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予算も人手もないけれどDXは実現できる? 「ChatGPT」に助けを求めてみた

経済状況が変化する中、企業が成長し、競争力を高めていくためにはDXの実現が前提条件になる。だが、企業によってはDXに取り組むための準備すら難しい場合がある。どうればよいのだろうか。ChatGPTに助けてもらおう。

» 2024年02月16日 07時00分 公開
[畑陽一郎キーマンズネット]

 DX(デジタルトランスフォーメーション)は企業の成長に必要で、競争力強化に役立つという理屈は広く理解されているはずだ。

 だが理屈は分かっていても、なかなかDXに取り組めない企業もあるだろう。中堅・中小企業では、「経営者の支援が得られない」「予算がない」「DXに詳しい人員が社内に見当たらない」といった条件が当てはまる場合が目立つ。

 こうした厳しい条件下では、DXの推進は難しいのだろうか。座して考えていても良い考えが浮かばないときは、「ChatGPT」(無償のGPT-3.5でも可能)と対話を重ねることで、何かヒントが得られるかもしれない。

経営陣の理解がなく、予算や人員も不足

 まずは最も厳しい条件の場合にどうすればよいのか、ChatGPTに聞いてみよう。

ChatGPTさんにDX(デジタルトランスフォーメーション)をどうしたら推進できるかについて質問があります。当社は従業員が100人程度の中小企業です。当社には4つの課題があります。(1)社内にあるさまざまなデータを活用できていません。(2)市場の変化に応じてビジネスモデルを変更できていません。(3)ITシステムの予算の大半を維持管理費に使ってしまっています。(4)システムを保守管理する人材が不足しており、サイバーセキュリティにも十分取り組めていません。そこでDXを推進して以上の(1)〜(4)の課題を解決したいと考えています。しかし、当社の経営層はDXを推進する意識に乏しく、予算は限られており、DXに詳しい人材がいません。当社がDXを推進するためにこれから実行しなければならないことを順番に8つ挙げていただけないでしょうか。


 質問にある当社は、経済産業省が「DXレポート〜ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開〜」で2025年の崖に落ち込む典型的な企業だと言えるだろう。DX推進に有利な条件が一つもない厳しいパターンだ。ChatGPTはどのように回答するだろうか。なお、ChatGPTが箇条書きの回答の末尾にそれぞれ出典のリンクを付けているが、その部分は省略した。

DX推進のための手順

1. 経営層への啓発と意識改革: DXの重要性とメリットを経営層に伝え、彼らの理解を深める必要があります

2. DX戦略の策定と優先順位付け: 与えられた課題に基づいて、DX戦略を構築し、優先順位を付けます。例えば、データ活用やセキュリティ強化が先行すべきでしょう

3. 外部専門家の活用: DXに詳しいコンサルタントや専門家を採用し、戦略の策定や実装をサポートしてもらいます

4. 内部教育と人材育成: 従業員にDXの重要性や必要なスキルを教育し、彼らの意識改革と能力向上を図ります

5. 予算再編成と効率化: 維持管理費の削減やDXに必要な予算の確保を目指します。効率化やコスト削減策を検討します

6. データ活用の促進: データの収集、分析、活用を促進し、意思決定の質を向上させます

7. ビジネスモデルの再構築: 市場の変化に応じた新たなビジネスモデルを構築し、競争力を強化します

8. セキュリティ対策の強化: サイバーセキュリティ対策を強化し、データやシステムの安全性を確保します

以上が、経営層の意識改革や戦略策定、予算再編成からスキル向上、セキュリティ対策の強化までを含む、DX推進のための8つの重要なステップです。


 回答を見ると「1」は経営層の無理解を、「3」と「4」は人材不足を「5」は予算不足を解決するための最初の糸口を示している。「2」は質問にはなかった視点だ。「2」がないと、乏しいリソースを集中配分できない。「2」の前提があって「6」と「7」「8」に進むことができる。

 もう少し質問を掘り下げてみよう。今回は「経営層への啓発と意識改革」についてさらに聞いてみた。

ChatGPTさんは先ほどの回答で「経営層への啓発と意識改革」を手順の先頭に挙げています。なぜこれが最初の手順なのでしょうか。


DX推進のための手順: 経営層への啓発と意識改革の重要性

1. 組織の方向性の決定: 経営層の理解や支持がなければ、DX戦略の実行は困難です。経営層がDXの重要性を認識し、戦略に賛同することが、組織全体の方向性を決定する上で必要です

2. 資源の確保と適切な支援: 経営層がDXに賛同することで、必要な予算やリソースを割り当てることが可能になります。また、経営層の支援があれば、従業員がDXに取り組む動機付けにもつながります

3. 文化の変革の促進: 経営層がDXに対するリーダーシップを示すことで、組織内の文化やマインドセットの変革を促進します。経営層が積極的にDXを推進する姿勢を見せることで、従業員も変化への意欲を持つようになります

経営層への啓発と意識改革が最初の手順として挙げられる理由は、組織の方向性を決定し、資源の確保、文化の変革を促進するために、経営層の理解と支持が不可欠だからです。


 なるほど確かに経営層の理解がなければ他の手順を進めることは難しいだろう。ではどうすればよいのだろうか。

ChatGPTさんが「経営層への啓発と意識改革」を手順の先頭に挙げた理由は分かりました。では経営層への啓発と意識改革を従業員側から進めるための手順を順番に8つ挙げてください。


従業員向けDX啓発と意識改革の手順

1. 従業員へのDXの重要性の説明: DXが組織の成功にどのように貢献するかを明確に伝えます

2. DXのメリットの共有: 従業員がDXに参加することで享受できる利点や改善点を具体的に説明します

3. 従業員の参加とフィードバックの促進: DX戦略やプロジェクトに対する従業員の意見やアイデアを積極的に求め、参加を奨励します

4. DXに関する教育とトレーニングの提供: 従業員がDXに必要なスキルを習得できるよう、教育プログラムやトレーニングを提供します

5. 成功事例の共有: 他の企業や部署でのDX成功事例を共有し、従業員の関心とモチベーションを高めます

6. DXへの参加を奨励する報酬や認知: DXプロジェクトへの積極的な参加や成果を評価し、適切な報酬や認知を提供します

7. オープンなコミュニケーションと情報共有: 従業員間のコミュニケーションを促進し、DXに関する情報や進捗状況を透明かつ効果的に共有します

8. 従業員のフィードバックへの対応と改善: 従業員からのフィードバックに対して真剣に対応し、DX戦略やプロセスの改善に反映させます

以上が、経営層から従業員に向けてのDX啓発と意識改革の手順です。


 ChatGPTが私の質問の意図を取り違えてしまった。ChatGPTの回答は経営層にはやる気があるが、従業員が付いてこない場合の対策だ。ChatGPTがこういう取り違えをすることは珍しくない。もう一度聞き直してみよう。

ChatGPTさんが説明したのは、経営層から従業員に向けてのDXの啓発の方法です。私が知りたいのは無理解な経営層に向けて、従業員が啓発したり、意識を改革したりする方法です。


無理解な経営層に向けた従業員のDX啓発と意識改革の手順

1. DXの重要性を従業員が示す: 経営層にDXの重要性を理解させるため、従業員がDXのメリットや成功事例を経営層に積極的に共有します

2. データや具体的な事例を用いた説明: 従業員が経営層に対して、DX導入による具体的な効果や市場での競争力向上などを示すデータや事例を提供します

3. 共同作業やプロジェクトの実施: 従業員と経営層が共同でDXプロジェクトに取り組むことで、経営層がDXの価値を実感し、理解を深めることができます

4. 成功事例の積極的な共有: 従業員がDXに関連した成功事例を経営層と共有し、DXの重要性を再確認させます

5. 経営層への説得と情報提供: 従業員が経営層に向けてDXの重要性を説得し、必要な情報を提供するためのフォーラムやミーティングを組織します

6. 経営層の関心やニーズに合わせたアプローチ: 従業員が経営層の関心やニーズに合わせたDX啓発のアプローチを取り、理解を深めるための情報や資料を提供します

7. フィードバックの受け入れと改善: 従業員が経営層からのフィードバックを真剣に受け入れ、DX啓発の方法や内容を改善し続けます

8. 持続的な啓発とコミュニケーション: 従業員が経営層に向けて持続的な啓発活動やコミュニケーションを行い、DXの理解を徐々に深めていきます

以上が、無理解な経営層に向けた従業員のDX啓発と意識改革の手順です。


 今度はうまくいった。DXの具体的な効果を経営層にプレゼンする機会を得て、何とかDXプロジェクトを立ち上げることができれば出発点に立つことができるようだ。もう少し掘り下げてみよう。

ChatGPTさんに2つ質問があります。1つ目の質問はデータや具体的な事例を探す方法です。2つ目の質問は従業員と経営層が共同でDXプロジェクトに取り組むための糸口をどうやって作ればよいかです。


データや具体的な事例を探す方法

1. 業界レポートや研究論文の検索: 業界の最新レポートや研究論文から、DX導入による具体的な効果や事例を探します。機関や大学のWebサイト、オンラインデータベースを活用しましょう

2. 企業のケーススタディや成功事例の調査: 他社のDX導入に関するケーススタディや成功事例を調査し、経営層に示すためのデータや具体的な事例を収集します。業界イベントやウェビナー、企業のブログや報道記事などが参考になります

3. 専門家やコンサルタントのアドバイス: DXに関する専門家やコンサルタントに相談し、最新のトレンドや成功事例についてアドバイスを受けます。業界の専門家やコンサルタントは、貴重な情報源となります

4. オンラインプラットフォームやコミュニティーの参加: DXに関するオンラインプラットフォームやコミュニティーに参加し、他のメンバーと情報交換を行います。そこで得られた事例や実践的な知識が役立つでしょう

従業員と経営層が共同でDXプロジェクトに取り組むための糸口

1. 意見交換やワークショップの開催: 従業員と経営層を対象とした意見交換会やワークショップを開催し、DXプロジェクトに関するアイデアや期待を共有します

2. 共通の目標や価値観の確認: 従業員と経営層が共通の目標や価値観を確認し、DXプロジェクトに取り組む意欲を高めます

3. プロジェクトチームの形成: 従業員と経営層から適切なメンバーを選出し、共同でプロジェクトチームを形成します。各部門やレベルからの代表が含まれることが重要です

4. 透明なコミュニケーションの確保: プロジェクトの進捗状況や意思決定プロセスを従業員と経営層で共有し、透明性を確保します。定期的な報告やミーティングが有効です

5. 成果共有と評価の仕組みの構築: プロジェクトの成果を従業員と経営層で共有し、貢献したメンバーを評価する仕組みを構築します。成功や失敗から学び、次の段階に進むためのフィードバックループを確立します


 ここまでのChatGPTの回答はもっともなことをまとめているものの、DX推進の特効薬にはならないだろう。だが、計画に見落としがないかどうかを確認したり、従業員や経営層の最初の意識合わせをしたり、外部人材との会話の下準備を進めたりする際には役立ちそうだ。

なにか変だぞ わが社のDX

 経営層の理解を得てDXプロジェクトが始まり、小さな成果が出始めたとしよう。このまま進んでも大丈夫なのだろうか。早速ChatGPTに聞いてみよう。

ChatGPTさんのおすすめに従って経営層の理解を得てDXプロジェクトが始まりました。小さいとはいえ成果も出始めています。今後、DXプロジェクトをより進める際に、注意しなければならない落とし穴があれば、教えてください。


DXプロジェクトを進める際の注意すべき落とし穴

1. スコープの過剰拡大: 成果が出始めると、スコープを過剰に拡大し、プロジェクトが複雑化する可能性があります。スコープを管理し、目標に集中することが重要です

2. リソースの不足: 成果が出ると期待が高まり、リソースが追い付かなくなる場合があります。リソースを適切に確保し、プロジェクトの持続可能性を考慮する必要があります

3. コミュニケーションの不足: 成果が出ると、コミュニケーションの重要性が軽視されがちです。定期的かつ透明なコミュニケーションを維持し、関係者間の誤解や不満を防ぎます

4. 変更管理の不備: 成果が出るにつれて、変更が発生する可能性が高まります。変更管理プロセスを確立し、変更がプロジェクトの目標やスケジュールに与える影響を正確に評価することが重要です

5. セキュリティの脆弱性: 成果が出ると、セキュリティ対策が軽視される傾向があります。セキュリティの脅威に対する意識を高め、適切な対策を講じることが必要です

6. ステークホルダーの期待の不一致: 成果が出ると、ステークホルダー間での期待の不一致が生じる可能性があります。ステークホルダーとのコミュニケーションを重視し、期待を明確にすることが重要です

7. 技術の過信: 成果が出ると、技術への過信が生じる場合があります。技術の限界やリスクを認識し、ビジネスニーズに合った適切な技術を選択することが必要です

8. 文化の変革の誤解: 成果が出ると、文化の変革が進んでいると誤解される場合があります。文化変革の重要性を理解し、継続的な取り組みが必要だということを認識することが重要です

これらの落とし穴を回避するためには、プロジェクトチームが意識的に問題を認識し、適切な対策を講じることが不可欠です。


どうしてもDXを推進できないとき

 ChatGPTの指針に従ってDXを推進するには経営層の理解がどうしても必要だ。だが、どうしても理解が得られなかったり、DXという言葉自体に経営層の拒否反応があったりしたとき、何か代替案はあるのだろうか。

ChatGPTさんに質問があります。DXを推進するのではなく、DXを推進した場合と同じ効果を得ることができる他の方策はありますか。


DX以外の推進策について

1. プロセスの最適化: DXではなく、既存のプロセスを見直して最適化することで、効率性や生産性の向上を図ることができます。効果的なプロセス改善により、業務の効率化や品質向上が期待できます

2. デジタルツールの活用: 単純なツールやアプリケーションの導入や活用により、業務の自動化や効率化を図ることができます。例えば、タスク管理ツールやコラボレーションツールの導入により、業務の効率化を実現することが可能です

3. 人材のスキルアップ: 従業員のスキルアップや教育トレーニングの実施により、業務の質や効率性を向上させることができます。最新の技術やツールに対するトレーニングを提供することで、業務の品質向上や生産性の向上が期待できます

4. 顧客中心のアプローチの強化: 顧客中心のアプローチを強化し、顧客ニーズに応えるサービスや製品を提供することで、競争力を高めることができます。顧客満足度の向上や顧客ロイヤルティーの向上が期待できます

5. イノベーションの促進: イノベーションを推進し、新しいビジネスモデルや製品・サービスの開発を行うことで、競争力を強化することができます。イノベーションを通じて市場に先行し、成長を促進することが可能です

これらの方策は、DXを推進することなくも、効率性や生産性の向上、顧客満足度の向上、イノベーションの促進など、同様の効果を得ることができます。組織の状況やニーズに応じて、適切な方策を選択することが重要です。


 今回はDX推進のための手順をChatGPTに聞いた。ChatGPTには柔軟性があり、DXと同等の成果を得る別の方法についても手順を示すことができた。自分以外の従業員とDXについてうまくコミュニケートできないときや、最初の糸口をつかみたいときは、他の手順についてもChatGPTと話し合うとよいだろう。

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