Oracleは「Oracle Fusion Cloud Applications Suite」向け生成AIの第一弾をリリースした。どのようなCXの機能が含まれているのだろうか。その背景にある同社の生成AI戦略とは。
Oracleは「Oracle Fusion Cloud Applications Suite」向け生成AIの第一弾をリリースした。これには、マーケティングやセールス、カスタマーサービスの領域におけるカスタマーサクセス(CX)のためのツールが含まれている。どのようなことができるのか。
さらに、その背景にある同社の生成AI戦略や、LLMベンダーとのパートナーシップについても解説する。
Oracleは2024年3月14日に、Oracle Fusion Cloud Applications Suite向け生成AIの第一弾をリリースした。どのようなCXの機能が含まれているのだろうか。
まずはWebチャットの要約機能で、カスタマーサービスに向けに提供される。営業担当者向けには、過去に成約した案件に基づく顧客主導のコンテンツ作成支援機能がある。マーケティング担当者のための、ランディングページや電子メールの件名、電子メールの本文をAIが生成する機能もある。
このCXツールは、OracleがHRやサプライチェーンも含む幅広いアプリケーション向けにリリースした50の生成AI機能の1つだ。この戦略は、一部においてSalesforceの初期の「Einstein AI戦略」に類似している。作業担当者のストレスの軽減を目的に、焦点を絞った機能を提供する戦略的なアプローチだ。
コンサルティング企業であるThe 56 Groupのポール・グリーンバーグ氏(アナリスト)は、次のように述べた。
「専門的な領域における生成AIのトレンドは正しい。はじめ、多くの人は、生成AIが創造性に優れ、人間らしく見えることに驚いたが、実際に人間のような機能を持っているわけではない。生成AIは、単に会話のための言語を用いてアウトプットをしているだけだ。今日、生成AIは固有の価値を実現する方向に確実に進んでいる。生成AIに関する有意義な活用方法を見つけたとき、Oracleのような企業は恩恵を受けるだろう」
Pracleのロブ・ピンカートン氏(シニアバイスプレジデント)は「初期段階の生成AIをオフィスの従業員に使わせることは容易ではない」と述べている。しかし、彼らが生成AIを使い始めると、時間の経過とともに生成AIは、その価値を証明するだろう。
「私は、Google検索が入力した通りに検索を完了させることができるのか懐疑的だった。その後、生成AI機能であるオートコンプリートを使って、Googleは、最初の5文字で始まる上位10を表示するようになった。そのとき、私は『ああ、これはより良い検索だ』と思った。実際に見るまでは信じられなかったはずだ」(ピンカートン氏)
Cohereの大規模言語モデル(LLM)は、Oracleの生成AIツールのバックボーンとなっている。両社は2023年に、MicrosoftのOpenAIに対する投資やAWSのAnthropicに対する投資と同様のパートナーシップを締結した。
ピンカートン氏によると、CohereとOracle cloudの統合の背景には、パフォーマンス向上の狙いのみならず、顧客データが流れる場所をコントロールする考えがあるという。OracleのユーザーデータはOracle Cloudから外部に流れることはなく、外部のLLMとも共有されない。これはOracleの大企業顧客のセキュリティニーズを満たすものだ。
グリーンバーグ氏は「CohereはOracleの買収ターゲットになるかもしれない」と述べている。OpenAIのような大企業を買収するよりも費用がかからず、また、既成のLLMを取得することで、Oracleが新しい生成AI機能を開発する際に多くの作業とコストを節約できる。
「Oracleは愚かではない。彼らは買収から多くの価値を得ている。これは臆測だが、Oracleは本当に気に入った場合には、最終的に買収できるような企業と提携することが多い」(グリーンバーグ氏)
Oracleの生成AIツールは、2024年3月14日に開催されたOracle CloudWorld Londonに合わせてリリースされた。このAIツールは、Oracle Fusionアプリケーションの契約者に追加料金なしで提供される。
ドン・フラッキンガー氏は、TechTarget Editorialのシニアニュースライターだ。彼は顧客体験、デジタル体験管理、エンドユーザーコンピューティングの領域を得意としている。何か情報提供がある場合は、彼に電子メールを送ってほしい。
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