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基本情報はもう古い? 今後取得したいIT資格【読者調査】IT資格の取得状況(2024年)/後編

4年連続で増加しているIT資格の取得状況。調査を基に、今後取得したい人気のIT資格や、資格勉強に費やした時間や勉強方法、企業による支援制度の有無について紹介する。

» 2024年12月12日 07時00分 公開
[キーマンズネット]

 本調査の前編でIT資格の取得状況を聞いたところ、全体の72.4%が「保有している」と回答した。2021年は62.9%、2022年は65.9%、2023年は70.4%と4年連続で増加傾向にあった。

 後編では引き続き、「IT資格の取得に関するアンケート調査」(期間:2024年11月8〜22日、回答件数:275)を基に、今後取得したい人気のIT資格や、資格勉強に費やした時間や勉強方法、企業による支援制度の有無について紹介する。

過半数が取得したいと回答 人気上昇中のIT資格は?

 はじめに、今後取得したいまたは取得予定のIT資格を聞いたところ、全体では「ある」が53.1%となり、部門別では情報システム部門で55.2%、一般部門で50.4%と、IT部門での取得予定が多い傾向だ。

 取得予定のIT資格は「AWS認定各種」(19.2%)、「情報処理安全確保支援士(登録セキスぺ)」(18.5%)、「Microsoft Azure認定各種」(15.8%)、「ITパスポート試験」(15.8%)が上位に続き、クラウドやセキュリティ分野での取得ニーズが高まっている(図1)。

図1 今後取得したいまたは取得予定のIT資格

 関連して「今後人気が高まるであろう資格」をフリーコメントで聞いたところ「システムがインターネットとよりシームレスとなることで、セキュリティ対策要員はさらに必要となる。その実装や運用体制に対する管理手法としての監査技術も求められる」や「IT設備のセキュリティ不備による個人情報漏えいが多いため」「情報セキュリティに関する事案が多く発生していて問題になっているから」などの理由から、「情報処理安全確保支援士(登録セキスペ)」や「CISSP」「個人情報保護士」といったセキュリティ資格を挙げる声が多かった。

 また、一般部門を中心にAI関連資格への関心も高く「AIの実用化が迫っているため」や「ユーザー部門の業務改善アクションにつながりやすい」「AIの発達によってローコードやノーコードで(システムを)開発できるようになったとはいえ、どう動くかを疑似言語でもいいので理解できるため」など、実務に生かしたいと考える人も多い。中には「ITと経営の両方が分かる人材が今後必要になる」と、ITコーディネーターを目指す強者もいた。

 今後IT資格を取得する目的としては「自己研鑚のため」(76.0%)が最多で、次点に「実務で必要となるため」(24.7%)や「対外的なアピールのため」(20.5%)、「就職、転職を考えているため」(18.5%)が続く(図2)。

図2 今後IT資格を取得する目的

 従業員規模別に見ると、5001人を超える大企業帯では「自己研鑚のため」が相対的に低く、代わりに「会社で取得を推奨もしくは義務化されているため」や「実務で必要となるため」が多かった。一方、100人以下の中小企業では「自己研鑚のため」や「対外的なアピールのため」に票が集まり、小規模企業の従業員のほうがより主体的に資格取得に臨む傾向がありそうだ。

一般部門を中心に資格勉強は長時間化が進む?

 次にIT資格取得までの勉強方法を見ていきたい。まず受験までの勉強時間は「1カ月〜3カ月」(38.0%)、「4カ月〜6カ月」(34.5%)、「7〜9カ月」「12カ月以上」(7.5%)と続いた(図3)。

図3 勉強時間

 2023年に実施した前回調査と比較したところ、「3カ月以下」が51.1%から44.5%と6.6ポイント減少する代わりに、「7カ月以上」が13.9%から21.0%と7.1ポイント増加しており、全体的に勉強時間が伸びている。なお内訳を見ると、情報システム部門では「3カ月以下」が5.3ポイント減少しているのに対し、一般部門では13.0ポイントも減少してることから、一般部門を中心に資格勉強の「長時間化」が進んでいる様子だ。

 勉強方法は「参考書を購入し独学で勉強した」(85.0%)が大多数だが、「通信教育やe-ラーニングを受講した」(20.5%)や「社内外の勉強会や学習サークルで学んだ」(10.0%)、「専門スクールに通った」(2.0%)など、社外に学習機会を設けるケースも多い(図4)。

図4 勉強方法

 2024年10月には教育訓練給付金制度が拡充され、行政も積極的に能力開発やキャリア形成支援を後押ししていることもあり、学習環境の国内整備はより充実してきている。

「資格取得支援制度」47.6%が設置 内容には賛否両論も

 受験料負担や書籍購入費を企業が負担することで従業員の資格取得を後押しする「支援制度」を設置する企業は減少傾向だ。支援制度が「ある」のは47.6%で、2021年55.5%、2022年50.8%、2023年49.3%と4年連続で減少している。

 従業員規模別では、中堅・中小企業で「制度がない」傾向が高く、前に挙げた行政による支援制度拡充もあり、企業による学習環境整備の優先順位を下げるケースもあるのかもしれない。また業種別では、IT機器やソフトウェア開発、受託開発などの「IT関連業」で72.7%が、商社やメディア、不動産などの「流通・サービス業全般」では52.3%と、過半数が「制度がある」とする一方、電気や自動車、建設などの「製造業」では36.3%、教育、医療、官公庁といった「その他業種」では17.1%にとどまるなど、本業への関連度合いによって温度感が大きく異なる(図5)。

図5 IT資格の取得支援制度の有無

 支援制度による補填対象は「試験に合格した場合、報奨金が支給される」(51.9%)や「試験に合格した場合、報奨金が支給される」(48.1%)のように合格時に補填されるケースが多く、「資格習得に必要なセミナー、ウェビナー参加費用を会社が負担」(21.4%)や「合否にかかわらず、会社が受験料を全額負担」(18.3%)といった勉強や学習の機会自体を支援するケースは少ない(図6)。

図6 資格支援制度の補填対象や範囲

 こうした設計に対し「半額支給なので全額にして欲しい」や「試験前対策を重視してほしい」「不合格でも補填してほしい」との要望も聞かれた。また「会社としてその資格が有用なものとして認定しているのであれば、受験料負担といった一時金補填だけではなく、能力手当的な位置付けとする資格があってもいいと思う」や「業務に関連する資格であれば毎月の手当としてほしい」のように、企業が業務遂行のために求める能力と設定するなら、一時金ではなく能力手当として評価に組み込んでほしいとの意見も多くみられた。

 以上、企業におけるDX推進はもちろん、クラウドやセキュリティ、AIなどの技術進歩もあり、さまざまな分野でIT知識や技能が求められる昨今、IT資格取得のための学習はより重要度が増している。今後も定期的にトレンドを追いかけ、取り上げていきたい。

 なお、回答者の内訳は「情報システム部門」(40.5%)、「製造・生産部門」(12.0%)、「総務・人事部門」(8%)、「営業・販売部門」(6.9%)、「経営者・経営部門」(5.1%)、「経営企画部門」(4.4%)、「営業企画・販売促進部門」(3.3%)、「マーケティング部門」(2.2%)、「資材・購買部門」(1.5%)、「財務・会計・経理部門」(1.5%)、「広報・IR部門」(0.4%)、「その他」(14.5%)であった。

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