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IT資格の報奨金は必要? 従業員を「覚醒」させるリスキリング施策とは

高度なスキルを持った人材が取り合いになる中、従業員のスキルアップは多くの企業にとって課題となっている。従業員の勉強意欲を引き出すために、企業は何から取り組めばいいのだろうか。

» 2023年02月23日 07時00分 公開
[鈴木恭子キーマンズネット]

 仕事で必要なスキルの変化に適応するために、新しいスキルの獲得を目指す「リスキリング」。特にIT関連のスキルを従業員に獲得させることは、多くの企業にとって課題だ。

 IDC Japan(以下、IDC)によると、2024年までにIT業界のリーダーがスキルの創出や人材育成を十分に実施しないと、65%の企業でクラウドやデータ活用、自動化に対する十分な投資対効果が得られなくなるという。このような状況を打破するためには、従業員一人一人のリスキリングに対するモチベーションを底上げする必要があるが、企業はまず何から取り組めばいいのだろうか。

効果的なリスキリング施策で従業員を「覚醒」

 ITサービスのユーザー企業とサプライヤーはどのようなアプローチでリスキリングを実施すべきだろうか。IDCの市川和子氏(Verticals & Cross Technologiesグループマネジャー)は「従業員にリスキルに対する覚醒をもたらすようなプログラムを企画する必要がある」とし、以下のように説明する。

 「各従業員が自分事としてリスキルに取り組むには、スキルレベル認定制度やふさわしい職務、褒賞などの『個人がベネフィットを実感できる施策』を実施することが重要だ。また、スキルアップした従業員の離職を回避するために、自社で働く従業員がモチベーションを維持できるような企業文化の醸成も検討すべきだ」(市川氏)

 一方、リスキリングにおいてITサービスのサプライヤーはどのような役割を果たすのだろうか。同氏によれば、クライアント向けの教育プログラムを棚卸しし、「ITプロフェッショナル向け」「非ITのハイスキル志向者向け」「一般ユーザー向け」などターゲットの分類を行うことで、クライアントのリスキリングをサポートできる。

 また、教育コンテンツ事業者と協働しての教育プログラムの提供チャンネル拡大や、現在カバーしていないターゲット向けの教育プログラムの独自開発、他社ベンダーとの連携によるプログラム開発なども有効だという。

自動化成功のカギを握る従業員のリスキル

 従業員のリスキルを支援する中で、何を学んでもらうべきなのだろうか。さまざまな分野がある中で、市川氏は自動化におけるリスキルの重要性を説いた。

 IDCの調査によれば、日本企業に従業員が2022年に自動化に関与しているかを聞いたところ、「すでに自分たちで取り組んでいる」と回答した企業は46%、「自分たちで取り組む予定である」と回答した企業は41%に上った。同氏によれば、人材採用プロセスやオンボーディング、顧客の問い合わせ対応など、事業部でもバックオフィスでも自動化に対する多様なニーズが存在するという。

 自動化のためには作業を担当する従業員の教育が不可欠だが、現状は教育体制が整っているとは言えないようだ。IDCの調査では自動化の最大の課題として「自動化導入に必要なITサポートの欠如」や「失業の可能性に対する従業員の不安」「自動化要件の難しさ」といった項目に続き、「該当従業員に対する教育の欠如」が挙げられた。市川氏は「現在、企業が抱えている課題の根源を突き詰めると、従業員のスキルアップの必要性につながっていく」と見解を示す。

 同氏によれば、一部の日本企業ではリスキリングの取組みが進んでいるそうだ。日本郵船では全従業員を対象としたデジタル人材育成プログラムを提供する。具体的には4段階のプログラムを設け、第1段階では週刊のメール配信や社内外の人材による講演、Eラーニングなどを実施し、DX(デジタルトランスフォーメーション)に向けた文化の浸透を目指す。最上位の第4段階では「デジタルアカデミー」と称し、半年間で「新規事業の立ち上げと安定運用ができるデジタルリーダー」を育成するという。

 市川氏は「自発的に自分がどのようなキャリアを築いていきたいか、そのためにはどのようなスキルが必要かを考え、積極的に学ぶといった行動変容が必要。そのためにも社内に『学ぶ文化』を醸成することが重要だ」と説いた。

本稿は、IDCが開催したイベント「IDC Japan FutureScape 2023」のセッション「Future of Workstyleの新しい視点:リスキルについて」の内容を編集部で再構成した。

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