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廃棄業者に渡したPCをトラッキングしてみたら……14台のPCの行方:713th Lap

2019年に神奈川県庁のHDD転売事件が大きな話題となった。こうした事件を聞くと、廃棄業者に渡した“その後”が気になるものだ。適切に処理されているかどうかを確かめるために、ある実験が行われた。

» 2023年06月09日 07時00分 公開
[キーマンズネット]

 不要になったPCの後始末は困るものだ。適切に処理しなければ、機密情報や個人情報の流出につながるからだ。2019年に、神奈川県庁が業者に廃棄を委託したHDDが不正に転売されていたことで大きな問題となった。こうした事件を聞くと、廃棄業者に委託したとしてもその後が気になるものだ。

 廃棄事業者に委託したPCが正しくは廃棄されたかどうかを検証するためにある実験が行われ、その結果が公表された。廃棄を依頼した14台のPCのうち、適切に処理されたのは……?

 英国の経済紙『Financial Times』は一部の廃棄業者が不正を働いてると報じた。廃棄すべきPCを的確に処理していなかったという。

 英国のリサイクル支援団体Material Focusによると、同国では毎年約3万トンものIT系廃棄物が違法に国外に搬出されているという。その多くは発展途上国に送られ、金属を得るための資源になっていたとのことだ。また、約8万7000トンものIT系廃棄物が英国国内で違法に処理されているという事実も明らかになった。

 だが、廃棄業者の多くは「うちはちゃんと処理してますから」と主張する。そこでFinancial TimesはIT系廃棄物の流れを調査した。

 調査方法は興味深いものだったのだ。廃棄業者に引き渡すPCにトラッキング可能な機器を取り付けた。シンプルながらも強力な追跡性能を持つ。そして、6社の業者にそのPCを引き取ってもらった。渡したPCは14台だ。いずれもノートPCで、内部データは完全に消去したとのこと。

 どの業者も確実に処分すると口約束をしながらも、14台の中で正しく処分されたのは10台だった。記事によれば、正しく回収されたのはAmazonによる3台、Appleによる3台、Dellによる2台、Currys(イギリスの家電量販店)による1台、John Lewis(イギリスの百貨店)による1台だったという。これらは、トラッカーの追跡によって無事に処理業者に回収されたことが確認された。

 不正に処理されたのは、John Lewisに依頼した2台のうちの1台で、英国パークシャーにある処理業者のWasteCareに受け渡された後に、1カ月ほどして315キロ離れたノーフォーク州にあることが確認された。このことについてFinancial Timesが尋ねたところ、WasteCareは「従業員が盗んで旅行に持っていった」と説明した。

 それも問題行為に違いはないが、さらに悪質な行為も明らかになった。同じく英国の大手スーパーマーケットのArgosによって回収された2台のPCは、どちらもネットオークションサイト「eBay」に出品されていた。Argosから廃棄業者にPCが送られた後、それが盗難に遭い、出品されたと説明したようだ。

 英国では毎年電子機器の廃棄物がリサイクル過程で約11万4000トンも盗難の憂き目に遭っていることから、Argosのケースはそれに該当するのかもしれない。しかし、その責任の一端は廃棄を請け負った業者がリサイクル品や廃品をきちんと管理していないところにもあるだろう。

 今回の調査においては、廃棄を依頼したPCが英国外へ違法に輸出されることはなかったようだ。しかし、米国の団体Basel Action Networkが同様の調査を行なったところ、壊れた電子機器の違法な輸出については、欧州の中では英国が最も多いという。ただ、英国の環境庁は、廃棄予定の電子機器を違法に海外に輸出する業者の取り締まりを強化し、2016年以降そのような違法行為は年々減少しているようだ。

 日本にとっても人ごとではない。廃棄された電子機器が東南アジア諸国へ不正に持ち出されて環境汚染の原因になっていることが指摘されている。PCを廃棄するときは、データの流出だけでなく、廃棄物として正しく処理、リサイクルされるのかも気にしたいところだ。


上司X

上司X: 英国で、廃棄されたPCの行方をトレーサーで追跡したら不正な扱いをされていた、という話だよ。


ブラックピット

ブラックピット: 追跡してみるとか面白いですね。しかし、廃棄予定なのに勝手に使われたり転売されたりするのはイヤですねえ。


上司X

上司X: 最近のPCは寿命も長いし、まだ使えるものでも廃棄されることは珍しくはないしな。使えるのなら有効に……と考えるヤツもいるのだろう。


ブラックピット

ブラックピット: 勝手に再利用されるのに加えて、廃棄物として海外に輸出される問題も炙り出されていますねえ。そっちもなおさらイヤだなあ。


上司X

上司X: 電子ごみは「都市鉱山」なんて呼ばれて、宝の山のように見られることもあるからな。


ブラックピット

ブラックピット: だからといって海外に不正に輸出するなんて。それで、途上国で処理されるなんて。もっと真面目に処理してほしいものですよ。


上司X

上司X: まったくだよ。リサイクルするにしても自国でやればいいんだよ。でも、そうするとコストがかかって金属を得ても利益が少なくなっちゃう。


ブラックピット

ブラックピット: ぬぬぬ。場合によってはリサイクル料金を払って処分してもらうのに、不正に利用されるとなればモヤモヤしますよ。もうPCを捨てないで保存しておこうかという気持ちにもなっちゃいますよ。


上司X

上司X: 自室のスペースに余裕があるならそうするといい。でも、正しく処理されれば再利用できる部分もあるから、本当はちゃんと廃棄した方がいいんだけどな。俺も捨てるときにはちゃんとした業者を選びたいと思うよ。

川柳

ブラックピット(本名非公開)

ブラックピット

年齢:36歳(独身)
所属:某企業SE(入社6年目)

昔レーサーに憧れ、夢見ていたが断念した経歴を持つ(中学生の時にゲームセンターのレーシングゲームで全国1位を取り、なんとなく自分ならイケる気がしてしまった)。愛車は黒のスカイライン。憧れはGTR。車とF1観戦が趣味。笑いはもっぱらシュールなネタが好き。

上司X(本名なぜか非公開)

上司X

年齢:46歳
所属:某企業システム部長(かなりのITベテラン)

中学生のときに秋葉原のBit-INN(ビットイン)で見たTK-80に魅せられITの世界に入る。以来ITひと筋。もともと車が趣味だったが、ブラックピットの影響で、つい最近F1にはまる。愛車はGTR(でも中古らしい)。人懐っこく、面倒見が良い性格。


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