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「心理的安全性=従業員に優しく」だと思っている人の勘違いとは?

昨今よく聞く「心理的安全性」というワード。専門家は「意味が誤解されている」と指摘する。

» 2023年06月27日 07時00分 公開
[Laurel KalserHR Dive]
HR Dive

 人事関連の調査会社であるMcLean&Companyのグレース・ユールズ氏(ヒューマンリソース・リサーチ兼アドバイザリー・サービスマネージャー)は「心理的安全性はチェックリストの項目でもなければ、すぐに解決できるものでもない」と述べる。

心理的安全性に関する「大きな誤解」

 心理的安全性についての大きな誤解の一つは、「"職場で親切にすること"だと思われていることだ」とユールズ氏は指摘する。では、心理的安全性の「本当の意味」とは何だろうか。

 McLean&Companyによれば、心理的に安全な職場環境は、従業員が身体的・感情的・心理的な危害から守られていると感じる「危害の防止」と、従業員が身体的・感情的・心理的に健康だと感じる「健康の促進」、責任ある方法での「事件や懸念の解決」という3つの柱で成り立っている(注1)。

 「それは、従業員がネガティブな結果を恐れずに安心して発言し、リスクを取り、自分らしくいられるようにする取り組みだ」(ユールズ氏)

 ユールズ氏によれば、心理的安全性が高ければメリットは大きく、低ければリスクは大きい。心理的安全性が高ければ従業員のエンゲージメントとイノベーションの向上に役立ち、低ければ収益に直接悪影響を及ぼす恐れがあるからだ。

 このような問題は、従業員にとっても重要だ。採用支援サービスを提供するOysterが実施した調査に回答したホワイトカラー労働者の8割以上が、心理的安全性を職場の最も価値のある側面の一つと考えていた(注2)。同調査は、職場での幸福感が低い従業員が集中力を欠く傾向にあり、これはMcLean&Companyの調査結果でエンゲージメントと心理的安全性が密接に関連していることと一致している。

 福利厚生を設計する担当者たちは従業員のメンタルヘルスに注目している。メンタルヘルスケアサービスを提供するLyra Healthが2023年2月に発表した調査結果によると、従業員は「メンタルヘルスの治療を受けられていない」と述べている(注3)。

 心理的安全性は従業員の幸福に不可欠な要素だが、「従業員が何を言ってもいい、何をしてもいいというわけではない」とユールズ氏は言う。

 「心理的安全性は、従業員間の信頼と相互尊重に基づいており、その目的は個々の人々が現状に意義を唱えたり、異なる懸念や視点を表明したりすることを心地良く感じられるように支援するものだ。意図的に間違ったことをする人々は、その責任を問われる」

「心理的安全性=仲が良い」ではない

 もう一つの誤解は、「心理的安全性が高いとき、従業員間の対立が最小限である」というものだ。むしろ「創造的な問題解決とイノベーションは、健全な意見の対立の上に成り立つ。心理的安全性は、従業員が互いに敬意を持って異議を唱えたり、異なる視点を提供したりできる環境を作り出す」とユールズ氏は指摘する。

 彼女は、心理的安全性を育成・維持するための5つのベストプラクティスを提案した。

 まず、仕事の重要性をチームで話し合うことを優先事項とすることだ。異なる視点に好奇心をもって耳を傾け、「もっと詳しく教えて。これは実際にはどのようなものだろうか。他のアプローチと比較してどのような利点があるのか」といった質問をする練習をしてほしい。

 2つ目は、心理的安全性を支えるチームの規範を作り、強化することだ。これにはチームメンバーが自分の立場に関係なく助けやフィードバックを求め、互いに尊重しながら異議を唱えることへの奨励が含まれる。また、ネガティブな行動や有害な行動を見つけたら、その場で対処するようにチームの動向を監視してほしい。

 3つ目は、各自が弱音を吐くことで勇気を示すことだ。「個人的な間違いを認め、課題を共有することは、他の従業員との信頼関係を築く上で大きな意味を持つ」とユールズ氏は言う。さらに、リスクを冒し、建設的なフィードバックを受けることに寛容な姿勢を持とう。

 4つ目は、失敗を学習の機会として扱うことだ。イノベーションは試行錯誤なくしては起こらない。失敗に対して罰や非難を浴びせるのではなく、根本的な原因と今後の行動指針を明らかにすることに集中しよう。

 5つ目は、心理的安全性に関する会話に従業員を参加させることだ。沈黙は、従業員が安心して貢献できない状態を意味している。1対1の会話で信頼関係を築いた上で、「自分の意見を聞いてもらえていると感じるか。もし感じないのであれば、何を変える必要があるか」といった質問を投げかけて改善すべき点を把握することが重要だ。

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