AIアシスタント機能を「Google Workspace」に組み込んだ「Gemini for Google Workspace」は、「Copilot for Microsoft 365」を追いかけて次々にAI機能を実装している。現時点で何ができるのか。
AIアシスタント機能を「Google Workspace」に組み込んだ「Gemini for Google Workspace」が次々にAI機能を実装している。2024年5月16日には、その中核となる生成AIモデル「Gemini」を「Gemini 1.5 Pro」にアップデートした。同サービスは、「ChatGPT」をベースにした「Copilot for Microsoft 365」と同様に、ワークスペースのサイドパネルで生成AI機能を利用できることが特徴だが、現時点で何ができるのか。
Google Workspaceに生成AIモデル「Gemini」(ジェミニ)を統合したGemini for Google Workspaceは、2024年1月に提供が始まった。ワークスペースでの生成AIの実装や日本語対応についてはMicrosoftを追いかけている状況だが、幾つかの優位性もある。
Googleは、最新の生成AIモデル「Gemini 1.5 Pro」をWorkspaceの生産性およびコラボレーションスイートに統合した。まずは「Google ドキュメント」と「Gmail」で実装される。実際に、2024年5月14日(現地時間)に行われたGoogle I/O開発者会議において、役員は「Gemini 1.5の機能を2024年中に展開する」と述べた。これは「Gemini 1.5」を使った一連の製品やサービスの機能強化の一つだという。
Workspaceにおいて、GoogleははじめにGmailとDocsにAIを展開し、その後一年をかけて「Google スライド」「Googe スプレッドシート」「Google Meet」「Google Chat」に展開する予定だ。2025年には、GoogleはWorkspace内での協力プロジェクトの監視や追跡、要約など特定のタスクを実行するAIを搭載したアシスタント「Teammate」を導入する計画もある。
調査企業であるMetrigyのアーウィン・レイザー氏(アナリスト)は「生産性とコラボレーションスイートを提供する全ての企業が、類似のAI機能を製品に組み込んでいる。これにより、組織は多くの選択肢を持つことになる。しかし、組織が求めているのは、これらの高価なサービスの投資対効果を客観的に測定することだ」と述べた。
Googleは、Gemini Businessでは1ユーザー当たり月額20ドル、Enterpriseプランでは1ユーザー当たり月額30ドルを請求する。日本のWebサイトでは、前者が2260円、後者が3400円(いずれも税込み)と記載されている。一方Microsoftは、Copilot for Microsoft 365において1ユーザー当たり月額30ドルを課していおり、日本では1ユーザーあたり4497円で提供されている(2024年7月時点)。価格を比較すると、Gemini for Google Workspaceの方が安く利用できる。また、Google Workspaceはブラウザでの利用を基本としており、データがクラウドに集約されているため、生成AIが参照するデータがあらかじめまとまっていることがメリットだとされている。いずれにせよ、こうした料金が設定されている以上、数百人ないし数千人の従業員を抱える企業は、毎月多額の請求を受けることになるだろう。
レイザー氏によると、一部の企業では、AIが従業員1人当たり月1時間を節約できれば、その技術に関する投資回収は十分に可能だという。一方、企業の中には、これ以上のサービスを求めているものもある。
「一部の企業は、収益やコスト削減など目に見える利益がなければ、全員に展開する意味がないと述べている」(レイザー氏)
GmailとGoogle ドキュメントに展開されるGeminiは、営業から人事まで幅広い部門の従業員が、同僚や顧客、パートナーに電子メールや文書を送るのを支援する。ユーザーは、「Help me write」のボタンをクリックし、フィールドにトピックを入力すると、電子メールや文書の下書きを迅速に得られる。フォーマルなトーンかインフォーマルなトーンかを選択し、下書きを他の人と共有して意見を求めることもできる。
その他の機能としては、複数の電子メールを要約したり、PDF文書を分析したりできる。
Googleは、スマートフォン版のGoogle ドキュメントとGmailにもAI機能を追加する予定だ。例えば、ユーザーは、最近の会議中にメモしたいくつかの要点から要約を作成できるようになる。
企業向けに、Googleは作成されたコンテンツが組織のポリシーに従うようにするための管理コントロールを提供する予定だ。
公式のWebサイトでは、以下で説明するGoogleドキュメントやGoogle スプレッドシート、Google スライド、Google ドライブなどでの活用デモが公開されている。日本語版においては「Google Meet」での文字お越しなど、一部の提供はあるものの、Google ドキュメントやGmailといった各アプリケーションのサイドパネルで生成AIを呼び出す機能は、現時点で英語版のみの対応になる。
2024年の後半にGoogleは、プレゼンテーションアプリケーションであるGoogle スライドに、画像や音声、動画を自動生成するオプションを追加する予定だ。表計算アプリケーションのGoogle スプレッドシートでは、生データを使って数式生成や文脈に応じた分類ができる。
ビデオ会議サービスであるMeetで予定されているAI機能には、追加の背景を生成したり、メモをキャプチャしたり、会議のハイライトを取得したりする機能が含まれる。チャットでは、オプションとしてAIが生成したワークフローを利用できる。
GoogleのAIリリースは、OpenAIが企業向けの大規模言語(LLM)のアップデート版である「GPT-4o」を発表した翌日に行われた。この最新版は、OpenAIのデスクトップアプリ内やアプリケーションに組み込んだ場合に、音声、ビデオ、テキストをより高速に配信できる。
企業向けソフトウェアにおけるAI機能の普及により、一部の企業は、高価な機能を活用するための従業員のトレーニングに苦労している。
「ユーザーは圧倒されている。これらの技術の進歩は非常に早い。誰が学ぶために必要な時間を確保できるというのだろうか」(レイザー氏)
レイザー氏によると、AIの活用に関する顧客への教育を、Googleはパートナーに任せているという。同氏は「Googleは、技術を投入して最善の結果を待っているのではなく、積極的に推進している」と述べた。
Metrigyの調査によると、今日のGoogle Workspaceのユーザーの多くは、学校や非営利団体、中小企業である。
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