Copilot for Microsoft 365を利用しない理由として、「利用のイメージがわかない」「使い方が分からない」といった声も聞かれる。先行ユーザーはどのようにCopilot for Microsoft 365を活用しているのだろうか。
Microsoft 365にOpenAIの大規模言語モデル(LLM)を内蔵した「Copilot for Microsoft 365」。2024年1月のサービス改訂で、1ユーザーからの購入が可能になり、利用のハードルが下がったことでますます注目を集めている。
一方で、ユーザーからは「利用のイメージがわかない」「使い方が分からない」といった声も聞かれ、関心が高いものの導入を控えるといった声も少なくない。
先行ユーザーはどのようにCopilot for Microsoft 365を活用しているのだろうか。大塚商会の塩塚 美穂子氏(LA事業部 Microsoftプロジェクト)がウェビナーで「使ってみたからこそ分かるおススメの使い方」を解説した。
Copilot for Microsoft 365は、Microsoft365にはOpenAIの大規模言語モデル(LLM)を内蔵したサービスだ。「プロンプト」と呼ばれる自然言語で指示をすると、公開データと非公開データを使って文書作成や編集、要約やグラフ作成、データ分析などを実行する。OpenAIの生成AIテクノロジーを、企業が各テナント内に閉じて利用できることが特徴だ。
「Copilot=コ・パイロット」とは副操縦士のことで、パイロット役は人間が務める。塩塚氏は、「機長であるお客さまが、副操縦士であるマイクロソフトのAIに指示を出して使用します。AIはあくまでお客さまをサポートする役割であるということがポイントです」と説明する。
Copilot for Microsoft 365は、ユーザーが詳細なプロンプトを書き込まなくても、対話形式で結果に結び付ける工夫が盛り込まれている。また、LLMによる出力とユーザー企業テナント内の既存データを参照した「Microsoft Graph」を併用しているので、「Microsoft Teams」(以下、Teams)や「Microsoft Outlook」(以下、Outlook)「Microsoft OneDrive」(以下、OneDrive)、「Microsoft SharePoint」(以下、SharePoint)などに蓄積した情報を基に自社に合わせた出力結果を得られる。なお、オンプレミス版のMicrosoft 365は、Copilot for Microsoft 365を利用できない。
塩塚氏は、2024年2月から日本語にも対応を開始したCopilot for Microsoft 365の「Microsoft Excel」(以下、Excel)での機能を紹介した。現在はプレビュー版で、順次機能が追加されている。
ExcelでCopilot for Microsoft 365を利用する場合の注意事項として、ファイルがOneDrive、またはSharePointに保存されていること、そしてデータが「テーブル形式」であることが必要だと、塩塚氏は前置きする。「テーブルが適用されていない表を選択しても、Copilot for Microsoft 365の機能がハイライトされないので、使用できません。その場合は最初にテーブルを適用してください」(塩塚氏)
画面右上のCopilot for Microsoft 365のアイコンを押すと、シートの右側にCopilot(プレビュー)ウィンドウが表示される。この中に、どのような指示をするかのナビゲーションと、指示した結果のプレビューが表示される。ユーザーは、基本的にこのウィンドウを使って生成AIの機能をExcelのシートに適用する。
「Copilot(プレビュー)ウィンドウには『並べかえ』『分析』などの基本的なプロンプトの例が表示されています。さらに細かいプロンプトの例も出せます」(塩塚氏)
生成AI活用の悩みとしては、「利用のイメージがわかない」「活用方法が分からない」といった声が上がるが、Copilot for Microsoft 365は利用例を提示することで課題にアプローチしている。
デモで塩塚氏は、サンプルデータで、別の列に記録されている「商品コード」と「商品名」を合体させて、1つのセルにするプロンプトを指示した。「商品コードと商品名を組み合わせた列を追加します」を書き込むだけで、それぞれがExcelのどの列かをAIが自動的に判断して、関数に組み込んだ処理案を提示する。問題なければそれを列に追加する指示を出す。ユーザーは商品コードと商品名の間にスペースを入れるなどの微調整が可能だ。
同様に、並べ替えやグラフの作成も、自然言語で指示を出せばフィールドの位置や関数そのものを指定せずに処理できる。社内のデータだけでなく、国が公表している地域別の人口などオープンデータの可視化にも、Copilot for Microsoft 365の分析機能は役に立つと塩塚氏は話す。
次に塩塚氏は、OutlookのCopilot for Microsoft 365による支援機能を紹介した。現在OutlookでCopilot for Microsoft 365を利用するには、Web版の新しいOutlookを使う必要があるが、クラシック版でも利用できるように切り替えが進んでいる。
海外から届く英文メールの内容を確認する際、Webの翻訳サイトに電子メールの本文を貼り付けることがあるが、Copilot for Microsoft 365を使えばその必要はなくなる。Outlookの画面横のウィンドウで要約をクリックすれば、英語を日本語に翻訳した上で文章を要約できる。
またメールの新規作成にも、Copilot for Microsoft 365を使用可能だ。「『お客さまとの打ち合わせスケジュールを調整するメール』と指示すれば、メールの本文に、『私はここが空いています』と候補日時のダミーの文を入れてくれます。そこに、本当に自分の空き時間を入れれば、すぐにメールを送れます」(塩塚氏)。メールの文体をフォーマルにするか、カジュアルか、またメールの長さもあらかじめ設定できるので、状況に合わせたメールを生成できる。
次はTeamsだ。塩塚氏も、TeamsでのCopilot for Microsoft 365の利用が最も多いのではないかと指摘する。特に重宝するのが会議の要約だ。欠席だった会議の内容を後から確認したり、そのまま議事録として出力したりできる。
「『インテリジェントミーティングリキャップ』という機能を使えます。会議の内容をAIが分析し、発言者ごとに分離したり、課題は何だったかを抽出したりといったことが可能です。長い会議の中で、上司の発言だけを探して確認するといった使い方もできます」(塩塚氏)。この機能は「Teams Premium」の有料サービスの一つだったが、Copilot for Microsoft 365では無料で利用できる。
社内のデータを対話形式で検索できる「Microsoft 365 Chat」についても紹介があった。これは、OutlookやTeams、OneDrive、SharePointなどに蓄積したデータを一括検索する機能だ。特定の人物に関するメールの内容や、やりとりしたファイルなどを探すといった使い方を想定している。
検索対象は、社内情報とWeb情報を切り替えられる。Web情報の検索では商用データ保護された(AIが学習されない機能)Copilotを利用する。商用データ保護がされたCopilotでは通常のWeb検索の他、目的に合わせたプログラミングコードの生成や画像生成が可能だ。
デモを終えた塩塚氏は、「Copilot for Microsoft 365を企業が最大限活用するためには、的確な指示出しと、Microsoft365内のデータ蓄積が鍵となります」と話した。
企業向けCopilot for Microsoft 365は2023年11月1日にリリースされた。当初は1テナント当たり300ユーザーからの利用が条件だったが、2024年1月のサービス改訂で、1ユーザーからの利用が可能になった。契約形態は、通常契約の他CSP(Microsoft Cloud Solution Provider)による契約が可能だ。
大塚商会では、顧客環境でのCopilot for Microsoft 365の導入評価、支援をはじめ、各種Eラーニングコンテンツ、AI入門研修など幅広いサポートメニューを用意している。
本稿は、大塚商会が主催したWebセミナー「Officeスクール講師が教えるCopilot for Microsoft 365アプリケーションごとの実用例 徹底紹介」の内容を編集部で再構成した。
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