ユニファイドコミュニケーションの領域において、AIは従業員同士の連携や生産性を向上させる。しかし、企業がAIから最大限の効果を得るためには、AIに伴うリスクを解消しなければならない。
AI(人工知能)はテクノロジーのトレンドであり、ビジネスと消費者の両方で利用されている。ITの意思決定者は、AIがどのように機能するかを理解しようとするよりも、AIが価値をもたらす場所やユースケースに焦点を当てる必要がある。
企業にとって、ユニファイドコミュニケーション(UC)の領域は、AIのユースケースの一つだ。UCは、生産性の向上と共同作業のための考え方だ。COVID-19の大流行から抜け出した今、UCはテレワークやハイブリッドワークもサポートするものでなければならない。
最近まで、UCはAIなしでこれらのニーズに効果的に対応してきた。しかし、AIを考慮することで、ITリーダーはオフィスだけでなくあらゆる職場環境におけるUCの次の可能性を想定し始めている。
以下では、UCにおけるAIの可能性と注意点についてまとめた。
UCにおけるAIの活用が有望な理由は2つある。一つは、パンデミックの間にUCの普及が進んだことだ。あらゆる規模の企業が何らかの形でUCを導入している。
2つ目は、エンドユーザーである従業員が、UCの活用に快適さを感じていることだ。これによって、AIを利用したアプリケーションは迅速に導入される。ITリーダーが、生産性と従業員体験の両面から、最も効果的なAIアプリケーションを知るのに時間はかからない。
AIが急速に進化する中、新しいビジネスコミュニケーションツールも続々と登場している。ITリーダーは、これをイノベーションの連続として捉える必要がある。UCは常に進行しており、AIは進化における1つのプロセスにすぎない。自動の文字起こしやリアルタイム翻訳、ノイズ抑制、会議の要約、生体認証などのアプリケーションをはじめとするAIイノベーションの第一波は、今やプロバイダーにとって当たり前のものとなっている。
これらのアプリケーションは共同作業に価値を提供し続けているが、ITリーダーは、AIによる次の波を想定しておかなければならない。初期のAIアプリケーションは、スケジュール管理やメモの作成といったタスクの自動化が中心だった。これは、自動化がビジネスケースの構築のための主要な原動力だったことを物語っている。
AIは現在、単にタスクを自動化するだけでなく、複数のタスクから成るワークフローも自動化する。自動の文字起こしだけでも便利だが、AIが文字起こしの内容に基づいて仮想アシスタントを展開してフォローアップをすることで、さらにタスクは改善される。新しい会議をスケジュールに登録したり、会議に出席しなかった人にカスタマイズされた会議の要約を提供したりもできる。
生成AIを活用することでチャットbotがコミュニケーションを代行する。これは、AIにおける最新の進化であり、直接的な対話の時間をより多く確保することにつながる。これらのチャットbotは、単に人間の作業を代わるだけでなく、最小限のトレーニングで、個人のコミュニケーションスタイルを反映した電子メールや手紙、レポートの作成を代行する。このような機能の成熟によって、バーチャルアシスタントが日常業務の多くを管理できるようになる日もそう遠くはないだろう。
新しいテクノロジーには常にリスクが伴う。当然のことながら、AIの大きな可能性の裏には、次のようなリスクと課題がある。
音声アシスタントに指示を出す場合、望ましい結果を得るためにはタスクを明確に理解する必要がある。そうでなければ、作業者は自分自身で作業をやり直さなければならず、生産性向上のためにAIを利用する目的が果たせなくなる。
UCに関連する基本的なタスクを実行するために、文脈や意図、ニュアンスも含めて、AIアプリケーションにより深いレベルで職場環境を理解させる必要がある。これは基本的な音声認識を超えたものであり、発言内容をテキスト形式で正確に把握することが目的だ。AIのアプリケーションは、人間の指示の通りに機能するため、従業員は望ましい結果を得るためにAIと対話する方法を学ぶ必要がある。
非技術的な課題として、AIアプリケーションを信頼するための学習が必要になる。さまざまなソースからもたらされる偏見を検出することがその一例だ。現代の職場の多様性を考えると、AIアプリケーションが不適切な参照や間違った仮定を使用した場合、共同作業が困難になる恐れがある。これは不快な職場環境につながり、従業員にとって困難な経験となる可能性がある
AIの最大の課題は信頼に関するものだ。特に生成AIの場合、AIが出力した情報を信頼できるかどうかが問題になる。多くの場合、情報源が明記されないため、出力が何に基づいているのか、考慮されたが使用されなかった情報は何なのか、基礎となる分析がどの程度完全なものなのかを知ることは難しい
これらの欠点は、生成AIを使ったことのある人なら誰でも知っている。正確さの問題はさておき、盗作や著作権の侵害、偽の情報源や詐欺行為など、より大きな懸念が存在する。AIを利用して共同作業をする場合は、チームの全員がこれらの課題を理解する必要がある。そうでなければ、誰かがAIを過度に信頼し、その影響はチーム内だけにとどまらない可能性がある。
AIに関連するリスクがますます注目されているため、将来の見通しはやや複雑だ。最終的には、これが規制や企業間のベストプラクティスとして、より良い予防線となるだろう。AIは私たちが責任を持って使用できる能力を上回る速さで進化してきたため、こうした注意は「善のためのAI」が優勢になることを助ける。
UCの観点では、AIの性能が向上し続けるにつれて、さらに多くのアプリケーションが登場するだろう。
テレワークがコラボレーション作業の中心となる中、UCサービスはAIを利用することで会議をより魅力的なものに変える。参加者全員がその場にいるかのように感じさせるAI駆動のビデオアプリケーションや、参加者が場所や会議空間内のどこにいても平等に映されることを保証する技術が使われるようになるだろう。
テレワークは、コラボレーション作業での多くをモバイルデバイスに依存している。5G対応スマートフォンが普及するにつれて、より多くのAIアプリケーションをサポートできるようになり、デスクトップと同等の体験が可能になる。
バーチャルリアリティー(VR)や拡張現実(AR)アプリケーションはまだ職場で普及していないが、MicrosoftやMeta、Appleなどがメタバーススタイルのワークスペースを推進している。従業員体験はデジタルネイティブにますます適応しており、今後も非常に快適なものになるだろう。
デジタルネイティブの人口が現代の労働力を象徴するようになるにつれて、AIを利用したUCは物理的および仮想的な作業環境が混在する場所になり、全員がバーチャルアシスタントを持つことになるだろう。現時点では実現されていないが、AIがUCを変え、コラボレーション作業の本質を変えつつある良い兆候と言える。
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