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「AWS認定」「登録セキスぺ」に並ぶ新定番 受験者急増のIT資格と納得の理由IT資格の取得状況(2025年)/後編

IT資格の取得意欲が過去最高水準だ。定番の国家資格に加え、AWS認定各種や情報処理安全確保支援士(登録セキスぺ)と並び急伸中のIT資格とは。AIを活用した最新勉強法や、大企業で減少する支援制度への不満を紹介する。

» 2026年01月15日 07時00分 公開
[キーマンズネット]

 IT人材不足を背景にリスキリングの機運が高まり、IT資格の取得意欲は過去6年間で最高水準に達している。「基本情報技術者」や「ITパスポート」「応用情報技術者」といった国家資格を多くの人が取得している中で、IT人材が次に狙う「新定番」に変化が起きている。「AWS認定」や「情報処理安全確保支援士(登録セキスぺ)」といった専門性の高い資格と並び、受験者を増やしているIT資格の正体とは。

 本稿は、キーマンズネットが実施した読者調査「IT資格の取得に関するアンケート調査」(実施期間:2025年12月5〜19日、回答件数:387件)の結果を基に、2026年のIT資格のトレンドを分析する。

 生成AIを「パーソナライズされた家庭教師」として活用する最新の勉強スタイルや、大企業を中心に縮小傾向にある「資格取得支援制度」に対する不満まで、IT資格を巡る実態を解き明かす。

「AWS認定」「登録セキスぺ」に並ぶ“新”人気資格

 はじめに、「今後取得したいIT資格」「取得予定のIT資格」について聞いたところ「ある」(57.6%)との回答が過半数となった。業種別では、医療・教育・研究機関などの「その他業種」(63.4%)、「流通・サービス業全般」(62.2%)が上位に続き、前編でIT資格の保有率が約9割と最多であった「IT製品関連業」(58.4%)を超えた。IT資格の取得予定がある人の割合は、定点調査を開始した2020年からの6年間で最も高い。

 取得予定のIT資格は「AWS認定各種」(21.5%)、「情報処理安全確保支援士(登録セキスぺ)」(17.0%)、「生成AIパスポート」(16.6%)、「G検定」(13.9%)と続く。

 2024年11月に実施した前回調査との比較して、クラウドやセキュリティ分野のニーズが高い傾向に変化はなかった。ただし、ディープラーニングなどAIの仕組みを体系的に学ぶ「G検定」や生成AIを安全に利用するための基本リテラシーを問う「生成AIパスポート」といったAI分野の資格への関心は急増している(図1)。

図1 今後取得したいまたは取得予定のIT資格(回答件数:223件、複数回答可)

 特に、一般社団法人生成AI活用普及協会(GUGA)が主催する「生成AIパスポート」は、2023年10月に第1回試験が開催された民間資格であるにもかかわらず、2025年11月には累計受験者数が5.3万人を超えている。多くの企業が業務でAIを本格導入し始めたこともあり、IT部門やエンジニアだけではなく全ユーザーが持つべきリテラシーとして認知されているのだろう。

 IT資格の取得目的で多いのは「自己研さんのため」(80.3%)、「実務で必要となるため」(27.4%)、「対外的なアピールのため」(25.1%)、「就職、転職を考えているため」(14.8%)と続く(図2)。

図2 今後IT資格を取得する目的(業種別)

 業種別では、IT製品関連業で「会社で取得を推奨もしくは義務化されているため」や「昇給のため」「昇進や昇格のため」といった、義務化や昇格・昇給要件が高い傾向だ。「報奨金が支給されるため」を目的に挙げる割合も他業種と比べて高い傾向にあった。

学習期間短期化のポイントは「カスタマイズ」

 次に、IT資格取得に向けた学習方法を見ていこう。まず受験までの勉強時間は「1カ月〜3カ月」(43.6%)、「4カ月〜6カ月」(31.4%)が上位に挙がった(図3)。

図3 勉強時間(業種別)

 「3カ月以下」が50.7%と約半数で、「4カ月〜6カ月」で約3割、「7カ月以上」が約2割といった内訳だ。業種別ではIT製品関連業で「1カ月未満」が若干高い傾向にあったが、挑戦資格の難易度にもよるところも多く、あくまで参考程度としてほしい。

 勉強方法は「参考書を購入し独学で勉強した」(85.4%)が大多数で、「通信教育やe-ラーニングを受講した」(27.9%)を大きく上回る。「社内外の勉強会や学習サークルで学んだ」(6.1%)や「専門スクールに通った」(3.9%)など、社外コミュニティーへの参加するケースもあるようだ(図4)。「その他」には「無償のWebサイトや無料アプリ」「動画(YouTube)」や「AI」などが寄せられ、学習リソースも多様化している。

図4 勉強方法(業種別)

 特に、生成AIを利用すれば、自身が間違いやすいポイントに絞った問題を提示させたり、分からない箇所をより平易に解説させたりできるなど、「パーソナライズされた家庭教師」のような活用が見込める。時間や場所、理解度など自身の学習スタイルに合わせ、さまざまな学習リソースをカスタマイズするのが主流となりそうだ。

大企業を中心に「資格取得支援制度」は減少傾向

 受験料負担や書籍購入費を負担することで資格取得を後押しする「支援制度」を設置する企業は年々減少傾向にある。今回の調査で支援制度が「ある」(50.6%)は半数を超える結果となったが、2020年からの6年間で10ポイント近く減少している。

 従業員規模別で見ると、制度がない割合が高いのが「100人以下」(70.6%)と「101〜500人」(51.9%)で、中堅・中小企業帯に多い。ただし、6年間を通して見ると、5001人以上の大企業帯で支援制度の減少が続いており、中堅・中小企業帯は増加傾向にある。制度が存在する企業の割合は、5001人以上の大企業帯では2020年の75.0%から2025年の今回調査では59.7%と15.3ポイント減少した。

 一方、500人以下の中堅・中小企業帯は2020年に2割以下だったが、3〜5割が制度を設けている。DX推進や採用ブランド力のアップ、取引企業に対する営業・提案力の向上など、資格支援の強化が生存戦略で必要な投資と認知され始めているのかもしれない。

 一方、大企業帯では、前述したような学習リソースの多様化も背景に、費用対効果面でも画一的な支援制度を展開するより、従業員の意志による自律的な学びや教育の効率化に舵を切る方針を取っているのだろう。

 関連して支援制度による補填(ほてん)対象を見ると、全体では「試験に合格した場合、報奨金が支給される」(46.9%)、「試験に合格した場合、会社が受験料を全額負担」(40.8%)、「合否にかかわらず、会社が受験料を全額負担」(17.3%)、「資格習得に必要なセミナー、ウェビナー参加費用を会社が負担」(17.3%)が上位に続いた(図5)。前年比では、合格時の受験料全額負担が報奨金支給が11.1ポイント、合格時の報奨金支給が1.2ポイントと補填を減らす傾向が見られ、特に大企業帯では減少幅が大きかった。

図5 資格支援制度の補填対象や範囲(従業員規模別)

資格支援制度に対する「4つ」の課題

 最後に、IT関連の資格取得支援制度がある人に対し、自社の資格習得支援制度に対する要望や課題点をフリーコメントで聞いたので紹介する。寄せられた意見は大きく4つに整理でき、制度の実態と期待の乖離(かいり)に苦しむ従業員の本音が垣間見える。

 1つ目は、金銭的なインセンティブの不十分さだ。「受験費用は出るが、参考書の購入費用やセミナー費用は自腹となる。結果、合格しても赤字」や「基本情報試験とITパスポートの合格祝い金が同額なのは合点がいかない」「合格時の一時金ではなく資格手当として支給して欲しい」など、学習にかかる隠れたコストが、受験料を中心とした補助だけではまかないきれないとの意見があった。

 2つ目は、制度の柔軟性と更新不足についてだ。「IPA試験は補助があるが、民間資格は補助がない。AWSやGoogle関連など業務に直結するものは補助があると助かる」や「対象リストに基づく支援なので、より上位の資格を取得しても対象外。柔軟に対応してほしい」が挙げられる。「資格が業務に関連するかどうかによって報償金が変わるが、その判断をする担当者がついていけていない」など、支援制度の更新に時間がかかるという現状に不満を持つ人も多いようだ。

 3つ目は、申請手続きの煩雑さや心理的ハードルを指摘する声だ。「申請が面倒。申請できるタイミングが非常に限られている」や「受験前の事前エントリー制なので試験に落ちると格好悪い」があった。特に「負担した教材費用の支払いが資格取得後になるため、教材費が高いとためらう」や「試験代が後払いのため、高額だと払うときにつらい」のように、金銭立て替えが発生する制度設計になっている場合、特に若年層を中心に申請障壁になることもあるようだ。

 4つ目は、組織の評価や実務に還元されていないという不満だ。「業務内での資格取得のため、忙しすぎる担当者は辞退しがち」や「資格をとるだけで案件に役立てられていない」「現在、褒賞の対象が高度情報(情報処理技術者試験におけるスキルレベル4)以上のため、若手が積極的に資格の勉強をしない」など、資格取得が個人の裁量に任せられ、企業として資格保有者を戦略的に生かす仕組みになっていないとの意見もあった。

 そうした背景も関係してか、「取得に対する報奨金のみのため更新に高額費用がかかる。資格の維持で負担が多いが、そこへの理解が低い」や「1社員に対する金額の上限がある。生涯で20万円となっておりハイレベルな資格を2つ取得すると上限になる」など、育成戦略に資格支援制度がひも付いていないと、現場の不満も大きくなる印象だ。

 企業としてはこうした声も参考に、IT資格取得を中心とした従業員のスキルアップをどのように促進していくべきなのか、改めて考える必要があるだろう。

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