「ChatGPT」などの生成AIから役に立つ応答を引き出すには、どのようなプロンプトを与えるのが最善なのだろうか。Microsoftが勧める25のプロンプト術を紹介する。
「ChatGPT」などの生成AI(人工知能)はユーザーの問いかけ(プロンプト)に対して、応答する。プロンプトが適切でないと、望みの結果は得られない。
連載では6回にわたってChatGPTの開発元が公開した6つの戦略を紹介してきた。今回はMicrosoftが2023年10月23日に公開した生成AIを使いこなす25のプロンプト術を紹介する(連載記事の一覧はこちら)。
解決したい問題やニーズをまずプロンプトとして明確に示す。「最新アプリケーション(アプリ)向けのマーケティングキャンペーンについて斬新なアイデアが欲しい」といった具合だ。
モデルの理解度を確認するために単純なプロンプトから始めて、より複雑なプロンプトへと拡張していく。
特定の回答をあらかじめ指定せず、回答が多様で広範な情報を含む可能性がある質問をする。
生成モデルは、制約や規則にとらわれずに自由に多様な情報やアイデアを生成できる条件を与えた場合にうまく機能する。「マーケティングにソーシャルメディアを使うべきか?」と聞く代わりに、「ソーシャルメディアプラットフォーム全体で注目を集める革新的な方法は何か?」と聞いてみよう。使う予定の特定のプラットフォーム(X、LinkedInなど)を指定することもできる。
最初のプロンプトから得たフィードバックに基づいて、質問を改良していく。「一般的なコンテンツマーケティング戦略についてのアイデアを教えてください」と質問した後、「留守番をしているペットの満足度をモニターする製品のコンテンツマーケティング戦略を進めるにはどうすればよいか」という追加の質問をする。
より多くの文脈を提供すればするほど、生成AIはユーザーのユニークな状況に合わせた反応を返してくる。「私は睡眠パターンを追跡するアプリをリリースしたばかりだ。従業員の健康を気に掛けている企業にアピールする低コストのマーケティング戦略を探している」といった具合だ。
予算やスケジュール、利用可能なリソースなどの制約条件があれば、前もってプロンプトに記す。「5000ドルの予算で、2週間以内に実行できる新製品のマーケティング戦略は何か」というプロンプトを使えば、「新製品のマーケティング戦略は何か」というプロンプトよりも望ましい回答を得やすい。
大きな質問を小さな質問に分解することで、実行可能な洞察が得やすくなる。「どうすればビジネスを改善できるか」は質問として大き過ぎる。「どうすればオンラインセールスを増やせるか」と質問しよう。さらに次のプロンプトでは「お手玉の宣伝に最適なソーシャルメディアプラットフォームは」と書く。
クリエイティブなブレーンストーミングであっても、分析的なタスクであっても生成AIから応答を引き出すことができる。だが、最良の結果を得るためには「分割して統治」しよう。マーケティング戦略について生成AIとブレーントーミングした後に、「インフルエンサーマーケティングの長所と短所は何か」と書こう。
SWOT(強み、弱み、機会、脅威)分析は、ビジネスを望ましい方向に導く際に役立つ。自らのビジネスについて、生成AIに具体的にSWOT分析を依頼するとよい。すぐに実行可能な項目から早急に着手できるようにしよう。
概念を理解する際、例があった方がたやすい。生成AIに例を教えてもらい、それをモデルに使う。こうすれば具体的なケースで何が有効な手法で、何が有効でないかを発見できるだろう。「成功したインフルエンサーマーケティングキャンペーンの事例を紹介してもらえますか」と質問すればよい。
回答の形式を指定しよう。箇条書きや段落分け、リストなどどのような形式で回答してほしいのかをプロンプトで伝えよう。
業界特有の用語や略語がある場合は、プロンプトを使って定義するとよい。またはその用語が使われている文脈を生成AIに伝えよう。
生成AIの回答に満足がいかない場合、質問を言い直す。生成AIと対話しているうちに、創造的なアイデアが生まれるだけでなく、思考の方向が思わぬ方向に向かうこともある。
一段落で要約したいのか、何ページにもわたる学術的な深堀りがしたいのか。プロンプトに明記しよう。
不要なものが分かっているなら、プロンプトに明記する。「オンライン広告を除くマーケティング戦略を提供する」といった感じだ。
トピックをより包括的でニュアンス豊かに理解するために、1つの質問に対して複数の回答や視点を求める。
ほとんどの生成AIはプロンプトに応じて、リアルタイムでWebをブラウズすることはない。だが、最後のトレーニングに使われたデータの時点で既知の情報源に基づいて回答するように指示できる。こうすることで回答の信頼性を高めることができる。
偏りのない回答を出力するよう、あるいは複数の視点を考慮するよう、プロンプトで明示的に指示する。
「生成AIの現在のトレンドは」といった質問が有効だ。特定の業界特有のコンプライアンス要件を質問してもよい。「ヘルスケア関連ではどのようなコンプライアンス要件に留意すべきか」などだ。
可能な限り数値化した情報を与える。数字やパーセンテージ、距離、速度などが必要ならプロンプトに明記しよう。
生成AIの回答を特定のものに誘導するようなプロンプトを与えないようにする。
学術的な回答が欲しいのか、既成概念にとらわれない楽しい内容が必要なのかどうかをプロンプトで伝える。「グリーンエネルギーキャンペーンのための、クリエイティブで楽しいキャッチフレーズを考えてください」といった具合だ。
なぜその回答が必要なのか、あるいはその回答がどのように使われるのかをプロンプトに書く。「来月、新しいCookieテストアプリを発表する。競合A社に対してどのように位置付けるべきか」といったプロンプトだ。
生成AIが回答した重要な情報を、信頼できる外部の情報源と相互参照しよう。特に、その回答に基づく決定がビジネスに重大な影響を与える場合は相互参照が欠かせない。
生成AIを定期的に使用している場合は、どのようなプロンプトが最も良い結果をもたらしたのかを記録して、プロンプトを改善していく。
Microsoftは2023年3月9日に「Azure OpenAI Service」でChatGPTのプレビュー版を利用可能にした。その後、「GPT-3.5-Turbo」や「GPT-4」のような大規模言語モデルを利用できるようにしており、その後、ChatGPTを使って最新の情報を調べられるように改善した。
GPT-4のような大規模言語モデルを最大限に活用するには、効果的な結果をもたらすプロンプトを作成することが不可欠だ。正確で適切なコンテンツを生成させるためには、単語や表現、記号、構造の最適な組み合わせを選択しなければならない。
実生活での対人コミュニケーションと同じように、どのように尋ねるかによって、受け取る情報の内容が乏しくなったり、望みの回答が得られたりする。
同じようなプロンプトでも、基礎となるモデルやそのトレーニングデータ、あるいはリクエストの言い回しの微妙な違いによって、さまざまな回答が得られる。
生成AIに与えるプロンプトによってビジネス戦略を強化できたり、生活を豊かにしたりできる。ビジネスでは幅広い意思決定やブレーンストーミングのプロセスで、生成AIをツールとして使いたいという要望が強い。生成AIの応答と、ユーザーのビジネスや市場に関する専門知識を組み合わせることで、最良の結果が得られるだろう。
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