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“VMwareショック”の影響は想像以上に根深い――IT担当408人調査で見えた実態7つのITトピックス 2026

Broadcomによる買収に伴うVMware製品群のライセンス変更は、ITインフラの前提さえも揺さぶりつつある。他の技術・製品への移行に加え、仮想化技術の利用そのものを見直す動きも出てきた。調査を基に実態を整理する。

» 2026年01月27日 07時00分 公開
[鳥越武史キーマンズネット]

 今回、キーマンズネットではIT現場の第一線で働く読者を対象に、勤務先におけるソリューションの活用状況や課題に関するアンケートを実施した(実施期間:2025年11月26日〜12月24日、有効回答数:408件)。そこで得られた回答を数回に分けて紹介する。第4回のテーマは「VMwareのサーバ仮想化製品群」のライセンス変更に伴う、企業のITインフラ投資の変化だ。調査結果を基に、回答者の勤務先における、VMware製品群の利用状況や判断の実態を明らかにする。

予備軍を含めて“脱VMware”が現実的な選択肢に

 VMware製品群から他のITインフラ技術・製品への移行状況を聞いたところ、移行を済ませた、または移行を決めたとの回答は、合わせて21.3%だった。移行を検討しているとの回答を含めると41.4%に上った(図1)。参考として「VMware製品群を利用したことがない」との回答者を除くと、移行済み、もしくは移行を決めたとの回答は合わせて36.7%となり、移行検討中を含めると71.3%に達した。「VMware製品群にとどまらない」との選択肢を選択・検討する企業が、既にかなりの規模に及ぶことが分かる。

図1 図1 VMware製品群から他の技術・製品への移行状況(n=408)《クリックで拡大》

 ITインフラの中核要素である仮想化製品の刷新は、そこで稼働するアプリケーションや運用管理ツールなどにまで影響が及ぶことから、慎重な判断が必要になる。それでも移行の動きが広がっていることは、Broadcomによる買収後に生じたVMware製品群のライセンス変更が、企業の判断に無視できない影響を与えたことを示す。

規模の大きな企業ほど“脱VMware”を急ぐ?

 勤務先が従業員規模5001人以上の企業だと答えた回答者に絞ると、他のITインフラ技術・製品への移行を済ませた(24.5%)との回答が最も多かった。参考値としてVMware製品群を利用したことがないとの回答を除くと、移行済み、もしくは移行を決めたとの回答は50.0%に達し、移行検討中を含めると73.1%となった。全体と比べると移行に向けた取り組みが、より進んでいる状況がうかがえる。

 企業規模が大きくなるほど、ITインフラに関わるソフトウェアライセンスの契約規模は拡大し、ライセンス変更の影響も大きくなる。影響はコスト増加にとどまらず、運用体制や組織全体にまで及ぶことも無視できない。人的リソースや移行体制を確保しやすい大企業ほど、不確実性を抱えたまま様子見を続けるよりも、早期に移行へとかじを切り、中長期的なリスクの可視化と管理を図ろうとする傾向が見える。

移行先は「クラウド」が最多

 VMware製品群からの移行を完了、もしくは進めているとの回答者に対して、移行先として選んだITインフラ技術・製品を聞いたところ、Microsoftの「Hyper-V」といった他のオンプレミスのサーバ仮想化製品を選んだのは31.2%だった(図2)。それよりも多い41.6%が、VMware製品群とは別のサーバ仮想化技術をベースとするクラウドサービスを選択した。

図2 図2 VMware製品群からの移行先として選んだ技術・製品(n=77)《クリックで拡大》

 この結果は、VMware製品からの移行を単なる技術・製品の置き換えにとどめず、運用管理の在り方や調達モデルを見直す機会だと捉えた企業が一定数あることを示唆する。運用負荷や将来的な拡張性を含めて検討した結果、ハードウェアの調達や運用を自社で抱え続けるのではなく、クラウドベンダーに委ねる判断につながっている。

あえて「仮想から物理に戻る」選択も

 物理サーバ(仮想化製品からの回帰)を移行先に選んだのは3.9%にとどまり、これを選んだのは従業員規模5001人以上の企業に所属する回答者のみだった。企業規模が大きいほど、一般的にはシステムの規模も大きくなり、仮想化製品のライセンスコストも高額になる傾向がある。こうした企業の間では、VMware製品群のライセンス変更というタイミングで、仮想化技術の利用そのものを見直す動きが一部にあったと考えられる。

 仮想化技術を導入していても、定常的なバッチ処理を担うシステムなど、構成や処理量の変動があまりなく、必要なハードウェアリソースを予測しやすいシステムは存在する。こうしたシステムでは、コンピューティングリソースの動的な分配といった仮想化の利点を十分に生かしにくい。ライセンス変更を契機に、仮想化技術の必要性そのものを再評価し、物理サーバへの回帰を選んだ企業があったとしてもおかしくはない。

大企業はHCIを選ばず、コンテナ技術を選ぶ?

 移行先としてハイパーコンバージドインフラ(HCI)を選んだのは15.6%で、従業員規模が大きい企業ほどHCIを選ばない傾向が見られた。HCIはCPUとメモリ、ストレージをまとめたノード単位での増設が基本となり、構成や運用を標準化しやすい。一方で規模の大きな企業では部門ごとに要件が異なるといった理由から、こうした標準化が制約として意識されることがある。物理サーバ回帰が一定数あったことからも、規模の大きな企業は運用の簡素化よりも、構成の自由度を重視する傾向がうかがえる。

 コンテナ技術を移行先に選んだのは6.5%であり、従業員規模501人以上の企業に所属する回答者に限られた。仮想化製品で顕在化したライセンス変更リスクは、他の仮想化製品でも起こり得る。その点で、実行環境間のポータビリティを確保しやすいコンテナ技術を選択肢として検討する動きは理解しやすい。ただしコンテナ技術への移行は、一般的にはアプリケーション改修や運用体制の見直しが前提となるため、十分な人的リソースや予算を確保できる企業でなければ現実的な選択になりにくい。

移行理由はコストだけではない “仮想化技術の限界”にも目を

 VMware製品群から他の技術・製品への移行を済ませた、または移行中、検討中との回答者に対して、移行やその検討理由を聞いたところ、最多だったのはライセンス体系変更に伴うコスト増加の回避(47.9%)だった(図3)。必要とする製品機能が変わらない中で、コストの見通しが立ちにくくなり、投資対効果を説明しにくくなったことが、移行検討の直接的な引き金になっている。

図3 図3 VMware製品群から他の技術・製品への検討理由(複数回答可、n=169)《クリックで拡大》

 2番目に多かったのは、既存システムのリプレース時期が近づいていること(23.7%)だった。リプレース時期を迎えたからといって、ITインフラの中核要素である仮想化技術を置き換える判断に直結するとは限らない。コスト変動への不安など、明確な課題意識があって初めて、リプレースが切り替えの機会として意味を持ったと考えられる。

 移行理由はコストだけではない。17.2%は製品の機能・性能面の課題解消、15.4%はITインフラのモダナイゼーションを挙げた。全体では14.2%にとどまるアプリケーションの開発・デプロイの迅速化という理由は、従業員規模5001人以上の企業に所属する回答者に限ると21.1%に上昇し、コストに次ぐ2番目となった。

 VMware製品群は仮想化市場をけん引してきた存在であり、他の仮想化製品と比べて機能や性能が著しく劣るとは考えにくい。それでもこれらの理由が挙がる背景には、仮想マシンを前提としたITインフラそのものが、企業が開発やデプロイに求めるスピードと合わなくなりつつある現状があると考えられる。

 仮想マシンではアプリケーションの変更であっても、OSを含めた調整や再起動が必要になることがあり、変更を頻繁に繰り返す運用には向きにくい。VMware製品群を別の仮想化製品に置き換えるだけでは不十分だと判断した企業にとっては、仮想マシンに依存しない技術が選択肢となる。アプリケーション単位での起動、更新、廃棄を前提とするコンテナ技術は、その有力な候補だ。

“活VMware”決断の理由 「満足」と「スキル不足」が同居

 VMware製品群を継続利用するとの回答者に理由を聞くと、製品の機能・性能に満足している(38.9%)との回答が最多となった(図4)。重要システムを支えてきた実績や信頼性に裏打ちされたVMware製品群への支持は、依然として根強い。

図4 図4 VMware製品群の継続利用を決めた理由(複数選択可、n=36)《クリックで拡大》

 同率のトップとして、他の技術・製品に関するノウハウや人的リソースがない(38.9%)との回答が挙がり、移行先となる代替製品の検証ができていない(33.3%)との回答も3割を超えた点は見逃せない。継続利用という判断の背景には、VMware製品群の長期的な利用を前提にしてきた企業の間で、ITインフラに関するスキルや体制が固定化している事情があると考えられる。

「使い続ける」=「現状維持」ではない 保守サポートは見直しの対象に

 VMware製品群を引き続き利用するとの回答者に、保守サポート体制の見直し状況を聞いたところ、公式保守サポートの継続が66.7%と多数を占めた(図5)。VMware製品群は基幹系などの重要システムで広く使われている。可用性やサポート品質に対するリスクを最小化するために、公式サポートを維持するという判断は自然だ。

図5 図5 VMware製品群の保守サポート体制の検討状況(複数選択可、n=36)《クリックで拡大》

 保守サポートの契約内容を見直しているとの回答は19.4%に上り、特に従業員規模501人以上の企業に所属する回答者の一定数が挙げた。VMware製品群のライセンス体系の変更を機に、必要なサポート範囲や水準を精査し、コストとリスクのバランスを見直す動きが表れている。少数ながら第三者保守への一時的な切り替え(5.6%)との回答もあった。第三者保守は単なるコスト削減策というよりも、移行を前提に検討期間を確保するための現実的な選択肢だと捉えられる。


 VMware製品群のライセンス変更は、本来であれば切り替えが難しいはずのITインフラの中核要素であっても、ベンダー戦略の変更次第で移行の検討対象になり得ることを明確に示した。VMware製品群や仮想化技術を“自明の前提”とせず、それらの必要性を含めて問い直す企業の動きが、今回の調査結果から読み取れる。ただし機能や信頼性、実績を評価し、VMware製品群を継続利用する企業もある。スキルやノウハウ、運用体制の制約に加えて、ITインフラの中核要素としての完成度を重視する姿勢が、継続利用という選択を支えていると考えられる。

 他の技術・製品への移行を検討する企業にとって重要なのは、コスト増加への対処なのか、仮想化技術そのものが抱える制約の見直しなのかといった移行理由を明確にした上で、自社にとって適切な判断を下すことだ。特に一定の人的リソースや投資余力を持つ企業では、将来の選択肢を広げる観点から、コンテナ技術をはじめとする実行環境のポータビリティを確保しやすい技術に関する調査や投資が、今後活発化する可能性がある。

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