メディア

コロナ禍の紙業務が限界に アナログ申請業務から脱した三菱オートリースのデジタル化

紙を中心としたアナログ申請業務に課題を感じていた三菱オートリースは、ノーコード/ローコード開発ツールを使って月平均で約6000件発生する申請手続きをデジタル化した。どのような工夫があったのか。

» 2023年11月27日 08時00分 公開
[元廣妙子キーマンズネット]

 自動車リースなどのモビリティ事業を展開する三菱オートリースは、コロナ禍を契機に2020年3月からテレワークを開始し、紙業務をデジタル化する必要性を痛感していた。審査・債権管理部のデスクには大量の書類が山積みで、営業部からの申請依頼メールや個人宛てのメールなどが飛び交い、業務プロセスが複雑化していたという。

 こうした状況への打開策として、同社はノーコード/ローコード開発ツールを導入し、月平均で約6000件発生する申請手続きをデジタル化した。それらの開発を担ったのは、非IT職の現場従業員だという。その背景には同社ならではの工夫があった。

 同社の森田武志氏(デジタル戦略部長)と岡村隆輝氏(事務統括部 担当部長)、井口健司氏(審査・債権管理部 審査一課 エキスパート)が、その裏側を語った。

デスクに大量の書類が山積み……アナログ申請業務をどう変えた?

 コロナ禍をきっかけに2020年3月からテレワークを開始した三菱オートリースは、紙を中心とした業務に限界を感じ、2021年5月にワークフローとWebデータベース機能を備えたノーコード/ローコード開発ツール「SmartDB」を導入した。

 同社はSmartDBで汎用(はんよう)型のワークフローを開発した後に、利用頻度や利用者からの声を基にして業務アプリケーションの開発を進めた。

 「デジタル化を進める過程で、従業員から『自分の業務をデジタル化したい』といった声が上がるようになりました。そこで、2022年1月に17の各部署から約40人の開発担当者を選出し、外部ITベンダーの協力を得ながら3カ月かけて現場開発者として育成しました。2022年4月からは、各部署で現場開発者が業務のデジタル化を進めています」(森田氏)

 開発未経験者だった井口氏も現場開発者の一人として業務のデジタル化を担当した。井口氏が開発したのは、14種類の申請書類を使う審査申請手続きを一元管理するバインダだ。SmartDBの場合、リレーションデータベースのテーブルに相当するものをバインダと呼ぶ。三菱オートリースでは、月平均で約6000件の申請手続きが行われており、そのうちの4割の手続きに井口氏が開発したバインダが利用されているという。井口氏は、現場におけるデジタル化を次のように振り返る。

 「私が所属する審査・債権管理部には、2021年度に既にSmartDBが導入されていました。当初は慣れ親しんだ仕事の手順を変えることに対して部内から不安や葛藤の声が聞かれましたが、従来のように業務をむやみにデジタル化するのではなく、現場の声を尊重しながら約2年かけてじっくりと進めることで、部内のデジタル化を完了することができました」(井口氏)

 デジタル化以前の審査・債権管理部は、デスクに大量の書類が山積みで、営業部からの申請依頼メールや個人宛てのメールに加え、テレワークへの対応もできていない状況だった。今回のプロジェクトで申請から承認、文書管理までがデジタル化され、場所に関係なく決裁ができるようになり、申請依頼状況が一目で把握できるようになった。また、承認後の処理をフロー化したことで処理漏れもなくなった。

 加えて、業務の属人化も解消された。これまでは14種類の書類の申請方法や回付ルート、決裁者を理解している従業員しか処理ができなかったが、デジタル化によって誰でも処理が可能になった。

現場開発者が自然に育つ仕組み

 三菱オートリースでは、社内のデジタル化が進むにつれて現場開発者の数が増え、2023年10月時点で50人の現場開発者が自部署のデジタル化に携わっている。井口氏は、社内で現場開発者が自然に育つようになった背景を次のように分析する。

 「現場開発者が増え続けている背景には、デジタル戦略部の伴走や現場開発者同士のコミュニケーションがあると考えています。業務アプリケーションの開発は孤独な作業ですが、デジタル戦略部が開発に伴走してくれるので、安心して開発を進められました。また、現場開発者同士がコミュニケーションを取る場が定期的に設けられ、そうした場で互いに声を掛け合うことが、現場開発者が自然に育つ土壌になっていると思います。審査申請手続きのデジタル化によって審査相談データのデータベース化が可能になり、それを基にしてオンラインの事例共有会が開催されるようになりました。事例共有会の開催は、審査担当者がナレッジマネジメントやチームのコミュニケーションを推進するきっかけになっています」(井口氏)

 互いに声を掛け合い助け合う組織文化は、従業員のモチベーションを向上させ、積極的な学びを促す。現場開発者として業務のデジタル化に取り組んでいた井口氏は、デジタル戦略部から「SmartDBには認定制度がある」と聞き、より積極的にデジタル化を推進していくために認定試験の受験を決意したという。

 SmartDBの認定制度は、業務アプリケーションのデザインや開発ができることを証明する「業務デザイナー」やSmartDBのAPIを用いた外部システム連携ができることを証明する「エキスパート」、SmartDBの活用拡大や管理統制の中心になれることを証明する「オーガナイザー」の3つの種類がある。

 井口氏は認定試験を受験するも、すぐには合格できなかった。しかし、ポータルサイトで問題の復習をしたり、間違った問題をノートにまとめたりして学びを深めた結果、最終的に最高位のグレードであるオーガナイザーの「ダイアモンド」に合格した。

 「試験に合格することで社内の信頼度が上がり、デジタル化推進の説得力が増すと考えました。今後は資格保持者としての自覚を持ち、責任ある行動を心掛けます」(井口氏)

データ連携などを通じてデジタル化の範囲を拡大予定

 三菱オートリースは、SmartDBと基幹システムを連携させて業務を効率化した。現在はSmartDBのデータをREST APIで基幹システムに反映しており、さらに基幹システムに保存された取引先情報や契約情報、車両情報のデータをSmartDBに自動的に表示するAPI連携機能の実装についても検討を開始した。

 「API連携以前は、申請部署のデータ入力の負担が大きく、デジタル化を諦めていた業務がありました。API連携が進めば担当者の負荷が軽減されるため、デジタル化の範囲拡大が期待できます」(井口氏)

 岡村氏と森田氏も次のように語り、デジタル化の範囲拡大に意欲を示した。

 「SmartDBを導入してから2年半ほどが経過し、月間で平均6000件もの申請業務をデジタル化したため、既にかなりの量のデータが蓄積されています。今後は蓄積されたデータを活用して、効率化や業務の見える化に挑戦したいと考えているところです」(岡村氏)

 「基幹システムとの連携はできましたが、今はまだSmartDB側からの一方通行なのが現状です。今後はSmartDBと基幹システムを双方向で連携させ、さらなる業務効率化を実現するつもりです。また、他のシステムとの連携やコラボレーター機能を活用した取引先との業務連携も検討したいと考えています」(森田氏)

本稿は、ドリームアーツが10月18日に開催した「デジタルの民主化day」における三菱オートリースのセッションの内容を編集部で再構成した。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

会員登録(無料)

製品カタログや技術資料、導入事例など、IT導入の課題解決に役立つ資料を簡単に入手できます。

編集部からのお知らせ