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固定電話、クラウド電話の混在に辟易……企業の電話事情クラウド電話の利用状況(2023年)後編

テレワーク対応が一巡し、オフィス回帰の潮流がある中、企業の電話環境が複雑化しているようだ。既存PBXの老朽化問題に悩む声も聞こえてくる。勤務先の電話環境の課題を聞いた。

» 2023年10月26日 08時00分 公開
[キーマンズネット]

 テレワーク推進やDX(デジタルトランスフォーメーション)の普及を背景に、電話環境の刷新がじわりと進んでいる。前編では、キーマンズネットで実施した「クラウド電話の利用に関するアンケート(2023年)」調査(実施期間:2023年9月21日〜10月13日、回答件数:252件)を基に、クラウド電話の認知、理解度と、導入の有無と導入時期、クラウド電話に対する不満などを聞いた。

 後編となる本稿では、クラウド電話の利用を検討している回答者に対して導入時期や導入の目的、魅力を感じる機能などを調査した結果を紹介する。

クラウド電話の魅力に感じる機能に変化

 はじめにクラウド電話について、「現在利用はしていないが、利用を検討している」(15.9%)の方に、導入時期を聞いたところ「2023年〜2024年頃」(42.5%)が最多で、「未定」(37.5%)、「2025年〜2026年」(12.5%)と続いた(図1)。今後3年間で55.0%と過半数が利用を開始する予定と答えていることになる。

図1 導入予定時期(クラウド電話の利用を検討しているとした人)

 利用検討企業の目的は「電話の取り次ぎコストを軽減するため」(52.5%)、「PBXの老朽化・サポート終了による切り替え対応のため」(50.0%)、「テレワーク対応のため」(47.5%)が上位に上がった(図2)。オフィス回帰の波がある中で、コロナ禍によるテレワーク対応ニーズだけではなく、業務効率化やPBX老朽化といった新たな課題解消ニーズが高まっているようだ。

図2 導入目的(クラウド電話の利用を検討しているとした人)

 この傾向は、利用検討企業が選ぶ「魅力に感じる機能」にも現れている。2022年10月に実施した前回調査と比較すると「メールやチャットとの連携」(52.5%)や「IVR(自動応答・対応者への引継ぎ)機能」(30.0%)、「管理ポータル機能」(22.5%)といった、他システムとの連携などによって業務効率化が期待できる項目が増加した(図3)。コロナ禍をきっかけに大きな注目を集めたクラウド電話だが、じわりと普及が進むにつれて”コスト削減”や”業務効率化”などのメリットが市場に認知されてきたのではないかと考察できる。

図3 魅力に感じるクラウド電話の機能(クラウド電話の利用を検討しているとした人)

クラウド電話”未導入”の理由、3位「理解不足」2位「魅力を感じない」……1位は?

 クラウド電話を「現在利用しておらず、利用予定もない」とした回答者は全体の44.8%だった。その理由を聞いたところ、「既存の電話環境で特に問題がないため」(40.7%)、「クラウド電話サービスに魅力を感じないため」(31.9%)、「クラウド電話サービスをあまり理解していないため」(22.1%)が上位となった(図4)。

図4 クラウド電話を導入する予定もないとした人が回答した理由

 2022年の前回調査では「既存の電話環境で特に問題がないため」や「クラウド電話サービスをあまり理解していないため」に票が集まった一方、今回は「クラウド電話サービスに魅力を感じないため」が急増した。クラウド電話の認知度は89.3%と年々増加しているので、サービスの特性を理解した上で利用しないと判断する企業も増したと見られる。

 なお、前編で紹介したように、2022年の調査と比較して、1001〜5000人の企業で利用率が急増する一方で、101〜1000人までの中堅企業帯で利用率が減少したことも特筆すべきトピックだ。中堅・中小企業では、大企業と比較してコストや導入工数が問題になりやすい。オフィス回帰の潮流がある中で、既存の電話環境を使い続けるという選択をする企業が増えることもうなずける。

自社の電話環境に見る4つの課題

 自社の電話環境についての課題をフリーコメントで聞いたところ、大きく分けて4つの問題点が見えてきた。1つ目は「PBX含む電話施設の老朽化」だ。

 「電話交換機の老朽化で更新費用が高額」や「PBXの老朽化に伴い、自部門でもクラウドPBXを検討したが品質が悪いために断念」といったコメントに見られるように、耐用年数やサポート期間終了によって電話環境の刷新が必要だが、製品選定に悩んでいる回答者も多い。中には「メインのオンプレPBXが15年以上稼働しており、この機器をクラウドPBXに移設すべく対応を急いでいる。特に2024年1月にNTTの『INS64』が終了となるので対応を急ぎ行なっている」と、NTT電話網のIP化に備え急ぎ対応を進めているとの声もあった。

 2つ目は取次ぎ業務の非効率さを指摘する声で「不在者への電話取次の手間」や「電話番をするために出社しなければならない部門が存在している。全社リモートに移行できない」といった声が上がった。在宅勤務などの不在者宛ての電話の取次ぎが多く問題になる一方で、従業員に社用形態を配布すると費用対効果が合わないと、泣く泣く「電話番出社」を続けているケースもあるようだ。

 3つ目は、固定電話や携帯電話、クラウド電話などが混在した電話環境が誘発する問題だ。「コストの問題で内線を増やせないが、内線ではレスポンスが悪いとして社内勤務の人にまでスマホを持たせているので費用対効果が悪化している」「一部の従業員にクラウド電話、会社の代表番号は従来のPBXと別れているため、その間の外線取次ができない」といったコメントが寄せられた。

 全社横断で電話環境を見直すことが理想だが、それを実現する部門や責任者が不在というのが4つ目の課題だ。「電話の管理部門とIT管理部門が分かれているため、考え方や方針を一本化できていない」「全体最適を前提に、分析して考える機会がなく人材もいない。改善戦略が策定できず非効率な従前追従が続いている」といった課題が上がった。

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