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「職場飲み会」「仕事の量」「転職」……調査で分かる若者の本音と分断

「職場飲み会」「仕事の量」「転職」の価値観についてさまざまな観点から調査したところ、若者の本音が見えてきた。世代間の価値観の分断は職場の人間関係のトラブルにもつながるようだ。

» 2023年04月05日 11時03分 公開
[キーマンズネット]

 キーマンズネット編集部は「IT人材と働き方に関するアンケート」と題して大規模調査を実施した(実施期間:2023年2月8日〜3月3日、有効回答数532件)。本連載では、「IT人材不足」「スキルアップ・リスキル」「働き方・転職」「職場の人間関係」の4つのテーマに分けて調査結果を紹介する。

 第4回となる本稿のテーマは「職場の人間関係」だ。近年は、「Z世代」「ミレニアム世界」という言葉が流行するなど、若い世代の新しい価値観や、世代間の仕事に対する考え方の違いにスポットライトが当たることは多い。「若者が何を考えているのか分からない」といった声も聞かれるが、彼らはどのような価値観を持ち、世代間の分断はどのテーマで如実なのか。「職場飲み会」「仕事の量」「転職」などのテーマでさぐった。

 さらに、職場の人間関係のトラブルについても具体的な内容を聞いたところ、上司と部下の関係性に関する多様な“悩み”が集まった。

一番高齢化が進むのは、あの業種

 まずは、企業の年齢状況を見ていこう。「自社でどの年代の従業員が最も多いか」という質問に対し、全体では30〜40歳代と答えた割合が55%と高く、これに50〜60歳代(30%)が続いた(図1)。業種別にみると、金融業や医療業、教育業、官公庁、自治体などの公共機関は50歳以上の割合が高く、最も高齢化が進んでいる状況が見えた。

図1 以下のうちどの世代の従業員が最も多いですか(n=532)

「職場飲み会」「仕事の量」「転職」……若者の本音

 各企業の年齢状況が見えたところで、世代間の仕事への価値観の違いを見ていこう。今回は「最低限の仕事しかしたくない」「仕事が好きだ」「一つの会社でできるだけ長く働きたい」「職場の飲み会にはいきたくない」という4つのテーマについて質問を投げた。

 まずは、「最低限の仕事しかしたくない」という質問だ。全体では「はい」が4割、「いいえ」が6割という結果になったが、30代までの若い世代はこの割合が逆転し、約6割が「はい」と答えている(図2)。

図2 最低限の仕事しかしたくない

 近年「最低限の仕事しかしない」というような仕事の姿勢は「静かなる退職」という言葉でバズワード化している。このアンケート結果のように、特に若年世代にその傾向が強く、「仕事に多くの時間や気持ちを傾けてきた」より上の世代からは「サボり」と捉えれることも多く、相互の不理解の原因になる場合がある。

 しかし、こうした「静かな退職」は、必要なことを短時間でこなし、ワークライフバランスや心身の健康に重心をうつす、いわば「仕事への価値観」を表す言葉だ。企業は職場の協調を考える上で、この価値観の差を認識する必要がある。

 これに関連して「仕事が好きか」という質問に関しては、60代以上の「仕事が好きな人」の割合は最も高く、世代間の差が見える結果となった(図3)。

図3 仕事が好きだ(n=532)

 一方で、世代間の違いがあまり見えない項目もあった。 「一つの会社でできるだけ長く働きたいか」という質問について、「はい」と答えた割合は40歳代が最も多かったが、その他の世代で大きな差はみられなかった。「終身雇用」は時代のトレンドではなく、若い世代ほど転職を望む傾向があると言われているが、上記の結果で見てきたように仕事への価値観が多様に分かれる中、アグレッシブに転職を繰り返すよりも、私生活の安定に重きを置くという考え方がこうした結果につながったとも考察できる。

図4 一つの会社でできるだけ長く働きたい(n=532)

 また、「職場の飲み会に行きたくない」というアンケートについては、「そう思う」「そう思わない」が約半分に分かれ、世代間の傾向も見えなかった。コロナ禍前は、飲み会によって人間関係を構築する「飲みにケーション」という言葉が、ときにネガティブな印象をもって語られることもあったが、コロナ禍で飲み会が大幅に減った今、その価値観について議論される機会も減ったという印象だ。

図5 職場の飲み会に行きたくない(n=532)

上司、部下の緊張関係、その理由は?

 最後に職場の人間関係の困りごとについて調査した。「職場の人間関係で困ったことはあるか」という質問に対しては、「はい」(58.5%)と約6割の回答者がトラブルを経験していた。なお、企業規模や業種での傾向の違いは見られなかった。

 「はい」とした回答者に具体的なトラブル内容をフリーコメントで聞いたところ「パワハラ」という答えが最も多くの回答を占めた。以下は、AIでフリーコメントの感情分析や出現頻度をもとに出した言葉の重み付けを可視化したものだ。「パワハラ」「上司」「部下」という言葉が大きな位置を占めている。

図6 職場の人間トラブルの内容※ユーザーローカルAIテキストマイニングによる分析( https://textmining.userlocal.jp/ )

 実際にフリーコメントの内容を見ると、「パワハラや嫌がらせがある」といったコメントの他、「課を任された時に、実際の権限はその上の上司にあり、裁量がないまま、責任があった。自分の仕事の不備を細かく突かれ、仕事への自信を失った」「上司とそりがあわない」「マネジメントに問題のある人物の下に、優秀な従業員をつけてしまい、その従業員数名に転職されてしまいました」といった上司との部下間の不和について悩む声も多く寄せられた。

パワハラ、上司と部下の関係に関する悩み

  • 上席者の指示が朝令暮改・二転三転し、どの方向性で進めてもゴールが見えないが、指示通りに動くことを強制された。
  • どうしても、気が合わない同僚に対しての対応に困った。
  • ちょっと年齢が下の従業員に仕事を依頼してものらりくらりされて、完了に時間がかかる(生え抜きなので無下にいろいろ言えない)。
  • 上司とのIT関連の事柄についてコミュニケーションが成立しないため、A4 1ページで済む提案や意見にその倍以上の解説を付記しなければならないことがある。

 上記調査で見てきたように、世代間の価値観の分断がこうした不和を招いているとも考察できる。

 

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