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船井総研HDがオフィスにZoomをフル装備したら起きたこと

船井総研ホールディングスは、2024年4月の東京本社の移転に伴い、新オフィスでZoomの製品をフル活用することに決めた。その判断に至った理由と効果について担当者が語った。

» 2024年06月05日 09時00分 公開
[土肥正弘ドキュメント工房]

 船井総研ホールディングスは、中堅・中小企業のDX推進支援事業を展開するコンサルティング企業だ。同社は、2024年4月の東京本社の移転に伴い、新オフィスでZoomの製品をフル活用することに決めた。その経緯と効果について船井総研ホールディングスの石田朝希氏(グループIT推進部兼コーポレートストレテジー部 シニアマネージャー)と船井総合研究所の神徳あや氏(DX支援本部 DXエンジニアリング部 ディレクター)が語った。

左から船井総研ホールディングス 石田朝希氏、船井総合研究所 神徳あや氏

船井総研が新オフィスでZoomのフル活用に至ったワケ

 船井総研ホールディングスでは2017年に「Zoom Webinars」を導入するなど、古くからZoomの製品を利用してきた。Zoom製品のフル活用に至った直接的なきっかけは、2019年にZoom Video Communications(ZVC)米国本社を訪問したことだ。当時、ZVC創業者のエリック・ユアン氏の講演や会話を通してZoomの哲学に深く共感したという。

 「私たちは利便性だけではなく、中小企業の経営者の考え方に理解があり、顧客にメリットがあるサービスを導入したいと考えています。ZVCの創業者から話が聞けたことが導入の転機になりました」と石田氏は語る。

新オフィスに整備されたZoom活用のための設備インフラ

 船井総研ホールディングスは約1500人の従業員が在籍する中、オフィス移転時は約1000人がZoom有料ライセンスを持っていた。さまざまな製品の中でも「Zoom Meeting」は利用率が高く1年間に20万回、Zoom Webinarによるオンラインセミナーは年間3000回以上開催していた。アクティブユーザー数は1万3700人を超えたという。

 高い利用率を背景に、新オフィスではZoomサービスのフル活用を計画した。

 2024年4月にオープンした新オフィスでは、Zoom MeetingとZoom Webinarの利用を継続するとともに、ビデオ会議システム「Zoom Rooms」を拡充し、全ての固定電話を「Zoom Phone」に移行した。

 全53室の個室ミーティングブースには、Zoom専用の高速なネットワーク回線を敷設し、防音にも留意した。ソファ席を設けて長時間のミーティングもストレスなく過ごせるよう工夫したという。

図1 53室配置された専用ネットワーク利用の個別ミーティングブース(出典:船井総研ホールディングスの講演資料)

 会議室には、Zoom Roomsおよび「Zoom Whiteboard」を完備した。オフィスとリモートの参加者が同じホワイトボードを見て議論できるようになり、会議の質が向上したという。

図2 インタラクティブボードを完備した会議室(出典:船井総研ホールディングスの講演資料)

 その他、「Zoom Workspace」の機能を利用して、会議室およびミーティングブースの予約管理やチェックイン・チェックアウトの管理、施設稼働状況の分析をできるようにした。

 「5分、10分のわずかな空き時間も有効に利用できます。稼働率の高いゾーンと低いゾーンも分かるので、最適なゾーン配置に変更できます」(石田氏)

図3 会議室・ミーティングルームを一元管理し設備稼働率を向上させる管理機能

 遠隔地との全てのコミュニケーション手段がZoomになり、ZVCからは新オフィスについて「Powered by Zoom」という呼び方のお墨付きを得たという。

 「全スペースの稼働率が上がったことで、顧客とのコミュニケーション頻度が上がり、きめ細かなフォローが可能になりました。採用イベントやセミナー、研究会などのイベントも円滑にできるようになりました。Zoomの製品が従業員の行動を変え、ビジネスモデルにもZoomが浸透しました」と石田氏は評価する。

図4 各種イベントにもZoomサービスをフル活用

Zoom導入で期待した効果は得られたのか?

 同社がこれほどまでにZoomを徹底的に活用することに決めた理由は3つある。

 1つ目は、営業活動やコンサルティングの頻度や質が向上することだ。「お客さまとの接点が増え、高頻度にフォローできるようになったことで、より確実な成果を得られました」と石田氏は話す。

 2つ目は、従業員の働き方が変わることだ。遠隔の顧客に対して、出張コンサルティングは高額になるところを、Zoomによるリモート支援で料金を低額にする商品もできた。従業員の負担軽減と顧客の支援強化を両立させた新メニューが生まれたという。テレワーク中の従業員が常時Zoomで質問できる環境を整えたことで、離職率も低下した。

 3つ目は、中堅中小企業向けのDXコンサルティングが強化できることだ。石田氏は「デジタルツールを使いこなせないと感じる中堅・中小企業もあります。私達自身がZoomを使いこなして業績を上げることで“お手本”になることができます」と話す。

その先の業務改善に向けたZoom機能の活用

 船井総研ホールディングスは現在、Zoomの機能を使ってさらなる業務改善を進めている。

 その一つがAI(人工知能)による「文字起こし」機能だ。コンサルタントの支援議事録やインタビュー内容の動画字幕、集客用の紙媒体およびWeb媒体用のテキストの作成に活用できるという。

 「若手コンサルタントの修行となっていた文字起こし作業をAIで代替できます。当社は2024年からAIの利用を全面的に解禁しており、『Chat-GPT』を利用した『Fun-AIセンパイ』という社内チャットも開発しました。これらを組み合わせることで、精度の高さが求められる社外向けの文書も作成できます」(石田氏)

 スケジュール連携機能やビデオと画面の両方を録画できる「Zoom Clip」機能も便利だという。

 「『Googleカレンダー』とZoomのスケジュールを連携させることで、社内外のメンバーのミーティングの設定を効率化できます。ショート動画を作成するZoom Clip機能を使ってZoomや各種サービスの使い方を動画化して公開することも可能です」(石田氏)

 同社では、ノーコード/ローコード開発ツールの「kintone」とCRMツール「ZohoCRM」の開発、導入支援サービスを提供しており、ZohoCRMからワンクリックでZoom Phoneでの通話が可能になる「Click to Call」機能を2日間で開発した。顧客のコール業務のミス低減と効率化につながるという。

図5 Zoom PhoneとCRMの連携で業務の問題点を解消する仕組みを検討中

 今後、Zoom Phoneでの発着信ログや通話内容(音声データと文字起こし結果、あるいは要約)をCRMツールに蓄積することを計画している。

 船井総合研究所の神徳あや氏は「セールス部門は、『Microsoft Excel』や『Googleスプレッドシート』を基に顧客からの電話内容を把握する必要がありましたが、音声での確認が可能になります。カスタマーサポート部門では、CRMに手入力する手間が省け、創出した時間をコア業務に振り向けられます」と語った。

本稿は、ZVC JAPAN(Zoom)が2024年4月12日に開催した「Zoom Experience Day Spring」のセッションの内容を編集部で再構成した。

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