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KPMG幹部が語る、「仕事で病む」前にできる3つのアクション

多忙な若手時代を過ごした専門家が、従業員のメンタルヘルスを維持するための3つの方法について語った。仕事に押しつぶされる前に従業員ができることとは?

» 2023年07月06日 11時00分 公開
[Sandy TorchiaHR Dive]
HR Dive

本稿はコンサルティング企業のKPMGで人材と企業文化担当の取締役副会長を務めるサンディ・トーチア氏が執筆した。

 キャリアの初期、私は米国のカリフォルニアとワシントンD.C.を毎週往復し、仕事で大変な日々を過ごして疲れ果て、気分転換する時間もなかった。さまざまな会議で、女性や有色人種が私一人という日もあり、「自分もインポスター症候群(注)や燃え尽き症候群になってしまうのでは」と感じ始めていた。

 私は幸運にも周りのサポートに恵まれていたが、それがなければ、家族や友人に電話をしたり、ランニングをしたり、本を読んだりする時間を確保するなど、自分のメンタルヘルスを積極的に管理することがどれほど困難だったか分からない。これらの小さな行動は幸福感を向上させるが、効果を感じるためにはしっかりと継続する必要があり、しばしば仕事や私生活に邪魔されてしまう。

 企業は、従業員の精神的な幸福をサポートするために、どのような役割を果たしているのだろうか。私は現在、KPMGで人材と企業文化の責任者を務めているが、よくこれらについて自問自答する。これは良い福利厚生を提供すれば済むような簡単な話ではない。

メンタルヘルス管理の「3つの柱」

 私はメンタルヘルス啓発月間で、従業員が自分の健康を優先し、メンタルヘルスにまつわる偏見をなくすためのイベントや啓発キャンペーンを企画した。また、自社のメンタルヘルスに関する取り組みの進捗状況も振り返った。この取り組みでは以下の3つの柱が重要だ。

従業員からフィードバックを求め、それに対して行動する

 2023年2月に、私たちは従業員のメンタルヘルスに関する調査を実施した。この調査では、チームの連帯感やチームリーダーによる尊重とケア、仕事に対する肯定的な感情という明るい側面が示された。しかし、ワークライフバランスの維持などの課題が残った。この結果を基に、私たちは何千人もの従業員を対象にデジタルフォーカスグループ(匿名で意見を募集する場)を設け、調査結果をより深く掘り下げ、企業としてサポートできる分野はどこか、どのようにサポートすればいいかを特定しているところだ。これにより、従業員のニーズに合った適切な福利厚生を提供できる。

 また、「心理的安全性」と「メンタルヘルスの問題」という2つのバーチャルトレーニングを開始し、人々が自分や他人に配慮し、心理的に安全な職場環境を作れるようサポートしている。心理的安全性に関するトレーニングの受講は義務とし、2023年8月までに全従業員が受講する予定だ。メンタルヘルスに関するトレーニングは必須ではないが、これまで3分の1以上の従業員が自主的に受講しており、私たちのコミュニティにとってこのテーマが重要であることを示している。

チームリーダーに焦点を当てる

 リーダーがチーム全体をケアできるリソースを持っているかどうかを確認することが重要だ。これには以下のような行動が含まれる。

  • リーダーの仕事量を評価した上で効率化を検討し、彼ら・彼女らに過度な負担をかけず、効果的に部下をサポートできるようにする
  • リーダーのメンタルヘルスが彼らのチームにもたらすポジティブ、またはネガティブな波及効果を理解し、メンタルヘルスに問題を抱えていても感情を管理できるようサポートする
  • 1on1やチームのミーティングにおいて、同僚への過干渉などを避けるためのベストプラクティスを共有する

システムにおけるプレッシャーを軽減するために、仕事を再考する

 KPMGのハイブリッドワークモデルである「Flex with Purpose」の目的の一つは、従業員がクライアントや同僚と直接会うことに意味があるケースを特定することだ(注1)。直接会うことの利点と、燃え尽き症候群を緩和するための柔軟性のバランスをとることが重要だ。「KPMG Lakehouse」での会議やトレーニングは直接会うことに意味があるケースとみなされている。この施設はトレーニングや開発、イノベーションを行う施設であり、2022年には2万6000人近い従業員が来場した。また、2022年に私たちの会社が125周年を迎えた際、2万2000人以上のプロフェッショナルが集まり、約450の非営利団体に6万時間以上のボランティア活動を提供した、毎年恒例の「Community Impact Day」などのボランティア活動も対面で行う必要がある。

 私たちは年に2回、夏と年末に全社で1週間以上の休暇を設ける。この休暇は、従業員がリラックスして体力を回復するためのもので、個人的な休みのように、会議や電子メールのやりとりをすることもない。

 これらの取り組みは、仕事と生活のさまざまな要求をこなす従業員にとって、複雑なことをよりシンプルにし、必要な柔軟性を提供することを目的としている。私たちは、現在も将来も、人々のニーズに応えるために、プログラムや文化、仕事のやり方を進化させていくことを約束する。

出典:Normalize the conversation around mental well-being, from the top down(HR Dive)
注1:Hybrid’s success hinges on diversity, equity, and inclusion(KPMG)

注:社会的な評価や成功を肯定できず自分自身を過小評価する心理傾向

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