ノークリサーチの調査によると、中堅・中小企業が利用するRPAツールは「2強体制」が続いている。RPAによる自動化の対象となる作業の推移から浮かび上がるRPAツール利用のトレンドとは。
ノークリサーチは2024年1月31日、中堅・中小企業におけるRPA(Robotic Process Automation)ツールの用途と社数シェアに関する調査結果を発表した。
同調査はRPAおよびノーコード/ローコード開発ツールの活用実態の把握を目的として、2023年7〜8月に調査を実施して1300社から有効回答を得た。調査対象は年商500億円未満の国内の中堅・中小企業(全業種)だ。
今回の調査では、回答者に4グループ、14項目にわたる選択肢を提示して、RPAツールによる自動化が適している場面や用途を分析した(図1)。
RPAツールを適用する場面や用途の中で「データの転記や照合に関する項目」のうち「書式が定まった紙面の転記・照合」「非定型である紙面の転記・照合」「手書きを含む紙面の転記・照合」の3項目(図1の※印)と「Webサイトの転記・照合」「メール文面の転記・照合」の2項目(図1の※※印)の調査結果を紹介する。
以降の図2〜4では「2022年時点で導入済み」を青、「2023年時点で導入済みの場合」をオレンジ、「2023年時点で今後の導入を予定している場合」をグレー、「いったん導入したが、2023年時点で廃止した場合」をイエローで表示する。
RPAツールの活用状況別に「書式が定まった紙面の転記・照合」「非定型である紙面の転記・照合」「手書きを含む紙面の転記・照合」を集計した結果が図2の通りだ。
マークシート方式の書類をシステムに転記する作業を自動化するような「書式が定まった紙面の転記・照合」は、「2022年導入済み」と比べて「2023年導入済み」は下がったものの、「2023年導入予定」は「2023年導入済み」を上回った。選択肢に挙がった3つの中では今後の導入予定が最も多い。
この結果を受けて、今後は最も基本的な用途である「書式が定まった紙面の転記・照合」の用途が再び増える、とノークリサーチは予想する。こうした傾向から「RPAツール活用の訴求対象がレイトマジョリティーへと移りつつある状況が垣間見える」としている。
「データの配置や配信に関する項目」のうち「ファイルを定期的に配置する」「電子メールを定期的に配信する」の2項目について、RPAツールの活用状況別に集計したのが図3だ。
「ファイルを定期的に配置する」に目立った変化は見られない。2023年に導入したもののいったん廃止したという回答が10%と低いところから、導入した企業では利用が定着したことがうかがえる。
一方で、「電子メールを定期的に配信する」は「2022年導入済み」と比べて「2023年導入済み」が増加し、「2023年導入予定」も同程度の値となっている。
この結果から、「電子メールを定期的に配信する」需要は引き続き堅調だといえる。ただし、「電子メールを定期的に配信する」は2023年に導入したものの、いったん廃止した割合も高い。「電子メールの誤送信などのトラブル発生によってRPAツール活用が中断するといった事象が起きないように注意することが大切だ」とノークリサーチは指摘する。
今回の調査では、国内ベンダー25項目、外資系ベンダー11項目、その他(業務システムの一機能としての自動化や独自開発システムなど)8項目、合計44項目にわたる具体的な製品・サービス名を列挙して、RPAツールの社数シェアを年商などの企業属性を含めた観点から分析した。
調査では年商規模を「5億円未満」「5〜10億円」「10〜20億円」「20〜50億円」「50〜100億円」「100〜300億円」「300〜500億円」の7つに分けて集計した。その中から3つの年商区分を抜粋し、国内ベンダーや外資系ベンダー、その他のグループで見た場合の社数シェアを集計したのが図4だ。
国内ベンダーや外資系ベンダー、その他といったグループ単位で見た場合、年商規模によって導入済み、あるいは導入予定のRPAツールのシェアはそれほど変わらないことが確認できる。
「導入済み」「導入予定」と回答した企業が利用しているRPAツールを、社数シェアが高い順に列挙したのが図5だ。
「導入済み」におけるシェアが1割以上なのは、「WinActor」「BizRobo!」「Auto名人シリーズ」「OCEVISTAS」 「SynchRoid」「GENEST、EntreQue、Axelute」「Power Automate Desktop」の7つの製品・サービスだった。
同調査によれば、NTTアドバンステクノロジが提供する「WinActor」はRPAツールの導入社数シェアで首位を堅持しているが、2位の「BizRobo!」を提供するRPAテクノロジーズは「OCEVISTAS」「SynchRoid」の開発にも関わっている。従って、NTTアドバンステクノロジとRPAテクノロジーズの2強体制が依然として続く状況になっているといえるだろう。
「導入予定」における社数シェアで上位を占めた中には、ツール名でなく「独自開発システム」や「ERP(統合基幹業務システム)・基幹系システムの一機能として利用」および「ペーパレス化のソリューションの一部として利用」という回答が浮上した。
独自開発システムやERP・基幹系システム、ペーパレス化のソリューションはRPAツールの「競合」となる可能性もあると、ノークリサーチは解説する。
なお、ノークリサーチは今回の調査結果を「2023年版 中堅・中小企業におけるRPAおよびノーコード/ローコード開発ツールの活用実態レポート」として発表している。
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