プロジェクト管理ツールの選定や導入、運用にあたって課題は何だろうか。調査を通して、断トツの重視ポイントが明らかになった。
SaaS型を中心に年々導入率が上がっているプロジェクト管理ツールだが、選定や導入、運用にあたって課題はあるのだろうか。前編に引き続き本稿では「プロジェクト管理ツールの利用状況調査(2024年)(実施期間:2023年12月15日〜2024年1月15日、回答件数:324件)」を基に、ツールに対する課題や要望、満足度を紹介する。
コストやカスタマイズ性を抑えた“断トツ”の重視ポイントが明らかになった。
はじめにプロジェクト管理ツールの利用者に満足度を聞いたところ、「とても満足している」(6.2%)と「まあ満足している」(65.5%)を合わせ71.7%が満足しており、2022年12月の前回調査から8.5ポイント上昇していることが分かった(図1)。
規模別では500人以下の中堅・中小企業帯では8割を超えるが、5001人以上の大企業では6割程度と、従業員数が多い企業では満足度が低い傾向にあった。
「満足」と回答した人に理由を尋ねたところ「日々の原価進捗(しんちょく)を管理できる」や「プロジェクト管理以外にも進捗管理や情報共有としても利用できる」といった進捗・タスク管理機能に好感が寄せられた。また、「基本的機能が備わっており操作も難しくない」や「ユーザーにとって使いやすく、すぐ定着したから」など、直感的なUIによるユーザー定着の早さを挙げる声があった。
他にも、「オープンソースなのでカスタマイズなどの自由度が高くコスト面でもメリットがある」や「会社の細かい規定・要領に合わせた管理が可能」のように、取引先のポリシーに合わせて閲覧やファイル共有の範囲に制限をかけるなど、プロジェクトに合わせて要件を変更できるツールが求められていた。
一方「不満」の理由で多かったのは、「入力の手間が大変」や「一部のツール(Draw.ioやPlantUML)と連携できず入力がやや手間である」「内部用・顧客用の二重登録が大変」に見られる、他ツールとの連動性への不満だ。
例えばカレンダーやチャット、営業支援や他のプロジェクト・タスク管理ツールとデータ連携すれば、収支管理やメンバーの稼働状況も一元管理でき、トラブルなどの原因を特定しやすくなるだろう。効率化のためのシームレスな連携機能を求めている回答者も少なくなかった。
その他「効果はあるがデータが肥大化すると検索が課題」や「未だ使いこなせていない機能が多く、メンバーの習熟もこれから」といった操作、機能面での不満も挙げられた。「全社的に利用しているので齟齬は発生しにくいが、部門ごとに特徴があるのでそれを生かしたシステムになっていない」など、細やかなカスタマイズ性を求めている人もいた。特に大企業においては、中堅・中小企業帯と比較してプロジェクト経験やITリテラシーの差が発生しやすく、教育コストも大きいことから使い勝手の良さがツール選びのポイントになっているようだ。
続いて、プロジェクト管理ツールの導入で重視するポイントを聞いたところ「操作性の良さ」(76.2%)、「運用コスト」(56.5%)や「導入コスト」(47.5%)といったコスト面、「リモート環境での進捗共有のしやすさ」(32.1%)に「カスタマイズなどの拡張性」(28.1%)と続いた(図2)。
「操作性の良さ」は全ての従業員規模帯で7割以上が重視している。前編で触れたが、全部門導入や製造・生産部門、営業・販売部門といった開発部門以外での利用が年々増えていることや、プロジェクト管理の性質上、参加者全員が高い頻度で利用できる必要があることから、最も重要視されているのだろう。
その他、ツールの導入や運用のコストは主に中小企業で重視されており、大企業では「他ツールとの連動性」や「リモート環境下での使い勝手」が重視されている傾向にあった。従業員数が多いほどプロジェクト環境が多様化することから、ツールだけではなくプロジェクト全体にかかるコストや費用対効果を意識していると思われる。
最後は、今後プロジェクト管理ツールに求める機能やサービスについて収集したので紹介する。
最も多く寄せられた要望は、プロジェクトメンバーの利用定着を課題とした使い勝手の向上だ。ここまで触れてきた通り、プロジェクトメンバーのツールの利用スキルに差が生じた時点でプロジェクト進捗を正確に管理することは難しくなる。働く環境やITリテラシーに個人差がある中で、いかに利用を定着できるかが鍵となる。
そうしたことから「メンバーに利用定着させるための手法も合わせて提示してほしい」や「定期的なフォロー機能がほしい」「メンバーが正確な情報を入力しなければどんなに優れた製品でも有効に利用できない。入力の簡素化、オペレーションのしやすさを進めてほしい」など、ベンダーサポートへの要望も多数挙がった。
また、カスタマイズ領域の拡張への要望も多い。「既存のスケジュール管理しているグループウェアとの連携をスムーズにしてほしい」や「プロジェクト途中での中間成果物をチェックできる機能(AI活用)」など、ツール全体ではなくプロジェクトごとのカスタマイズで、各プロジェクトの目的の効率化、生産性向上に役立てたいのだろう。
ベンダーへは「どのようにカスタマイズできるのか、使う側に知見が乏しいため、定期的にウェビナーを開催してほしい」との要望もあった。一方で「カスタマイズ領域が広いと個別の対応が煩雑になる」や「多くの場合は仕事にシステムを寄せるのではなく、システムに仕事を寄せることで属人的なブラックボックスを解消できると思う」など、カスタマイズ性の高さは利用定着の課題と諸(もろ)刃の剣との意見も見られた。
その他「セキュリティ評価のビジュアル化」や「セキュリティ機能を充実してほしい」といったセキュリティ機能強化への要望や、サービス提供社数の増加に伴う「どのプロジェクト管理ツールが自社に適しているのか、ツール選びが難しい」といった声も聞かれた。
今後も社内外で多くのプロジェクトが発生し、管理ツールの利用も進むことが予想される。
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