不要な定型業務や無駄に時間を取られている作業など、RPAを活用する前に自動化対象業務を適切に洗い出し、精査する必要がある。業務課題をどこまで理解しているかがRPAの導入成果創出の鍵を握る。
定型業務効率化の手法として企業や自治体などで採用されているRPA(Robotic Process Automation)。RPAを効果的に活用するにはまず目標や目的を明確にし、現行業務のどのプロセスに課題があるのかを見定めた上で自動化対象業務を洗い出す必要がある。この業務の棚卸しのプロセスが成果創出の鍵を握ると言ってもいいだろう。
RPAによる業務自動化を推進している企業、検討している企業はどのような手段で現場の課題を可視化しているのだろうか。連載2回目の本稿では「自動化対象業務の洗い出し方」に焦点を当て、キーマンズネットが実施した調査の結果(「業務自動化に関するアンケート調査 2024」、期間:2024年8月6〜30日、有効回答数:359件)を紹介する。
RPA活用の課題としてよく挙がるのが、活用が特定の部署、部門に限定され、組織的な活用に広がらないといった苦悩だ。対象業務が特定の部門や人に閉じたタスクであることが原因の一つだと考えられるが、現状はどうだろうか。
まず「どのようなタスクを自動化の対象としているのか」と尋ねたところ、「複数のアプリケーションを利用する個人タスク」(48.3%)、「1つのアプリケーションで完結する個人タスク」(45.5%)の順で割合が高い。一見すると個人タスクに寄っていると思われるが、「複数のアプリケーションを利用するチームタスク」(44.1%)、「複数のアプリケーションを利用する部門横断のタスク」(27.1%)も全体的に見ると極端に割合が低いわけではない。
次に、本稿の主題である自動化対象業務の洗い出し方だ。そもそも業務課題をどこまで理解し、可視化できているのか。また、どのような方法で対象業務を洗い出し、ツールは何を使っているかなど詳細を尋ねた。
冒頭でも触れた通り業務自動化に当たってはまず対象業務を洗い出す必要があり、それには現状の業務プロセスを可視化し、課題を見定める必要がある。
勤務先では業務課題の可視化に取り組んでいるかと尋ねたところ、「既に取り組んでいる」が最も割合が高く25.9%。一方で「コストが原因で取り組むのが難しい」(10.9%)、「スキル不足が原因で取り組むのが難しい」(20.9%)、「取り組む予定はない」(19.2%)となり、合計すると「取り組まない」「(何らかの原因で)取り組めない」とした割合は51.0%を占めた。
現場の課題を可視化して自動化シナリオに落とし込むには設計スキルを持つ人材が必要だが、そもそも対応可能な人材を確保できていないために業務課題の可視化が進んでいない現状が見える。
次に、可視化した結果を基にどうやって自動化対象業務を決めているかだ。
自動化対象業務をどのように決定しているか(しようと検討しているか)と尋ねたところ、「現場の従業員にヒアリング」の割合が突出して高く64.2%、「プロセスマイニングツールを利用」「自動化ツールに付属のプロセスマイニングツールを利用」とした割合は合計で15.0%にすぎない。
自動化範囲が限定的であれば現場ヒアリングによる課題把握も無理ではないが、業務の自動化が軌道に乗り組織的な自動化へ広げる場合、いつかは限界が訪れる。マンパワーに頼ったヒアリング型では課題を把握できる範囲が限られるため、業務の自動化がスケールしないと悩む企業はこうした点に課題がある可能性がある。
プロセスマイニングツールの利用割合が低い理由としてコストが考えられるが、業務自動化に充てる予算を尋ねた項目では「100万円以下」が最多であり、次いで「101〜500万円」であった(第1回参照)。全体的に見ると業務自動化に充てる予算が極端に少ないとは言えない。必ずしも予算不足がプロセスマイニングツールを利用しない理由とは限らない。
プロセスマイニングツールは社内の業務システムから作業ログを抽出し無駄や改善点を掘り起こすのに有用なツールではあるが、イベントログの見方やデータの収集、分析にはスキルが求められる。これも同じくスキル不足が一つのハードルとして考えられそうだ。
なお、業務課題の可視化の手段にプロセスマイニングツールを利用しているとした回答者に対してどのツールを利用しているかと尋ねたところ、「SAP Signavio Process Intelligence」(27.3%)、「UiPath Process Mining」「Splunk Business Flow」(同率、21.2%)、「ServiceNow Process Mining」(18.2%)、「Celonis Intelligent Business Cloud」(12.1%)の順となった。
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