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「これだから最近の若者は……」と思うのはなぜか 専門家が語るやむを得ない事情

ある調査によると、企業幹部の一定数が新卒者に対して「社会人として準備不足」だと考えていることが分かった。なぜこのような世代間の認識の差が生まれてしまうのだろうか。コミュニケーションと人材育成の専門家の意見を紹介する。

» 2023年09月14日 08時00分 公開
[Laurel KalserHR Dive]
HR Dive

 データに基づいた知見を提供するIntelligentとPollfishの調査結果によると、ビジネスリーダーの10人に4人は、新卒者(2020年卒から2023年卒)は「社会人としての準備ができていない」と考えているようだ(注1)。

 調査対象となった1200人以上の経営層やビジネスオーナー、人事担当者、その他の管理職のほぼ4分の3が、新卒者が社会人としての準備ができていない理由として「労働倫理とコミュニケーションスキル」を挙げ、約3分の2は「文化」を挙げた。

なぜ「最近の若者は……」と思ってしまうのか?

 このような世代間の認識の差はなぜ生まれてしまうのか。イサカ大学で戦略コミュニケーションを担当する教授であり、人材育成関連サービスを提供するGayeski Analyticsの代表でもあるダイアナ・ゲイスキ氏は2023年8月7日、同調査結果について次のように指摘した。

 「実際のところ、昨今の職場で働く準備ができている人はいない。最近の新卒者は、50歳の幹部とは異なるコミュニケーションスタイルを持っており、ソーシャルメディアやテキスト、『Slack』『Google ドキュメント』などのツールを使用して効果的に連携し、仕事を進める能力を持っている。賢明な組織になるためには、新しい世代のスタイルと価値観を理解し、従業員と顧客のために良いことを成し遂げる組織をどのように構築すべきかリーダーが自問することが重要だ。多くの新卒者は、従来のような形で授業やクラブ、寮での時間を過ごすのではなく、『Zoom』を通した学校で2年間を過ごしており、人間関係に関するスキルと自信を培う機会を逃してしまった」

 これらの新卒者は、特異な環境で過ごしたことに由来する欠点を自覚している。2023年の初めに発表された調査結果では、間もなく大学を卒業する予定のグループが「パンデミックが私たちのメンタルヘルスを悪化させ、就職のための準備に悪影響を及ぼした」と述べている(注2)。

新卒社員は何を求めているのか

 企業のリーダーや人事マネジャー、採用チームは次の点を意識することで、採用において同業他社よりも有利になれる可能性がある。調査に回答した新卒者のほぼ全員が「企業はメンタルヘルスに関する福利厚生を提供すべきだ」と答えた。また、3分の1以上は「就職活動において、これらの福利厚生を提供する企業を優先して選んでいる」と回答している。

 4大監査法人であるErnst & Young(EY)と保険業界団体のLIMRAが2023年8月に発表した共同研究によると、メンタルヘルスに関するサポートのみならず、企業は報酬体系を見直す必要があるという(注3)。なぜなら、現在の多くの制度がベビーブーマー世代およびX世代向けに設計されているためだ。

 研究者によると、各世代は独自のニーズと優先事項を持っている。これらのニーズに応え、現代的な方法で解決策を提供するために、報酬マネジメント体系を改善しなければならない。

 もう一つ改善が必要な点がある。それは、採用担当者と新卒者の間で給与に関する期待が異なるというものだ。Intelligentの調査によると、ビジネスリーダーの57%が「最近の新卒者が現実的ではない高い給与を要求した」と述べた。同調査結果では、10万ドル以上の給与を要求した候補者が応募したポジションの、3分の2は給与7万ドル以下だったという。

 一方で、求人プラットフォームであるMonsterの調査によると、新卒者の77%が、給与の凍結を最近実施した企業を避けている(注4)。新卒者はビジネス市場の変化によく通じている。彼らの10人に7人が「平均よりも低い収益を報告した企業には応募しない」と述べており、4分の3は「最近、従業員を解雇した企業には応募しない」と回答している。

 新卒者とビジネスリーダーが共通の懸念を持つ分野もある。それは生成AI(人工知能)が職場に与える影響だ(注5)。ある調査によると、過去1年間に新卒で入社した1000人のうち約半数が、新たなテクノロジーに脅威を感じているという。調査に回答した採用マネジャーたちは「多くの従業員が新しいスキルを身に付けなければならない」という意見を持っていた。

 しかし、別の報告書によると、企業は採用ニーズに対するAIの影響を理解しながらも、問題解決能力や創造力、想像力、学習能力といった人間的な認知スキルには引き続き需要があると考えているようだ。

 ゲイスキ氏はビジネスリーダーたちに対して、新しい世代の従業員を信頼するように促し、「どうすれば効率的に目標を達成できるか、どうすれば従業員も企業も成長できる環境を構築できるかについて、重要な新しい視点をもたらしてくれる賢く若いプロフェッショナルが不足することはないだろう」と述べた。

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