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AI好きは知っているが、一般知名度が低い「Claude」でできること【「ChatGPT」比較レビュー】

生成AIチャットbotサービスの代表たる「ChatGPT」や、MicrosoftやGoogleの「Copilot」「Gemini」に比べ、性能は劣らないのに知名度が低い「Claude」。実際に使ってその性質やできることを解説します。

» 2025年06月18日 10時00分 公開
[谷井将人キーマンズネット]

 生成AIチャットbotサービスの説明をするとき、皆さんならどのように伝えますか。結局のところ「ChatGPTのようなサービス」と表現する場合が多いのではないでしょうか。現在、さまざまなサービスがあり、代表例としてMicrosoftの「Copilot」シリーズやGoogleの「Gemini」が挙げられます。ChatGPTはこの製品ジャンルの代表格で、CopilotやGeminiは導入率の高いビジネススイートに含まれていたりで名前を聞くことも多いでしょう。

 その中でも、AIに詳しい人には知られているものの、認知度がまだ低いのがAnthropicの「Claude」です。少し前の調査なのですが、ICT総研の「2024年度 生成AIサービス利用動向に関する調査」によると、2024年6月時点でChatGPTの利用率が18.3%、Copilotが8.9%、Geminiが5.4%だったのに対し、Claudeはその他(0.7%)に含まれる程度でした。

 モデルの性能はトップクラスといって差し支えなく、生成AI業界の中でもかなり目立つ企業の製品でもあります。今回はそんなClaudeでどんなことができるのか見ていきましょう。使うのは筆者がプライベートで使っているアカウントです。

Claudeのプランと価格

 ClaudeはChatGPTと同様、生成AIとチャットできるサービスです。読み方は、画家のクロード・モネと同じ綴りで「クロード」と読みます。できることもおよそ同じで“AIの性格”がちょっと違う印象です。

 プランは個人向けが「Free」(無料)、「Pro」(月額17ドル・約2454円から)、「Max」(月額100ドル・約1万4431円から)、組織向けが「Team」(1人当たり月額30ドル・約4328円)、「Enterprise」(個別価格)です(いずれも、本稿公開時点の価格)。

 Freeプランではチャットや画像分析、Web検索ができます。Proプランでは外部ツールとの連携を含む全ての機能が使えます。Maxプランは利用制限が緩和されます。組織向けは請求がまとめられたり、SSO対応や監査ログの確認ができたりします。

 筆者はプライベートでProプランを契約して、プログラムの生成に使っています。

「忖度少なめで気が利く」ChatGPTとは異なるClaudeの性格とは

 機能や性能ではChatGPTとあまり変わらないのですが、生成したテキストには“性格の違い”があります。

 Claudeはよく「日本語が上手だ」と言われる印象です。登場当時も「(匿名掲示板の)『5ちゃんねる』風のテキストを創作させたら圧倒的に自然だった」と話題になっていました。現在ではプログラミングスキルを評価されているように思います。

 また、ChatGPTは「それはいい指摘ですね! それでは〜〜」のようにいったんユーザーをほめてから本題に入ることが多い気がしますが、Claudeはニュートラルです。普通に「はい。では○○を実装していきましょう」くらいで本題に入ります。

 一見ささいに思えても、実は使用感に大きく影響するポイントです。ChatGPTの「いったん褒めてから始める」語り口は面倒というか、あまりにしつこく褒めてくるので「そんなのはいいから早く本題に触れてくれ」という気分になります。設定で抑えることはできますけどね。

 もう一つの違いが、気配りの度合いです。例として以下の指示をChatGPTとClaudeに入力してみました。

 おしゃれなリバーシを作ってください。プレイヤーがおけるマスを示しつつ、それぞれについて、そこに石を置くと次のターンで相手が置けるマスの数を表示する仕組みをつけてください

 プロンプトというには雑ですね。細かい仕様の希望を伝えず、生成AI側にゆだねる部分が多い指示です。これで出力されたのが以下のGUIです。

photo ChatGPTが作ったリバーシ。石を置きたいマスにマウスオーバーするまで追加情報が出ないので使いにくい
photo Claudeが作ったリバーシ

 実際に遊んでみるとClaude製の方が圧倒的に使いやすい印象です。ChatGPT製の方はマウスオーバーするまで“相手が置けるマスの数”が表示されないため、いちいち考えられるマス全てにカーソルを移動させないといけません。Claude製の方は標準で数字が表示されているのでスピーディーに判断できます。

 そもそも「新しいゲーム」ボタンやアイコンの意味の説明、今どちらのターンなのか、といった表示はユーザーが指定したものでもないのにClaudeが勝手に追加してくれています。ChatGPTも言えば付けてくれますが、これが“気が利く”ということだと感じています。

MCPという強み

 Claudeが特に強いのが「MCP」(Model Context Protocol)というプロトコルに公式対応しているという点です。MCPというのはClaudeを開発しているAnthropicが作ったオープンプロトコルで、生成AIと外部ツールを接続するための仕組みです。生成AIがさまざまな道具を使えるようになるため、単体ではできないさまざまな機能を追加できます。

 Claudeのデスクトップ版ではこのMCPを使って、生成AIが苦手な厳密な計算や正確性が重視されるタスクをこなしたり、PC内のデータを加工したりといった幅広い作業に対応できます。具体的な使い方や連携できる外部ツールの紹介は以前の記事を参照してください。

>AIエージェントの基礎技術になる? 「MCPサーバ」とは 文系記者が実際に作って解説<

日常使いしてみての不満点

 Claudeは全体的に品質も良く個人的には好きでよく使うのですが、不満もあります。Claudeには高品質モデルの「Sonnet」と最高品質モデルの「Opus」があります。ProプランだとOpusの利用回数に制限があります。これは当然なのですが、Sonnetにも使用制限があり、これが割と到達しやすい印象です。

 ClaudeでWebアプリを作っていると、JavaScriptをHTMLタグの外に記述してしまうミスがそやや頻繁に起こるため、残念なポイントです。そういったミスを修正している間に制限に引っ掛かることがあり、ストレスを感じるときもあります。数時間待つと制限が解除されます。Maxプランや組織向けではこの制限は大幅に緩和されます。

 プロジェクトの合計文字数制限も達しやすいです。Claudeには1つのプロジェクトの中で使える最大文字数があります。これ以上のやりとりはできず、記憶がリセットされた次のプロジェクトを立てることになります。これもClaudeの生成コードが完璧でないため、修正に手間取っているうちに制限に達ってしまい、ストレスを感じることがあります。

 こういうこともあって、筆者は気の利くClaudeで大まかな機能を作って、ChatGPTで修正するというように使い分けています。正直なところ、「Cursor」などのAIコーディングツールを使った方が、ストレスなくスムーズに作業が進むと感じます。

 今はちょうど「Claude Code」というAIコーディングツールが出ているので、CUIに忌避感がないならこれを使うのも一つの手でしょう。

Claudeを契約するよりも

 ここまでClaudeをそのまま使う想定で解説しましたが、ビジネスで使うならおそらくClaudeそのものというより、Snowflakeの「Cortex AI」やAWSの「Amazon Bedrock」などで提供されるSonnetやOpusなどのモデルを使うのがおすすめです。リージョンによって使えるモデルが違うので注意が必要です。

 これらのサービスではさまざまなベンダーのモデルを使えるので、名前を知っているからという理由でGPT系のモデルやCopilot、Geminiなどを使っている人や、気の利いたセンスのいいプログラムやこなれた日本語が必要な場合はClaude系のモデルを選んでみてはいかがでしょうか。

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