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「Windows 11よりもWindows NT搭載PCの方が高速」と言えるワケ:720th Lap

Windows 11を乗せた、Intel Core i5(2.4GHz)クアッドコア搭載のPCと、今から20年以上も前に製造された600MHzプロセッサ搭載のPCを比較したところ、ある点で後者の方が動作が高速であることが分かった。それはなぜ?

» 2023年07月28日 07時00分 公開
[キーマンズネット]

 Intelの創業者の一人であるゴードン・ムーア氏が提唱した「ムーアの法則」の通り、PCの性能は、誕生以来、向上を続けている。

 だが、今のPCは本当に速いのか。そんな疑問を抱いたあるエンジニアは、それを確かめるためにある実験をした。使われたのは「Windows 11」搭載のPCと、今から約28年前に提供された「Windows NT 3.51」を乗せたPCだ。両者のPCで幾つかのアプリを起動したところ、Windows NT 3.51機の方が動作が速いという。なぜ、そのような結果になったのか?

 ソフトウェアエンジニアのフリオ・メリノ氏は「PCは高性能化しているのに、アプリの起動速度は遅くなっていないか」という疑問を抱き、それを確認するためにある実験をした。同氏はソーシャルニュースサイト『Hacker News』に自身でスレッドを立ち上げ、2023年6月23日にTwitterに公開した動画を共有した。すると、スレッド参加者から大きな反響があり、話題になった。

 同氏は「Intel Core i5」(2.4GHzクアッドコア)のプロセッサと8GBのメモリを積んだWindows 11搭載の「Microsoft Surface Go 2」を用意し、コマンドプロンプトと「Internet Explorer」「メモ帳」「Microsoft Paint」を順に起動しては終了する様子を撮影し、その動画を公開した。これらのアプリは、Windows黎明(れいめい)期から標準で搭載されているWindowsの基本的なアプリだ。

 メリノ氏はWindows NT 3.51を搭載したPCでも同様のことを実行し、同じくその模様を撮影した動画を公開した。使ったのは20年以上前に製造されたPCで、詳細は不明だが、投稿によると600MHzのプロセッサに128MBのメモリ、そしてHDDが搭載されたものだという。

 この両者の動作を比べると、Windows NT 3.51機の方は“一瞬”でウィンドウが開き、起動速度が速く感じられた。一方、Windows 11のPCは、アプリの起動に時間がかかり、もたついている印象だった。

 メリノ氏は「さすがにWindows NT 3.51はアンフェアだ」とし、同じPCに「Windows 2000」をインストールして同様の実験をした。それでもやはり、動画を見るとWindows 11機よりもずっとスムーズにアプリが起動しているに見える。

 この動画を見たTwitterのフォロワーから「Surface Go 2は非力だ」との声を受け、メリノ氏はWindows OSを載せた「Mac Pro」でも同様の実験をした。

 メリノ氏の投稿には「CPUは6コア3.5GHz、32GBメモリを搭載」という情報しかないが、推定するに2013年に発売された「Intel Xeon E5」プロセッサを搭載したMac Proだと思われる。これも同様に動作がもたついている印象だった。

 メリノ氏は「全てのアプリはキャッシュされ、部分的にペイントされる様子に注目してほしい」とツイートした。確かに、投稿された動画を見ると、ウィンドウが開く時に枠線が表示され、内側が塗りつぶされてアプリが起動するように見受けられる。同氏は「この20年間でPCの基本的なスペックは向上し、さまざまな技術を利用できるようになったが、全体的に動作が遅くなった」と指摘した。ワークステーションや「Intel Core i7」を搭載した「Microsoft Surface Laptop」のようなハイスペックPCでも同様だとし、いずれもUIの描画のせいで起動が遅くなっているようだ。

 Hacker Newsのスレッドではさまざまな意見が飛び交い、「最新のメモ帳はUWP版なので遅くなったのではないか」との声もあった。従来のWindowsアプリとは異なり、マルチプラットフォームで動作する仕様のため「多くの処理が必要なのでは」との推測だ。

 また「ヴィルトの法則」を指摘する人もいた。ヴィルトの法則とは、1995年にスイスの計算機科学者ニクラウス・ヴィルト氏が提唱したもので、「ソフトウェアは、ハードウェアが高速化するより急速に低速化する」というもの。ムーアの法則にのっとってPCが高性能化したとしても、ソフトウェアはそれを上回って肥大化し、結果的に低速になってしまう。メリノ氏は、このヴィルトの法則を顕現させたのかもしれない。

 この20年のWindowsの進化において、Windows標準アプリの起動が低速化していたことが明らかになった。このままアプリは遅くなるばかりなのだろうか。それとも改善されるのだろうか。


上司X

上司X: この20年でPCは高性能化しているのにアプリの起動が遅くなってる気がする、というツイートが話題になったという話だよ。


ブラックピット

ブラックピット: もうTwitterは終わりましたよ。でも投稿一つ一つは「ツイート」って言うんですかね?


上司X

上司X: いきなり話題の本筋から離れないでもらえるかな。


ブラックピット

ブラックピット: すみません。アプリの起動速度低下ですね。うーんどうでしょう? あんまり実感がないですねえ。


上司X

上司X: メリノ氏みたいに、新旧並べて比較してないもんな。いつの間にか慣れてしまっているけど、確かに昔のアプリはスパッと起動していた気がするよ。


ブラックピット

ブラックピット: またまたー。メリノ氏の動画を見たからそう言ってるんでしょう?


上司X

上司X: ゴホン、まあそうだけど。でも、確かに最近はアプリを起動するのに一拍置いている感じはあるかもしれない。


ブラックピット

ブラックピット: それが当然と思ってしまっているのかもしれませんね。同じマシンを使っていて「遅くなったな」ていうのは、何か問題が起こっていると推測できますが、昔のマシンと比較するのは難しいですし。


上司X

上司X: アプリの動作を比較するのは斬新な試みだったかもな。まあともかく、PCが高性能になるに伴ってアプリだって使いやすくなっているわけだ。起動が多少遅くてモッサリしてる感じても、受けるメリットは多いよ。どちらを優先すべきかは明確なのかもしれないけどな。

川柳

ブラックピット(本名非公開)

ブラックピット

年齢:36歳(独身)
所属:某企業SE(入社6年目)

昔レーサーに憧れ、夢見ていたが断念した経歴を持つ(中学生の時にゲームセンターのレーシングゲームで全国1位を取り、なんとなく自分ならイケる気がしてしまった)。愛車は黒のスカイライン。憧れはGTR。車とF1観戦が趣味。笑いはもっぱらシュールなネタが好き。

上司X(本名なぜか非公開)

上司X

年齢:46歳
所属:某企業システム部長(かなりのITベテラン)

中学生のときに秋葉原のBit-INN(ビットイン)で見たTK-80に魅せられITの世界に入る。以来ITひと筋。もともと車が趣味だったが、ブラックピットの影響で、つい最近F1にはまる。愛車はGTR(でも中古らしい)。人懐っこく、面倒見が良い性格。


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