キーマンズネットは企業における「チャットツールの利用状況」に関する読者調査を実施した。「Microsoft Teams」などが社内のコミュニケーションツールとして多用されているものの、さまざまな課題があることが分かった。例えば2022年から相次ぐTeamsの障害に「不満」の声を上げるユーザーの声があった。
メールや音声コミュニケーションツール、Web会議ツールなど社内のコミュニケーション手段が多様化している。
前編では、「チャットツール」の利用率が84.6%に上ること、「Microsoft Teams」(66.4%)に利用が集中していることを紹介した。働き方や企業の文化、ツールの仕様などさまざまな要因から、従業員間のコミュニケーションにさまざまな課題が残っていることも分かった。
後編ではチャットツールを利用している方の「満足、不満の理由」や「今後への期待」「懸念点」などを調査した。満足度は高い一方で、ツールに対する運用やセキュリティについて懸念が多く寄せられた。
はじめにビジネスチャットの満足度を調査したところ「とても満足」(5.2%)、「まあ満足」(56.9%)を合わせ、62.2%が満足と回答した(図1)。
「やや不満」と「とても不満」を合わせると9.0%であり「どちらとも言えない」も3割であることから、平均以上の評価を得ているツール群と見てよさそうだ。全体傾向は2022年1月に実施した前回調査とほぼ同じだったが、満足度は3.4ポイントとわずかながら増加した。機能追加やサービス改善などベンダー側の努力が一定受け入れられている様子が見て取れた。
満足の理由として情報共有が素早くできることや、チャットというテキストコミュニケーションの利点、他のコミュニケーションツールとの連携の高さを挙げる声があった。
反対に「不満」と回答した方の理由は大きく3つあった。
1つは「検索性」への不満だ。チャットの特性上やりとりされるメッセージが多いため、過去にさかのぼって該当コメントやファイルを見つけ出すのが困難であるという指摘だ。今後さらにチャット上の情報整理ニーズが増していきそうだ。
2つ目もサービス面での不満だ。使用ツールの「不具合」について、ハードやソフト、ネットワークといった環境によって多少変わるもののネガティブな指摘が目に付いた。チャットという利用頻度が高いツールの特性上、少々の不具合でも業務に支障を来すシーンが多く、影響を大きく感じるのだろう。
最後の3点目は”運用”に対する不満だ。部門によって利用できるツールが限定されていたり、周知されていなかったりするケースがあるようだ。
こうした課題に対しては共有基盤の整備が有効だろう。さらにチャット利用におけるルール設定や運用管理も含めた環境整備が肝心なようだ。
最後に、今後チャットツールに期待する効果や懸念する課題についてフリーコメントで意見を聞いた。
まず期待する効果では、テレワークが広く採用されてきた現在において、これまで挙がっていたように場所問わずスピーディーに円滑な情報共有を実現することが求められていた。そうして利用頻度が高まるにつれて期待されるのも、前述の通り「検索機能の強化」や「運用ルールの改善」であった。
運用ルールについては「チャット内での記載方法」と「他ツールとチャットの使い分け」に関する2つの指摘があった。チャット内での記載方法では、記載内容に紛れて決定事項が流れてしまわないような記載方法やグループ設定をすべきという意見だった。
他ツールとチャットの使い分けでは、利用者間で生じる目的ギャップ改善への指摘があった。チャット利用目的の差が投稿内容や頻度といった使用方法の差につながり、結果として情報共有がうまく機能しないという悪循環を起こしかねない。少なくともプロジェクト内ではツールごとに利用目的の目線合わせをしておく必要がありそうだ。
その他、懸念点として多く見られたのはセキュリティ面での不安だ。気軽に利用できる半面リスクも増えているため、従業員のリテラシー向上は必須事項となりつつある。
実際、チャットツールを導入しない理由では「従業員のリテラシー不足のため」(18.6%)が上位に挙がっている(図2)。また「情報セキュリティルールとの整合性を取るのが難しいと感じている」や「運用方針の確定とその通りに運用できているかが懸念。セキュリティ方針との乖離(かいり)を防ぐ方法が課題」というコメントのように「セキュリティポリシーに反するため」(10.2%)導入を見送ったり、利用範囲を制限したりするケースもあるようだ。
今回はチャットツールの満足度や課題、今後への期待を紹介した。チャットツールの利用率が年々増加している背景には、コロナ禍を中心とした環境変化に対応すべく、企業におけるスピーディーな情報共有ニーズがあった。
チャットツールに対しては「便利な反面、ツールの統一やルールの整備を進めないとカバナンスが欠如する懸念」という指摘に見られるように、今後は利便性だけでなく、より安全で、より有効活用が望める「体制構築」を含めた運用改善が求められているようだ。
なお、今回の調査は2023年1月6日〜20日にわたり「チャットツールの利用状況(2023年)」と題して実施した。回答件数は384件。回答者の所属は情報システム部門が31.5%、製造・生産部門が19.3%、営業/営業企画・販売/販売促進部門が12.2%、マーケティング部門が4.9%だった。
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