ある調査で、「技術の習熟度における格差拡大」によってIT部門の業務量が増加していることが判明した。格差を縮小するための方策とは何か。
オンライン教育プラットフォームを提供するPluralsightが経営幹部とITプロフェッショナルを対象として調査を実施し、1400人から回答を得た。2024年に発表された同調査のレポートによると、企業はサイバーセキュリティやクラウド、ソフトウェア開発に関するスキルの習熟レベルの格差(スキルギャップ)に依然として悩まされているという(注1)。
同調査によると、深刻なギャップがIT部門を悩ませているという。調査対象となった技術者のほぼ全員が「スキルギャップのために仕事量が増えた」と回答しており、4分の3以上が「同じ理由でプロジェクトを断念した」と回答した。
この課題を解決するためには、従業員のスキルアップを図るのも一つだ。同調査で明らかになった、従業員のスキルアップを阻む「4つのハードル」とは何か。
それはリーダーからの支援不足やトレーニングの時間の確保が困難なこと、従業員の意欲の低下、財政的な制約などだ。
技術領域におけるスキルギャップがITの課題をさらに悪化させている。
同調査によると、2021年から現在に至るまで最も大きなスキルギャップに悩まされているのが、サイバーセキュリティとクラウドの領域だ。両領域におけるギャップを埋めるために、企業は人材採用とトレーニング戦略を刷新している。
現在、スキルギャップに悩まされている3つ目の領域としてソフトウェア開発が挙がっている。非営利団体であるCompTIAが米国労働省労働統計局(BLS)のデータを分析した結果、2024年4月に企業が5600人以上の開発者を雇用したことで、ハイテク業界における雇用が増加した。
Pluralsightによると、時間とリソースに制約のある企業にとって、スキルアップは魅力的な戦略だ。米国では、IT部門のポジションを埋めるのに平均10週間、技術系人材を雇用するのに平均約2万3000ドルかかっている。一方で、既存のIT部門の従業員のスキルアップにかかる平均的なコストは約1万5000ドルだ。
あらゆる業界のビジネスリーダーにとって、ITインフラのモダナイゼーションと改善は最優先事項だ。技術部門のエクゼクティブも、生成AIなどの新しい技術を取り入れなければならないプレッシャーを感じているが(注2)、そのために新しい技術に対応できるようにはITインフラを整備することが必要だ。
情報サービス事業を営むInfosysが2024年3月に発表した報告書によると、経営幹部の4分の3近くが、「自社に取り入れる能力を上回る形で技術革新が進んでいる」と考えている(注3)。
Pluralsightのレポートは、「技術領域においてトレンドとなっているスキルを優先させる前に、企業が堅牢(けんろう)なセキュリティやクラウド、ソフトウェア開発のスキルがあることを確認してほしい。技術者と幹部は、これらのスキルがビジネスの運営にとって重要であると認識しており、他の全ての技術を支える基盤であると考えている」と指摘する
近年、AIは技術領域における話題の中心になっている。しかし、同レポートによると、AIとML(機械学習)の領域における人材不足は、幹部や技術者の間では優先度が低い問題と見なされているという。Pluralsightはその理由について「社内でAIスキルについて分析されていないこと、AIがまだ優先事項となっていない一方で他領域におけるスキルギャップが残っていること」を挙げる。
同レポートが示すのは悲観的な材料ばかりではない。スキルアップに継続的に投資している企業は、解決の可能性を見いだしつつある。Pluralsightによると、回答者の約4分の3は「2023年から企業のITに関連するスキルギャップが改善している」と答えているという。
出典:Tech skills gaps put pressure on existing IT staff(CIO Dive)
注1:2024 Technical Skills Report(PLURALSIGHT)
注2:IT leaders are stressed ― here’s why(CIO Dive)
注3:Skills gap threatens new tech implementation, executives say(CIO Dive)
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