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ChatGPTに「資格取得」の落とし穴を聞いてみた

読者調査によれば企業が抱える課題には定番がある。「人材育成」や「IT人材の不足」だ。これらの課題を解決するために何ができるだろうか。

» 2024年03月05日 12時00分 公開
[畑陽一郎キーマンズネット]

 企業が成長し、業務を拡大していくためにはIT投資は欠かせない。では何に投資をするべきなのか。

 キーマンズネットが2023年11〜12月に実施した読者調査によれば業務の課題の上位4つは「人材育成」と「業務の省力化」「IT人材の不足、高齢化」(以下、IT人材の不足)、「セキュリティの強化」だ(図1)。この傾向は2023年に特有のものではない。2022年11〜12月の読者調査でもこの4つは1〜3位と5位を占めていた。

図1 業務の課題

課題と投資が合っていない

 これらの課題に対して、実際にどのような投資が予定されているのだろうか。

 読者の回答によれば、「セキュリティ対策」「PC/PC管理」「社内IT基盤」「生成AI」だ。セキュリティと業務の省力化については課題と投資が一致しているものの、従業員の能力に関する課題についてはあまり正対していないと言えるだろう。

 従業員に直接投資する対策が必要だ。従業員に対してインセンティブを与え、IT資格の取得を促すことがその一つだろう。

 例えばIPAが実施する「基本情報技術者試験」を取得させることは、IT人材の育成につながり、同じく「情報処理安全確保支援士試験」(通称:セキスペ)であればセキュリティ人材を育てる助けになるだろう。

IT資格を促すべきなのか 副作用はないのか

 ただし、従業員のIT資格取得を促すことには欠点もある。投資判断を下すためには、どのような課題があるのかを理解しておかなければならない。

 IT資格取得については新しい論点はあまりない。そこで、現状の利点と欠点をChatGPTにまとめさせた。

ChatGPTさんにITに関する経営の問題について質問があります。社内のITリテラシーを高め、DX推進につなげたいと考えています。その際に従業員にIT資格を取得させることにはどのような利点と欠点があるでしょうか。それぞれ4つずつ教えてください。


利点:

1. スキル向上: IT資格を取得することで、従業員の技術スキルが向上し、より効率的かつ効果的な業務を実行できるようになります。

2. 信頼性の向上: IT資格を持つ従業員は、その分野における専門家としての信頼性が高まります。顧客や上司からの信頼を得やすくなります。

3. キャリアアップの機会: IT資格を取得することは、従業員のキャリアアップの機会を提供します。スキルや知識の証明として、昇進や昇給のチャンスが増えます。

4. 企業イメージの向上: IT資格を持つ従業員が多い企業は、技術革新やDX推進に積極的であるとのイメージがあります。そのため、企業のイメージ向上につながる可能性があります。

欠点:

1. 費用と時間の負担: IT資格を取得するには、受験料や学習教材の費用がかかります。また、資格取得のために学習や試験に時間を費やす必要があります。

2. 適用性の限界: すべてのIT資格が、企業の業務やDX推進に直接役立つわけではありません。一部の資格は特定の技術やベンダーに特化しており、企業のニーズに合わない場合があります。

3. 離職リスクの増加: 従業員がIT資格を取得した後、他の企業でより良いキャリアチャンスを求めて離職する可能性があります。資格取得後の離職リスクを考慮する必要があります。

4. 一部の従業員に対する公平性の問題: IT資格を取得させることが従業員間の公平性に影響を与える可能性があります。一部の従業員が資格を取得し、他の従業員が取得しない場合、不公平感を生む可能性があります。


 ChatGPTが挙げた利点のうち1〜3はまさに狙っていた効果そのものだ。1と3は「人材育成」と「業務の省力化」、2は「IT人材の不足」と「セキュリティの強化」に当てはまる。

 ただし、IT資格の取得を支援することには欠点もあった。1で指摘されている課題からは、費用対効果が高いものに支援を絞らなければならないことが分かる。業務との関連性が薄い資格を取得させたり、あまりにも高度な資格を全員に受験させたりすることは避けた方がよいだろう。これは2にも当てはまる。

 3は人材育成一般に見られる副作用だ。優秀な人材はより良いキャリアを求めて離職する可能性がある。これはIT資格取得に限った話ではない。4は制度設計の問題だ。IT資格を取得できた従業員に資格手当を支給するといった制度を作る場合、手当の金額の妥当性を検証し続けなければならない。

どのような制度設計が必要なのか

 欠点をカバーするために何ができるのか、ChatGPTに再度まとめさせた。

ChatGPTさんにIT資格についてさらに質問があります。IT資格を従業員に取得させる制度を設計する場合、注意しなければならない点を4つ挙げてください。


IT資格を従業員に取得させる制度を設計する際には、以下の4つの重要な点に注意する必要があります。

1. 目標とニーズの明確化:

制度を設計する前に、従業員や組織の目標やニーズを明確に理解する必要があります。どのようなITスキルや資格が必要であり、それが組織のビジョンや戦略にどのように寄与するかを考慮することが重要です。従業員が取得すべきIT資格は、彼らの役割や職務に関連していることが望ましいでしょう。

2. 適切な資格の選択:

IT業界にはさまざまな資格がありますが、それぞれが異なるスキルや専門知識を提供します。従業員が取得すべき資格を選択する際には、組織のニーズや従業員の役割に最も適したものを選ぶことが重要です。また、資格が業界標準で認知されているかどうかや、市場価値があるかどうかも考慮する必要があります。

3. 学習のサポートとリソースの提供:

IT資格取得を支援するために、適切な学習リソースやトレーニングプログラムを提供することが重要です。従業員が学習に集中し、資格試験に合格するために必要な支援を提供することで、制度の成功率を高めることができます。また、学習への時間や労力を確保するための柔軟なスケジュールやリモート学習のオプションも検討する必要があります。

4. 評価と報酬の仕組み:

IT資格取得制度の成功を評価し、従業員に適切な報酬や認定を提供する仕組みを設計することが重要です。これにより、従業員がモチベーションを保ち、資格取得への意欲を高めることができます。報酬としては昇給、ボーナス、昇進、または特別な資格手当などが考えられますが、組織の文化やポリシーに応じて適切な報酬体系を設計することが重要です。

これらの点に留意することで、効果的なIT資格取得制度を設計し、組織の従業員のスキル向上と成果に貢献することができます。


 ChatGPTの回答は先ほどのものと一部重複する。だが、「学習のサポートとリソースの提供」など、具体的にどのようなIT投資をすべきかがはっきりしたのではないだろうか。

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