KDDIスマートドローンは「Amazon SageMaker」と連携したAI解析ドローンシステムを開発し、太陽光発電施設の夜間警備に実装した。遠隔運航とリアルタイム解析を組み合わせ、人的負担を軽減しつつ盗難対策を強化している。
KDDIスマートドローンは2025年6月11日、Amazon Web Services(AWS)公式ブログで夜間監視用ドローンと機械学習Platform「Amazon SageMaker」を組み合わせたAI解析ソリューションの実運用事例を発表した。
背景には国際的資源価格の上昇があり、とりわけ銅は過去5年間で約2倍に高騰した結果、ケーブルを狙う窃盗被害が関東圏の太陽光発電施設で急増している。山林や造成地に広がる施設は周辺照明が乏しく、昼夜を問わず関係者以外の目が届きにくい。赤外線センサーや定点カメラを増設しても死角が残り、警備員を常時巡回させるには人件費が膨らむ。盗難被害が事業収益を直撃する発電事業者は、現場に人を張り付けずに広域を常時観測する手段を必要としていた。
KDDIスマートドローンは解決策として、バッテリー充電と離着陸を自動化したドローンポートを設置し、Webアプリから飛行計画と監視パターンを登録すれば現地スタッフ不在でも定刻に無人機が発進するシステムを構築した。機体には高感度サーマルカメラを搭載し、人や動物が放つ微弱な熱源を遠距離から捉える。
利用者はイベント種別とスケジュールを事前に設定でき、夜間巡回中に人物を認識した瞬間ブラウザへ警告ポップアップと画像サムネイルが即時配信される。飛行後、映像と静止画をクラウドへ自動保存し、地理情報とひもづけて地図ビュー上で時系列に確認できるため、証跡保全や警察への情報提供も円滑になる。現場のエネルギー環境や機体性能に応じ、将来的に複数のAIモデルを切り替えて車両滞留や火災兆候など多様なイベントを扱うロードマップも示されている。
導入効果として、広域を担う太陽光発電施設での夜間警備に必要な人員が顕著に減少し、巡回費用を数十%抑えながら盗難発生時の対応速度を高められた。ポート型ドローンは遠隔から複数機体を同時制御でき、手動操縦に伴う技能差も排除される。AIによる人物識別は熱源解析と深層学習特長抽出を組み合わせた手法を採用し、高感度に反応する小動物や反射体をノイズとして除去することで誤検知率を抑制した。
今後は水上飛行艇や固定翼機など新たなプラットフォームへ展開し、盗難車両追跡、構造物亀裂検知、災害時状況把握などユースケースを拡げる意向だ。AWSとの協業によりエネルギー産業だけでなく自治体防災や物流支援分野への波及も見込まれ、クラウド基盤を共有することで地域や企業横断のデータ連係が容易になり、セキュリティと事業効率の双方で持続的な改善が見込める。
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