オフィス回帰の機運が高まる中、従業員コミュニケーションはどのように変わったのか。業務で使用するツールの種類や人気のツールに対するリアルな使用感、口コミも聞いた。
キーマンズネット編集部は2024年に注目すべきトピックスとして「セキュリティ」「SaaS」「コミュニケーション/コラボレーション」「生成AI(人工知能)」「システム運用/内製化」「データ活用」「Windows 11」の7つのトピックスを抽出し、読者調査を実施した(実施期間:2023年11月〜12月8日、有効回答数424件)。企業における2023年のIT投資意向と併せて調査結果を全8回にわたってお届けする。
第4回は「コミュニケーション/コラボレーション」の調査結果を紹介する。
コロナ禍をきっかけにコミュニケーションのオンライン移行が進んだが、現在はオフィス回帰の機運が高まり、オフラインとオンラインを組み合わせたハイブリッドワークが主流になりつつある。それに伴い、コミュニケーションの在り方はどのように変わったのだろうか。
まずコミュニケーションの「オンラインとオフラインの割合」についておおよその感覚値を聞いたところ、36.9%が「コミュニケーションの50%以上がオンライン」と回答した。
2022年の同様の調査では、「コミュニケーションの50%以上がオンライン」とした割合は43.3%だったので、わずかだがオフラインへの回帰の傾向が見られた(図1)。
この結果を従業員規模別に見ると「オンラインコミュニケーションは10%未満」と回答した割合に大きな差が見られた。従業員数100人以下の企業は40.8%と半数近くが10%未満と回答した一方、5001人以上の企業では約6.3%にとどまった。従業員が増えるにつれて、オンラインコミュニケーションの割合が増える傾向にある。
従業員数が増えると、コミュニケーションスタイルやニーズが多様化し、それらを支援するためのツールの導入や制度改革が求められる。全ての従業員が同時に物理的な場所に集まることも困難なため、異なる地理的場所にいる人が連携できるよう、ビジネスチャットやWeb会議などを利用してコミュニケーションを支援しているケースもある。
次に、従業員コミュニケーションにおいて使用するツールの種類と、コミュニケーションツールに対する所感を聞いた。人気のツールに対するリアルな使用感や口コミも寄せられた。
まず、ユーザーが公式で利用するツールは次のような順番になった。
具体的には、「電子メール」を利用する割合が最も多く71.9%、次いで「Microsoft Teams」(以下、Teams)が68.4%、次いで「電話」が60.8%で、コロナ禍で急進した「Zoom」は54.7%だった。コロナ禍以前から企業に普及していた「Cisco Webex」(14.2%)なども利用が続いているが、オンラインコミュニケーションツールにおいては、TeamsとZoomの二強状態が出来上がりつつあるようだ。また、前者のTeamsについては、従業員数が増えるにつれて利用率が増えていて、5001人以上の企業では88.5%のユーザーが利用している(図2)。
なお、各ツールに対する所感についてフリーコメントで聞いたところ、ガバナンスや統制の確保や、ツールの集約化に課題を感じている状況が見てとれた。「TeamsといったIT部門管轄以外のツールを使ってほしくない」「情報を集約するために『Evernote』を利用したい」「『Notion』を利用したい」など、ガバナンスや情報の透明性の向上のためにツールを統一したい、あるいは情報を集約するためのツールなどを利用したいという声が挙がっている。
一方で、「Notionを使えば社内の情報を一元化できるという意見もあるが、新たなツールの使い方を浸透させるのが難しそうだ」など、新しいツールが普及するかどうかに不安を感じる人もいた。実際に、「Notionや『Confluence』は利用が一部ユーザーにとどまっているので広げていきたい」といった意気込みを見せるユーザーもいた。
「仕事とプライベート」の切り分けに関する意見も寄せられた。特に、プライベート用途でも普及している「LINE」やGoogle については、「プライベートで使っているため」という声と「プライベートと仕事を分けるために使いたくない」という声があった。
特に、公式ツールとして人気だったTeamsに関しては、これに一本化したいという声がある一方で、「動作が重い」「社内コミュニケーションにはよいが、顧客対応には向いていない」「使わない機能が煩わしい」という声が目立ち、機能が充実しているが故の分かりにくさが問題になっていた。また、Google系のツールやLINEに関しては「セキュリティ面が不安」という反対意見が見られた。
その他、「Slack」や「ChatWork」を使ってみたいという声も多く、前者に関してはさまざまな外部ツールと連携させた自動化機能などへの関心が高いようだ。
最後に、業務で利用しているコラボレーションツールについて満足度を聞いたところ、フリーコメントで所感を聞いたところ「非常に満足している」(4.2%)と、「おおむね満足している」(74.1%)を合わせて、78.3%の回答者がコラボレーションツールに満足を示していた(図3)。
一方、「不満がある」(18.2%)、「非常に不満がある」(3.5%)という回答者もいる。その理由をフリーコメントで聞いたところ、操作性や情報のサイロ化などの点で課題があることが見えてきた。
操作性については、「余分な機能が邪魔で使いにくい、その割に自動機能が少ない」「知らないうちに仕様を変更され、ツールの挙動が変わってしまう」「レスポンスが悪い」といったコメントが寄せられた。
あるいは、セキュリティと利便性がトレードオフになっていて「セキュリティの確保のために不便な設定になっている」といったコメントもあった。
情報のサイロ化については、「電話以外のツールが4つ稼働していて、振返りや再利用したい時の検索性が悪い」「ツールが乱立していて本来の効果がでていない」「プロジェクト管理ツールの整備が遅れている」という声があった。特に、コミュニケーションツールが乱立すると情報がサイロ化して、情報連携が非効率になるリスクもある。
その他、せっかく導入したツールを使いこなせていないという声もあり「ツールをほとんど使わずに従来通りの電子メールや電話を使用する。情報の共有化のメリットが分からないためツールを使用するメリットも分からないのが現状」「電話とFAXに偏ってしまっている」「ナレッジを共有したいが会社が村社会なのでよそ者に情報提供する考え自体がない」というコメントも寄せられた。
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