387人の読者アンケートから、IT資格の保有状況と実利の変化が浮き彫りになった。定番の「ITパスポート」を超え、最も役に立つと支持される資格とは何か。また、給与やキャリアへの影響力を解き明かす。
2030年に最大約79万人のIT人材が不足すると予測される中、リスキリングの波は業種を問わず広がっている。キーマンズネットが実施した最新調査「IT資格の取得に関するアンケート調査」(実施期間:2025年12月5〜19日、回答件数:387件)では、読者のIT資格保有率は7割を超え、高水準を維持する結果となった。
注目すべきは、資格保有によって得られるメリットや、市場で評価される資格の勢力図に変化が見られた点だ。前回首位の「ITパスポート」に代わり、最も役に立つと支持される資格は何か。本稿では、最新の保有状況とともに、給与や転職といったキャリア形成へのリアルな影響力を解き明かす。
はじめにIT資格の保有状況を聞いたところ「保有している」は72.4%と、2024年11月の前回調査と同率となり、2021年の62.9%からの4年連続の増加傾向に歯止めがかかった。
業種別では、IT機器やソフトウェア開発、受託開発などの「IT関連業」の取得率が約9割と引き続き高水準を維持した。さらに、前回6割弱であった「流通・サービス業全般」が8.5ポイント増加した。また、「IT関連外製造業」や医療、教育、研究機関などをまとめた「その他業種」に至っても6〜7割近くを維持しており、業種ごとの保有率の差は小さくなった。
保有資格を聞いたところ、「基本情報技術者」(47.9%)、「ITパスポート試験」(34.6%)、「応用情報技術者」(32.9%)などの国家試験が上位に続いた(図1)。特に「基本情報技術者」は約半数が保有しており、ITの基礎体力を証明する登竜門として位置付けられるている。若手エンジニアだけでなく、IT業界を目指す学生や非IT職種からの転職希望者、IT営業や企画職といった幅広い層から支持されていると考えられる。
また、前回調査に比べて、「AWS認定各種」や「Google Cloud認定各種」「Microsoft Azure認定各種」といったクラウド系資格の保有率の合計が16.0%から23.2%に、「情報セキュリティマネジメント」や「情報処理安全確保支援士(登録セキスペ)」などのセキュリティ系資格の合計が35.0%から42.9%に増加した。
加えて、AI活用に取り組む企業も増えていることから「G検定」(11.1%、前年は7.0%)や、新設した設問「生成AIパスポート」(5.0%)といったAI系資格も増加傾向であった。
続いてIT資格を保有することによるメリットを聞いたところ、49.3%が「役に立ったことはない」と回答し、「就職、転職に有利に働いた」(19.6%)、「給与が上がった」(11.8%)、「入りたいプロジェクト、案件に参加できた」(11.4%)が続いた(図2)。
2024年調査は2025年に比べて、「就職、転職に有利に働いた」(13.5%)との回答が6.1ポイント低く、「給与が上がった」(16.0%)との回答が4.6ポイント高く、2025年の回答者は給与増よりも転職でIT資格の効果を発揮しているのが分かる。
「その他」(15.7%)と回答した人のフリーコメントでは、「一時金が出た」や「昇格の必須条件だった」「自信を持って業務に取り組める」といった社内での昇給や業務に役立ったという声が寄せられた。また、「合格者コミュニティーを通じてさまざまな企画、イベントに参加できた」や「顧客と会話する中で知識が役立った」など社外で生かすことができたとの報告もあった。
「役に立ったことはない」(49.3%)に焦点を当てると、5001人以上の大企業帯で57.7%が回答したのに対し、100人以下の中小企業では42.5%と従業員規模が小さくなるほどIT資格が役に立つ割合が高かった。これは、一般的に中小企業はインフラやアプリ、セキュリティといった広範囲を少人数のIT担当者で抱えることが多いことが理由と予測される。
関連して「IT関連の資格を保有していて役に立った」と回答した人に対し、最も業務で役に立った資格を聞いたところ、「応用情報技術者」(9.9%)や「ネットワークスペシャリスト」(9.9%)、「基本情報技術者」(8.5%)、「情報セキュリティマネジメント」(7.7%)と続いた。前回調査で1位だった「ITパスポート試験」(3.5%)は下位に沈み、より難易度の高い国家試験が選択される傾向だ。
上位4資格を見ると、ITエンジニアの基盤となる「基本情報技術者」や「応用情報技術者」への支持は根強い。一方で、より現場の課題に即した資格も重視されている。クラウド全盛に伴う接続トラブルや遅延への対応知識が問われる「ネットワークスペシャリスト」や、サイバー攻撃の激化と個人情報保護法の厳格化を背景とした「情報セキュリティマネジメント」だ。共通しているのは、今の業務に活用できるという実利的な視点だ。
業種別の傾向では、顧客提案や受託業務で重要度の高いIT関連業で「AWS認定各種」や「Google Cloud認定各種」「Microsoft Azure認定各種」といったクラウド系資格や「ネットワークスペシャリスト」「システムアーキテクト試験」などの難関資格の割合が高かった。また、医療、教育、研究機関などの「その他業種」では「情報セキュリティマネジメント」や「ITコーディネータ」が役立ったとの回答が多い。
機密性の高い情報を扱うことから「情報セキュリティマネジメント」が、IT活用が遅れがちな現場と経営との橋渡し役として「ITコーディネータ」が重宝されているのかもしれない。
実務に生かせるという点は資格取得の動機になりやすい。IT関連資格を選ぶ際に重視するポイントを聞いたところ、「実務に生かせられるかどうか」(70.4%)が最多で「汎用性の高い資格かどうか」(38.9%)や「取得のしやすさ、難易度」(33.9%)を大きく上回った(図3)。
当然、一発合格が難しく複数回チャレンジするケースもある。「応用情報技術者」(13.9%)や「ネットワークスペシャリスト」(11.8%)、「情報処理安全確保支援士(登録セキスペ)」(11.1%)といった、出題範囲が広いものや専門領域での上級者向け試験では苦労することが多いようだ。
複数回チャレンジしている資格ほど「実務に生かせられるかどうか」の割合も高い傾向にあり、業務推進上の必要に駆られて学び始めるケースも多いと予測できる。
以上、前編では人気のあるIT資格や資格保有メリットや活用シーン、取得に至った動機などを紹介した。後編では、今後注目が集まるIT資格や、資格保有者に聞く勉強方法や会社による支援制度の有無について取り上げる。
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