現在、主流のリチウムイオンバッテリー。便利ではあるが、生産する上で課題もある。その課題を解消し、リチウムイオンバッテリーを超えるバッテリーが登場した。
スマートフォンなど、多くのデジタルデバイスで必要とされるバッテリー(二次電池)。「バッテリーの寿命は長く、充電の時間は短く」が理想だが、現在主流のリチウムイオンバッテリーはおおよそその望みを満たしていると言えるだろう。
そんな中、新世代のバッテリーが登場したと話題だ。それもそのはず、従来のバッテリーよりもなんと10倍も速く充放電が可能だという。どうやって、それを実現したのか?
企業リリース配信サイト『Business Wire』が2024年4月29日(現地時間)に掲載した記事によれば、ナトリウムイオン技術ベンチャー企業のNatron Energyは、米国ミシガン州ホランドにある同社の製造拠点でナトリウムイオンバッテリーの生産を開始したことを発表したという。
ナトリウムイオンバッテリーは、その名の通りナトリウムを使って電気エネルギーをためるバッテリーだ。最大の利点は、現在主流のリチウムイオンバッテリーで使われているリチウムを使わずに済む点にある。
リチウムはレアメタルに分類される金属だ。限られた国や地域でしか採掘できない上、採掘や精製の方法も技術的、環境的な課題があり、供給量が限定される。リチウムイオンバッテリーの需要が高まるにつれてリチウムの価格も高騰し、安定供給が不安視されている。
一方、ナトリウムにはそのような問題はない。ナトリウムの量はリチウムの500〜1000倍だそうで、精製の際も自然環境に影響することはないという。ただ、ナトリウムイオンバッテリーはリチウムイオンバッテリーと比べるとエネルギー密度が小さく、充電に必要な時間も長い。だが、その弱点を払拭(ふっしょく)する製品が登場する、というのが今回の話だ。
Natron Energyは、既に2022年にナトリウムイオンバッテリーの生産を開始すると発表していた。予定では2023年から生産を開始する予定だったが、諸事情で計画が後ろ倒しになった。そして、ようやく生産が開始された。
Natron Energyの共同SEOであるColin Wessells氏のコメントによれば、同社が製造するナトリウムイオンバッテリーはリチウムイオンバッテリーよりも10倍の速度で充放電できるという。そのため、短いサイクルで充電と放電を繰り返すバックアップ用バッテリーに適しているという。またリサイクル寿命もリチウムイオンバッテリーより長く、5万サイクルの寿命であることもこの用途に向いた仕様だ。
注目すべきは、AI(人工知能)の運用に必要なデータセンターが必要としている蓄電池として、同社のナトリウムイオンバッテリーへのニーズが高まっていることだ。同社の生産拠点をフル稼働させることで年間600メガワットに及ぶナトリウムイオンバッテリーの生産が可能で、その多くがAIデータセンター向けに出荷されるという。
同社は、今後、ナトリウムイオンバッテリーが産業用モビリティやEV(電気自動車)、通信デバイスなど幅広い分野で採用されることを目指し、今後も生産を続けていくという。すでに中国をはじめ、多数のメーカーがナトリウムイオンバッテリーの生産に着手しているが、いち早く生産を開始したNatron Energyが、今後のバッテリー市場の覇権を握るかもしれない。
上司X: リチウムイオンバッテリーに代わる、新たなバッテリー「ナトリウムイオンバッテリー」の生産が始まった、という話だよ。
ブラックピット: 数年前に、そういうバッテリーが登場する、みたいなニュースを見聞きした気がしますが。
上司X: そう、実際に生産が始まったのだよ。えへん。
ブラックピット: なんで自分の手柄みたいにしてるんですか!
上司X: いや、そんなつもりではないけどね、つい興奮してしまってな。
ブラックピット: そうでしたか。
上司X: リチウムイオンバッテリーがポピュラーになってきたのは1990年代だろ? それまではニッカド電池とか鉛電池だったからさ、そこから30年近くたっての登場だ。計画とかではなく、生産開始だもの。
ブラックピット: 確かに、そりゃ興奮するのも理解できるますけど。まあ、今のところデータセンター向けということですから、われわれがナトリウムイオンバッテリーを実感するのはもう少し先になりそうですが。
上司X: そうかもしれないけどな。バッテリーの進化は、色んなデバイスの進化につながると思うんだ。スマホやタブレット、ノートPC、EV、医療機器などなど。こりゃ、今後に期待だね。
年齢:36歳(独身)
所属:某企業SE(入社6年目)
昔レーサーに憧れ、夢見ていたが断念した経歴を持つ(中学生の時にゲームセンターのレーシングゲームで全国1位を取り、なんとなく自分ならイケる気がしてしまった)。愛車は黒のスカイライン。憧れはGTR。車とF1観戦が趣味。笑いはもっぱらシュールなネタが好き。
年齢:46歳
所属:某企業システム部長(かなりのITベテラン)
中学生のときに秋葉原のBit-INN(ビットイン)で見たTK-80に魅せられITの世界に入る。以来ITひと筋。もともと車が趣味だったが、ブラックピットの影響で、つい最近F1にはまる。愛車はGTR(でも中古らしい)。人懐っこく、面倒見が良い性格。
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