多くの業務について生成AIで効率できる余地がないかを考える時代になった。データ分析業務もその対象内にあるはずだ。実際にはどの程度の企業がデータ分析に生成AIを活用しているのだろうか。
データ分析業務の効率化に当たっては幾つかの課題がある。一つは、膨大なデータを取り扱うことだ。何十万行もあるデータに人力でメタデータを付与するのは現実的ではないため、AIが普及する以前から、さまざまな手法で業務の効率化が図られてきた。もう一つは知識の不足だ。たとえデータ分析ツールがあっても、分析結果の読み手に統計やデータサイエンスの知識がなければ、「恐らくこうだろう」という推測に基づいて結論を導き出さざるを得ない。
生成AIによって、これらの課題を解決できる可能性が出てきた。生成AIを使えば、メタデータの生成や、研究者レベルの性能を持つAIモデルにインサイトを導き出させることも可能になる。
では、データ分析業務の効率化に生成AIはどの程度使われているのか。生成AIを活用している人は、どの点を便利だと感じているのだろうか。
今回、キーマンズネットではIT現場の第一線で働く読者を対象に、勤務先におけるソリューションの活用状況や課題に関するアンケートを実施した(実施期間:2025年11月26日〜12月24日、有効回答数:408件)。そこで得られた回答を数回に分けて紹介する。第5回のテーマは「生成AIを活用したデータ分析業務の効率化」だ。
データ分析業務で生成AIを使っている人はどれくらいいるのか。「日常的に利用している」とする回答は11.8%にとどまった。「時々利用している」も含めると全体のおよそ3分の1を占める。最も多かったのは「関心はあるが、まだ利用していない」(43.6%)だった。
従業員数100人以下の企業ではおよそ4分の1、5001人以上の企業では約4割がデータ分析業務に生成AIを活用しており、従業員規模が大きくなるにつれて、わずかに利用状況が向上することが分かった。
実際に使っている人は生成AIをどんな作業に適用するのが効果的だと感じているのか。調査では「分析コードの作成、デバッグ時間の短縮」が27.7%と最も高かった。これはデータベースを操作するためのSQL文や、データ分析用のPythonコードの生成などが含まれる。
次に挙げられたのが「分析アイデアの壁打ち、ブレインストーミング」「分析結果の要約やレポート作成の効率化」で、それぞれ27.0%だった。これらは、データ分析そのものをAIに任せるのではなく、それに付随する作業を補助させる目的の作業といえる。
回答者は少数ではあるが、「自分では気付かなかったインサイトを発見できた」と答えた割合は10.2%だった。一方、「効果は感じられていない」とする回答は7.3%にとどまり、データ分析業務においては、生成AIを利用すれば効果は出やすいことがわかる。
では、具体的にはどんな生成AIサービスを使っているのか。最も多かったのは「Microsoft Excel」で使える生成AI機能(38.7%)だ。ExcelでCopilot機能を利用するには、対象となるMicrosoft 365のプランに加入、もしくはCopilotライセンスを購入する必要がある。有効化すれば画面右端にチャット画面が表示され、データの加工や分析、デザインの変更などの操作ができる。従業員規模が大きい企業ほど利用率は高く、特に5001人以上の企業では51.2%が「利用している」と回答した。
次に多かったのが「ChatGPT」や「Claude」などの汎用(はんよう)AIチャットサービスでのレポート作成や要約(26.3%)だ。xlsxファイルをアップロードしたり「Google スプレッドシート」を参照したりすることで、データ分析と資料作成が可能になる。
データ分析で利用している生成AIの補助機能(ツールや用途)について尋ねたところ、「Google スプレッドシート」と回答した割合は、従業員数501〜5000人規模の企業でわずかに高かった。また、「Google スプレッドシートのAI機能」「データ分析用プログラムの生成」「汎用AIチャットサービスでのSQL文生成」などは、それぞれ約20%だった。
Google スプレッドシートのAI機能は、従業員規模が小さい企業ほど利用率が高い。この傾向は、キーマンズネットが2025年1月に実施した調査でも示されている。
一方で、大規模企業ほど利用率が高い傾向が見られるのは、BIツールやデータ分析プラットフォームに実装されている生成AI機能だ。中には、生成AIとチャットしながらSQL文を生成しデータを分析できる機能が組み込まれているBIツールもある。
では、未来への期待として、人々は生成AIに何をしてほしいと考えているのか。特に多かったのは「専門知識がない人でも、高度な分析を実行できるようになること」(31.6%)だった。データ分析業務を遂行するには特殊な権限や知識が必要になることが多く、一部の専門従業員に業務負担が集中するケースがある。
生成AIを使うことで、適切な権限の下、誰でもSQL文を扱ってデータを分析できるようになれば、負担を分散できる。「事業部門の従業員が自分で情報を取得し、分析業務の負荷が減ること」を望む回答も17.4%あった。
その他「人間が見落としがちな分析の切り口や、予期せぬインサイトが得られること」(14.0%)「分析コードやクエリの作成時間が大幅に短縮され、分析サイクルが速くなること」(11.0%)「分析結果の要約や、非専門家向けのレポート作成が容易になること」(9.8%)などが続く。
近年では業務を自律的に実行できる「AIエージェント」も登場し、徐々にビジネス活用が始まっている。AIエージェントへの期待についても尋ねたところ、こちらも「データ分析スキルがない人でも高度な分析ができる」が30.1%、「人間が見落としがちな新たなインサイトの発見」が24.3%だった。
その他「分析スピードの向上」(17.4%)、「ルーティン的な分析業務からの解放」(16.4%)、「人件費・分析コストの削減」(11.8%)が続いた。
一方でAIエージェントの導入には懸念もあるため、実用に駒を進めるためにはこれらの解決も重要になる。一つは「分析結果の正確性、信頼性の担保」(33.6%)だ。特に大企業はこの点を重視する傾向にあることが分かった。AIには「ハルシネーション」の問題があり、必ずしもタスクを正確に実行できるとは限らない。信頼性がなければ、AIはせいぜいダブルチェックに使えるだけで、データ分析業務を任せるのは難しい。
もう一つが「導入、運用コスト」(22.3%)だ。特に中小企業にとっては影響が大きく、気にする声も多かった。その他「機密データのセキュリティ(外部AIサービスへのデータ送信)」(18.1%)、「エージェントによる分析プロセス(判断根拠)のブラックボックス化」(15.4%)、「分析に関する人間側のスキル低下」(10.5%)などが続いた。
多くの業務について生成AIで効率できる余地がないかを考える時代になった。データ分析業務もその対象内にあるはずだ。ニーズに対してIT人材不足が加速するとされる中、生成AI活用のために社内データを整理する動機も増えている。データドリブンという言葉は流行の時期を過ぎた印象だが、データ人材は引き続き必要とされるだろう。
新規に人材を確保するのもいいが、生成AIで業務を効率化したり、だれでもデータを分析できるようにすることで従業員全員データ人材化のようなことができればこの課題に対抗できるかもしれない。
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