IT部門にとって厄介な問題の一つが「Windows 10」サポート終了だ。Microsoftの延長サポートを有償で利用する手もあるが、価格が高額なことが難点だ。Windows 10を安価に継続して利用できる方法があるらしい。
ご存じの通り、「Windows 10」は2025年10月14日にサポート終了を迎える。「Windows 11」のリリースから3年が過ぎようとしているが、そのシェアは伸び悩んでいる。調査会社のStatcounterによれば、2024年6月時点で全Windowsユーザーに占めるWindows 11の割合は29.71%にとどまっているという。
企業がWindows 10サポート終了への対応に頭を抱えている中で、Windows 10を安全に使い続けられる裏技があると話題になっている。どうやら、Microsoftが有償で提供する延長サポート以外の手段らしい。一体、どんな方法なのか?
Windows 10からWindows 11への移行が進まない理由の一つに、Windows 11のインストール要件が高いことが挙げられる。利用しているPCが要件を満たしていないために、Windows 11にアップグレードできないというケースは珍しくない。そのままWindows 10を使い続けようと考えるユーザーも一定数いることが考えられる。
セキュリティ対策企業のACROS Securityは、同社のブログ記事に、2025年10月にWindows 10のサポートが終了することで脆弱(ぜいじゃく)性への対策がおろそかになることが懸念されると記した。
これまでMicrosoftは、Windows 10にセキュリティの脆弱性が発見されると迅速にパッチを提供して、セキュリティ被害の拡大を防いできた。2024年7月9日に公開された「Windows Update」には月例のセキュリティ更新プログラムが含まれ、CVE(共通脆弱性識別子)で管理された139件の脆弱性に対応した。深刻度が最も高い「緊急」とされた脆弱性も5件含まれていた。いずれも外部からリモートでプログラムを実行されてしまうという危険な脆弱性だ。OSのサポートが終了すると、こうした恩恵も受けられなくなる。
Microsoftはサポート終了後もWindows 10を使い続けたいと考えるユーザーに向けて「拡張セキュリティ更新プログラム」(Extended Security Update:ESU)を提供する。Windows 10のサポート終了後もセキュリティ更新プログラムを配信するものだが、提供価格が高額なことが難点だ。
ESUプログラムは最大3年間利用できるのだが、利用料が1年経過するごとに倍額になる。企業ユーザーの利用料は1年目が61ドル、2年目には122ドル、3年目には244ドルになる。つまり、3年間利用すると427ドルもの料金を支払うことになる。しかも、この料金は1デバイス当たりの設定だ。例えば、1万台のPCに3年間のESUプログラムを適用させたいとしたら、427ドル×1万台のライセンス料が必要となる。
そこで、Windows 10のサポート切れに頭を痛めているユーザーのために、ACROS Securityは「0patch」(ゼロパッチ)の提供を開始する。0patchはMicrosoftのESUプログラムよりも低価格で、サポート終了後に少なくとも5年間にわたってセキュリティパッチ(同社の説明では「マイクロパッチ」とされている)が受けられる。なお、ACROS Securityはこれまでも「Windows 7」や「Windows Server 2008」「Windows Server 2012」のサポート終了後にセキュリティパッチを提供してきた実績があるとブログ記事に書かれている。
また0patchは「0dayパッチ」(すでに悪用されている可能性がある既知の脆弱性に対するパッチ)や「Wontfixパッチ」(何らかの理由で修正されない脆弱性に対するパッチ)も配信し、さらに「Javaランタイム」や「Adobe Reader」「Foxit Reader」「7-Zip」「WinRAR」「Zoom for Windows」「Dropboxアプリ」「NitroPDF」といったメジャーなサードパーティー製アプリのセキュリティパッチも提供するという。
気になる0patchのライセンス料だが、中小企業および個人ユーザー向けの「0patch PRO」は年額24.95ユーロ(税別、1台当たり)、中〜大規模企業向けの「0patch Enterprise」は年額34.95ユーロ(同)だ。これはMicrosoftのESUプログラムと比較するとかなり安価だ。
ブログ記事では、Windows 10を使い続けたい企業や個人ユーザーへ0patchを推奨するだけでなく、Windows 10 PCの中古販売を営む企業に対しても0patchの導入を勧めている。冒頭で触れたようにまだまだ使えるWindows 10 PCも少なくないはずだ。公式のセキュリティパッチが提供されないだけで利用できなくなるというのは、実にもったいない。
Windows 10のサポート終了日を迎えたら、企業はどう動くだろうか。そして、0patchはそれにどれほど貢献するだろうか。
上司X: あと1年ちょいでサポートが切れるWindows 10に、セキュリティパッチを提供するサービスが登場した、という話だよ。
ブラックピット: 0patchですか。期待したいところですね。
上司X: ESUプログラムはちょっとお高いからな。価格が倍々になるのはなかなかツラい……。
ブラックピット: そこまで支払ってサポート延長って現実的なんでしょうか?
上司X: 十分使えるWindows 10 PCだったらESUプログラムを使うって選択肢もあるかもしれないけれど、3年で427ドル、今のドル円レートだと7万円近くを古いPCに支払う価値はあるのかという熟考が必要だろうな。
ブラックピット: その価格だと買い換えも視野に入りますものね。
上司X: そこで0patchが登場したわけだ。個人なら3年使っても75ユーロ、1万3000円ぐらいか。これはかなり現実的な価格ではないか。
ブラックピット: 確かに。僕もWindows 11にアップグレードはできないけれど、まだまだ使えそうなWindows 10 PCを持ってますからね。興味はありますよ。
上司X: ただ、本当にセキュリティが確保されるのかどうか、真の救世主であるかどうかを見極める必要があるだろうがな。ともかく、Windows 10のサポート切れのタイミングではいろいろとすったもんだありそうだ。俺には待つことしかできないけどな!
年齢:36歳(独身)
所属:某企業SE(入社6年目)
昔レーサーに憧れ、夢見ていたが断念した経歴を持つ(中学生の時にゲームセンターのレーシングゲームで全国1位を取り、なんとなく自分ならイケる気がしてしまった)。愛車は黒のスカイライン。憧れはGTR。車とF1観戦が趣味。笑いはもっぱらシュールなネタが好き。
年齢:46歳
所属:某企業システム部長(かなりのITベテラン)
中学生のときに秋葉原のBit-INN(ビットイン)で見たTK-80に魅せられITの世界に入る。以来ITひと筋。もともと車が趣味だったが、ブラックピットの影響で、つい最近F1にはまる。愛車はGTR(でも中古らしい)。人懐っこく、面倒見が良い性格。
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