大学生とはいえ、ほとんどプロみたいなもんじゃないですか。3Dの設計はできるし、3Dプリンタも使えるし。電子工作だってお手のものですよ。OSまで自分で開発してるじゃないですか!
上司X: まあそうだな。公開されている記事を見ても、キチンとまとまっていて、かなり優秀なエンジニアと言えるだろうな。
ブラックピット: ですよねえ。いくらやる気があっても、僕程度の人間がおいそれと手を出してちゃんとNASが完成するとは思えないんですが……。
上司X: やる気はあるんだな(笑)。俺も時間があったら、試しにやってみるのもいいかもしれないなと思いながらも、まあやらないだろうけど。せめてキミにはぜひ挑戦してほしいものだけど、さてどうかな?
年齢:36歳(独身)
所属:某企業SE(入社6年目)
昔レーサーに憧れ、夢見ていたが断念した経歴を持つ(中学生の時にゲームセンターのレーシングゲームで全国1位を取り、なんとなく自分ならイケる気がしてしまった)。愛車は黒のスカイライン。憧れはGTR。車とF1観戦が趣味。笑いはもっぱらシュールなネタが好き。
年齢:46歳
所属:某企業システム部長(かなりのITベテラン)
中学生のときに秋葉原のBit-INN(ビットイン)で見たTK-80に魅せられITの世界に入る。以来ITひと筋。もともと車が趣味だったが、ブラックピットの影響で、つい最近F1にはまる。愛車はGTR(でも中古らしい)。人懐っこく、面倒見が良い性格。
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