AIは労災予防にも役立つと専門家は述べる。その具体的な活用法とは。
技術の発展がめざましいAI(人工知能)が労働災害(労災)の防止にも役立つようだ。全米安全評議会(NSC)の2023年3月15日の報告書によると、最新のデータ分析とAI(人工知能)は、従業員の傷害を減らし、業務の合理化と自動化によって職場の環境衛生と安全を改善できるという(注1)。
2021年には5000人以上の労働者が仕事中に死亡し、職場での死亡率が上昇したことを受けて、職場での傷害予防を強化するための新しい取り組みが求められていると、NSCは米国労働統計局のデータを引用し、指摘した。
では、労災予防のために、AIを使って何ができるのだろうか。
「EHS(環境、衛星、安全)の専門家は既に大量のデータを日常的に管理しているが、データ分析とAIの進歩により、これらの情報を統合して既存のリスク軽減活動を改善することが容易になった」と、非営利団体のイノベーション担当ディレクターであるエミリー・ウィトコム氏は述べる(注2)。
NSCの報告書は、学術誌や産業誌の知見に基づき、職場での疾病や傷害、死亡を防ぐための機械学習の活用法を3つ紹介している。
コンピュータビジョンテクノロジーは、画像や映像を監視するCCTVシステムと組み合わせると、対象物や作業員の危険への接近を検知できる。場所や時間、安全ガイドラインのデータと組み合わせれば、機器の故障や車両の衝突、個人用保護具の欠落などの懸念事項を作業員に警告できる。
自然言語処理により、報告書を要約し、定量的なデータも含めて考察できる。これによって、安全に関する報告やコンプライアンスを効率化し、生産性を向上させることができる。
予測および処方的分析エンジンにより、事故を予測し、特定のタスクに最適なPPE(個人防護具)などの推奨事項を提供できる。
同報告書は、疲労状況をモニタリングするウェアラブル装置など、新たなテクノロジーや使用例についても解説している。また、仮想現実や拡張現実のプログラムは、危険作業トレーニングモジュールを通じて労働者の安全性を高める可能性があるとNSCは述べる。
以前、HR Diveの取材に応じた専門家によれば、特に安全文化を促進するために、職場の安全やPPEのコンプライアンスに関する教育に重点を置く企業が増えているという。AIベースのツールはコミュニケーションを改善し、従業員が特定の安全ポリシーの利点を理解できるようにする役割を果たす可能性がある(注3)。
NSCの報告書は、導入にかかる高額なコストやプライバシーに関する懸念など、AI導入の障壁を幾つか挙げているが、これらは組織の規模によって異なる可能性がある。大企業には広範なデータ収集やトレーニング、配備を支援するカスタマイズされたプラットフォームが有益だと考えられる。中小企業では、柔軟性のあるモジュール式のAIパッケージを検討すべきだと提言している。
潜在的な責任やアルゴリズムの偏りなど、他の懸念についても考慮する必要がある(注4)。最終的に、AIの導入は労働者のニーズと職場の現在の自動化プロセスから生まれるべきだという意見もある(注5)。
出典:Could AI help with workplace injury prevention?(HR Dive)
注1:Featured Technology Reports from Work to Zero
注2:NSC Work to Zero Initiative Releases New Research to Help Prevent Workplace Fatalities
注3:Why workers fail to wear safety gear - and how HR can fix that
注4:AI issues hitting HR from ‘everywhere at once,’ former EEOC chair says
注5:Employee needs should drive AI adoption, consulting firm recommends
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