従業員は育児休暇の取得に際してどのようなプレッシャーにさらされているのか。また育児休暇を取得しにくい状況をどのように解消できるのか。
ある調査によれば、回答者の15%が「取得可能な育児休暇を全部取得しなかった」と答えた。その背景には、性別にかかわらず親になった従業員に対してさまざまなプレッシャーがある。従業員はどのようなプレッシャーにさらされているのか。また育児休暇を取得しにくい状況をどのように解消できるのか。米国の調査からひもとく。
人事ソフトウェアを提供するRemoteの調査によれば、育児休暇の取得率が向上している企業がある一方で、休暇を完全に取得することをためらう従業員もいるという。同調査では、回答者のうちの15%の労働者が、「取得可能な育児休暇を全部取得しなかった」と答え、女性の10%、男性の7%が「割り当てられた休暇の半分以下しか取得していない」と分かった。若年層とLGBTQの人々は、休暇を完全に取得することに大きなためらいを感じていることもうかがえた。
背景には、差別や偏見、雇用主によるプレッシャーが関係していると見られ、「育児休暇が終了する前に職場復帰を期待している」と回答した雇用主は5人に1人だった。
育児休業終了前の職場復帰へのプレッシャーは業種によって異なる。法律関係の職業に就いている人が最も早く育児休暇から復帰する傾向があり、21%の人が休暇を全て消化できていなかった。一方で、芸術や文化、営業、メディア、マーケティングの業界に努める人は休暇を全て消化する傾向があった。
過去数年間、特に有給育児休暇が義務化されていない米国では、企業が労働者に対してより長く、より包括的な育児休暇を提供しようとする動きが出てきている。この傾向はテクノロジー企業に強く見られ、PinterestやGoogleは、出産する親には半年以上、出産しない親には最長20週間、さらにPinterestの場合はNICUに赤ちゃんがいる親には有給の延長を提供している。
育児手当の充実は、テクノロジー業界の高所得者だけに限った話ではない。Tyson Foodsは、出産する親には8週間、出産しない親には2週間の有給育児休暇を全従業員に展開すると発表した。2020年にはChipotleが育児休暇を出産する親に12週間、出産しない親に4週間付与すると発表した。この動きは米国における一般的な傾向を示しているように見える。
Remoteの調査によれば、福利厚生を提供するだけでは必ずしも十分とは言えないようだ。新しい親となった従業員を引き留め、福利厚生を十分に利用させるためには、職場文化として、従業員が親としての生活と仕事を両立させることができるという期待を持たせる必要があると、専門家はHR Diveに語っている。そのためには、経営陣自らが育児休暇を完全に取得して模範を示すこと、フレックスタイム制を導入すること、補助金や施設内保育に投資することなどが考えらる。
全社的な期待値を設定することは、従業員が管理職の意向を解釈するために特に重要だ(あるいは差別を経験している可能性があるため)。2023年3月に発表された英国の調査では、回答者の10%が「育児休暇取得後に管理職からキャリアアップを制限された」と感じ、6人に1人が「育児休暇取得を表明した後に管理職からキャリア機会を減らされた」と答えている。
出産しない親や保守的でない親にとって、差別や偏見はより大きいかもしれない。2021年後半に、保守派の評論家マット・ウォルシュ氏が、双子を養子に迎えたピート・ブッティギーグ運輸長官の休暇を批判したことから、育児休暇が文化戦争の問題として一時炎上した。起業家のジョー・ロンズデール氏はその数日後、重要な役割を担う男性が新生児誕生の後に6カ月間の休暇を取るのは「負け犬」だとツイートしている。
しかし、育児休暇は肉体的な回復以上の意味があると専門家は述べている。家族が新しい日常を築き、役割と責任を意図的に委ね、リフレッシュして仕事に復帰するために不可欠な基盤を整えることができるのだ。これは、労働者のリテンションを重視する企業にとって有益なことだ。
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