東京大学が、オンライン教育の急速な普及に対応するためのサポート体制を「Zoom Contact Center」で構築した。これにより、チャットやメール、Zoomを通じた問い合わせに一元的に対応できるようになった。
東京大学はコロナ禍以降、「Zoom ミーティング」(以下、Zoom)を使ったオンライン授業や会議を導入するなど、ITによる教育、研究活動の支援に注力してきた。大学の情報システムを分かりやすく提供するための「uteleconプロジェクト」も立ち上げ、学生と職員が組織の垣根を越えて協力して運営している。
同プロジェクトの一環であるサポート窓口では、問い合わせチャネルがチャットやZoom、電子メールなどに分かれていたことで、スタッフの対応や管理が煩雑になっていた。これに対し、一人の学生が中心となって複数チャネルの問い合わせを一元化する環境を整えたという。東京大学の玉造潤史氏(情報システム本部 副本部長 准教授 uteleconプロジェクト担当)と德永紗英氏(uteleconプロジェクト 学生スタッフ 大学院総合文化研究科 修士2年)がその経緯を解説した。
uteleconプロジェクトでは、2024年5月から学生や職員向けにポータルサイトも立ち上げ、情報システムの準備手順や各種システムの利用方法などを発信している。説明会や情報交換会、各種サポートの案内なども掲載し「ワンストップでの情報提供」を実現したという。
uteleconプロジェクトのサポート窓口では、回答をたらい回しにせず、早さよりも少ない回数で正解を提供することを目指していると玉造氏は話す。
「『サインインできない』という問い合わせがあった場合、その原因はさまざまです。ユーザーの意図を解きほぐし、的確な答えを出すのがわれわれのサポートです。これを本学の経営方針である『UTokyo Compass』に沿って、その最たる例として活動しています」(玉造氏)
uteleconのサポート窓口は、チャットやZoom、電子メールで問い合わせを受け付けており、学生と職員がリモートで「Slack」や「Zendesk」などを駆使して対応に当たってきた。
チャネルを複数用意したことによる課題もあった。スタッフがチャットやZoom、電子メールのそれぞれをチェックすることが負荷になっていた他、対応記録がバラバラに蓄積されていたため、過去の事例の参照も煩雑だったという。スタッフに案件を割り振る仕組みもなく、気付いたスタッフが自主的に対応していたためサポートの品質やスピードに偏りがあった。
上述の課題を解決するために導入したのが、Zoomのコンタクトセンター向けソリューション「Zoom Contact Center」だ。導入は大学院生としてuteleconプロジェクトに参画している德永氏がほぼ一人で担当し、検討から導入、運用開始までを約半年で完了させた。
Zoom Contact Centerを使って、チャットとZoomでの問い合わせを統合した。電子メールの案件管理に使ってきたZendeskもZoomのコネクターで連携させたことで、ZendeskにZoom Contact Centerの画面を表示できるようになった。「1つの画面で、チャットやZoom、電子メールからの問い合わせを管理できるようになりました。記録も集約され、案件の割り振りの仕組みも構築できました」(玉造氏)
Zoom Contact Centerの導入成果について德永氏はこう評価する。
「Zoom Contact Centerを導入したことで、サポート窓口の学生スタッフは完全フルリモートで働けています。顔を合わせる機会はほとんどなくなりましたが、SlackやZoomミーティングで知見を共有してチームとして働いています」(德永氏)
uteleconプロジェクトの特徴は、学生と教職員、離れた場所にいる異なる部署や立場の人たちが知恵を寄せ合いながら対応していることにある。uteleconプロジェクトでの協働は、コミュニケーションが支えになっていると德永氏は語る。
「より良いコミュニケーションを実現しているのは、Zoomをはじめとする情報システムです。私たちはZoomの理念や、音声や映像がきれいに伝わる土台となる技術の部分にとても信頼があります」(德永氏)
東京大学は月に一度、Zoomとの定例会などを通して機能に関する要望を出すといった意見交換をしている。このようなZoomのサポート体制を東京大学は高く評価している。
Zoomがより良い製品の在り方や、より良いコミュニケーションの在り方のために伴走してくれたことが、Zoom Contact Centerの導入の決め手になったと德永氏は語る。
「われわれは、コロナ禍によって非常に貴重な経験をしました。大学にいて強く感じるのは、これからの教育環境や学び方をどのように進化させるかという点です。オンラインやハイブリッドなどを駆使し、より貪欲に意味のある学びにつながる環境づくりを実現できればと考えています」(玉造氏)
本記事は、ZVC JAPAN株式会社が2024年7月18日に開催したイベント「Zoom Experience Day Summer」の内容を編集部で再構成した。
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