DX推進の要請やコスト削減、人材不足など情シスを取り巻く環境には困難が多いが、その中でも企業の競争力強化に貢献する「攻めの情シス」になる方法がある。本記事では、攻めの情シスになるための時間創出方法を紹介する。
「対応が遅い」「マニュアルが分かりにくい」「好きなソフトを使わせてくれ」──情報システム部門の担当者(以下、情シス)には日々さまざまな苦情が寄せられている。このような状態を「責められの情シス」と表現するのは、「PC・ネットワークの管理・活用を考える会」(以下、PCNW)で座長を務める関野博之氏だ。
関野氏は「今こそ『責められの情シス』を『攻めの情シス』に変えなければならない」と強調する。本記事では、同氏による講演「責め(られ)の情シスから攻めの情シスへ 少人数で実現するには?」を基に、少人数で情シスに変革を起こすヒントを紹介する。
本稿はアイティメディアが主催したイベント「変わる情シス 2025夏」(期間:2025年9月8〜12日)でPC・ネットワークの管理・活用を考える会座長の関野博之氏の講演した内容を編集部で再構成したものだ。
講演の冒頭で、関野氏は現代の情シスを取り巻く困難に言及した。
情シスはDX推進が求められ、その役割はインフラの整備、運用だけでなく、ビジネス戦略の立案や業務改善へと拡大している。また、AIの効果的な活用や倫理問題への対応、セキュリティリスク対策も情シスの役割だ。
このような役割の拡大に加えて、コスト削減や専門人材不足の問題があり、情シスの業務の一部または全部を外部に委託している企業は多い。外注することで専門性の高いITサービスを活用できたり、迅速な対応が可能になったりするが、重要資産の管理や外部との信頼関係、内製化のバランスなどが課題となるケースもある。
そもそも情シスはどのような役割を担う部署なのだろうか。この点について、関野氏は次のように語る。
「現在の情シスには守りの役割と攻めの役割がある。守りの役割は、企業のIT基盤を支えるためのシステム運用やネットワーク管理、セキュリティ対策、ITサポートなどだ。攻めの役割は、業務効率化や競争力強化に貢献するDX推進などが挙げられる。ウェイトが高いのは攻めの役割だ」
しかし、多くの企業において情シスは守りの役割に忙殺されている。情シスが攻めの役割を果たすためには時間を創出しなければならない。
攻めの情シスとして役割を果たすための時間を創出するには、そもそも何に時間を取られているのかを考える必要がある。
関野氏は「実は多くの情シスは『計画的に進められない業務』に時間を取られている。その実態を把握した上で、時間創出につながるアウトソーシングと自動化について確認してみよう」と語った。
情シスが計画的に進められる業務とは、インフラの構築保守やシステム運用、IT資産管理、PC管理、ネットワーク管理、セキュリティ管理などだ。
一方、計画的に進められない業務は、問い合わせ対応やトラブル対応だ。問い合わせもトラブルも発生するタイミングが予測できず、発生した場合は迅速に対処しなければならない。
「情シスが日々どのような業務に時間を割いているのかを知るために、PCNWの参加者にアンケートを取ったところ、回答者の48%が『社内問い合わせ対応に1日の時間の50%以上を使っている』と回答した」
社内問い合わせにはさまざまな内容がある。システムの操作方法や設定、申請に関する問い合わせが全体の54%を占めているという。そして、回答のうち88%は社内問い合わせに関する記録を残している状態のものだ。つまり、記録があるにもかかわらず、情シスは1日の半分以上の時間を社内問い合わせ対応に使っているといえる。
「このような状況を改善するためには、社内問い合わせに関する記録を活用しなければならない。操作方法や設定、申請に関する回答は画一的なものになりやすいため、社内記録の効果的な活用をできると、情シスのリソースに余裕が生まれる」
実際、PCNWの参加者は、マニュアルやFAQ、入口サイト、チャットbotなどを使い、ユーザーが自分で問題を解決できる環境を構築した。また、部門協力者を確保して部門内の問題を解決してもらったり、ユーザー教育に取り組んだりしている組織もある。
情シスのリソースに余裕を持たせるためには、アウトソーシングという選択肢もある。関野氏によると、インフラ構築保守やシステム運用、IT資産管理、PC管理、ネットワーク管理、各種の問い合わせ対応をはじめとする情シス業務の大半はアウトソーシングが可能だという。
一方、PCNWの参加者にアンケートを取ったところ、アウトソーシングを利用した経験があるのは全体の25%にとどまった。アウトソーシングの経験者に確認したところ、問い合わせ対応やPC管理、システム運用、ネットワーク管理などの業務がアウトソースしやすいという。
関野氏は「攻めの情シスになるためには、何をアウトソーシングして何を自社で推進するかの線引が重要だ」と強調する。関野氏は、運用業務などの守りの業務はアウトソーシングし、守りの要となる業務と、攻めの役割は自社で推進する形を推奨した。
アウトソーシングに適した運用業務としては、問い合わせ対応やトラブル対応、PC管理、システム設計構築、システム運用、ネットワーク管理、IT資産管理、インフラ構築保守などがある。
一方で、自社で推進すべき守りの要となる業務とは、セキュリティ管理や引用体制の確立・維持、要員教育、技術検証(PoC)を指す。また、攻めの業務であるIT戦略やDX推進、経営支援、収益向上、働き方改革、競争力強化も内製化すべき対象だ。
「アウトソーシングするとしても、事前に業務の手順を整理する必要がある。生成AIなどを活用し、アウトソーシングの準備を効率的に進めるのがよい」
情シスの時間創出に、生成AIをはじめとする業務自動化ツールはどの程度役立つのだろうか。PCNWの参加者に生成AIについてアンケートを取ったところ、全体の70%は社内環境で生成AIの利用を許可しているという。
関野氏は「ChatGPT」を使ってVBAソースとスクリプトを開発した経験について、「2〜3箇所修正するだけで動くスクリプトを生成AIが作ってくれた。会話形式でブラッシュアップできるため、手順書を読む場合と比較して作業時間が短くなる」と述べた。「Microsoft Copilot」を使って「kintone」用のJavaScriptを作った際も同様に、作業時間を大きく短縮できたという。
関野氏によると、情シス業務にはAIで自動化できるものが多い。AIが代替できないのは、物理的な対応と人間による高度な判断だ。関野氏は、情シス業務の中でAIに任せられる業務に取り消し線を引いて示した。
DX推進の要請やコスト削減、人材不足などの影響を受け、情シスの役割は拡大している。情シスには守りの役割と攻めの役割があり、ウェイトが高いのは後者だ。
情シスが攻めの役割に集中するためには時間を創出しなければならない。計画的に進めることが難しい業務の一つである社内問い合わせ対応を効率化し、アウトソーシングと自動化によって情シスのリソースに余裕を作ることが重要だ。
情シスはAI時代をどう乗り切る? 「業務コンサル」への転身術を実例を基に解説
スノーピークの子会社が明かす、データ活用が「うまくいく組織」「いかない組織」の違い
情シスが「上司、配属ガチャ」に左右されないキャリアを自分で育てる方法Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
製品カタログや技術資料、導入事例など、IT導入の課題解決に役立つ資料を簡単に入手できます。