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SnowflakeやAWSでもない、一番ニーズが高いデータ分析基盤は?データウェアハウス(DWH)の導入状況に関するアンケート(2024年)/前半

キーマンズネットは「DWHの導入状況」に関するアンケートを実施した。前編となる本稿では企業におけるデータ活用の推進状況とDWHの利用実態を紹介する。データ活用は進んでいるものの、基盤が未整備というちぐはぐな状況が発生している。

» 2024年11月21日 09時45分 公開
[キーマンズネット]

 データ活用に取り組む企業が増えている中で、重要性を増しているのが土台となるデータウェアハウス(DWH)だ。アイ・ティ・アールが2023年2月に発刊した「ITR Market View:DBMS/BI市場2023」によると、DWH用DBMS市場の2021年度の売上金額は228億7000万円と前年度比で30.7%増加した。CAGR(2021〜2026年度)を見ると、パッケージ市場はマイナス4.3%と市場が縮小するのに対してSaaS市場は26.2%と高く、2026年度には700億円規模に迫ると予測されている。

 キーマンズネットでは「DWHの導入状況」に関するアンケート(実施期間:2024年10月31日〜11月15日、回答件数:122件)を実施した。前編となる本稿では、企業におけるデータ活用の推進状況とDWHの利用実態を紹介する。

本稿で紹介する調査項目

  • 勤務先におけるデータ活用の取り組み状況と扱っているデータの種類
  • データウェアハウスの構築状況
  • 利用しているデータウェアハウス、ニーズが高いのはこの2サービス
  • 運用形態はクラウドか、それとも今もオンプレか?
  • データウェアハウスの構築はSIer任せか、自力か

「データ活用したいけど、分析基盤は未整備」ちぐはぐな現状

 まず、勤務先におけるデータ活用状況を聞いたところ「データ活用を進めている」(50.0%)が最多で、「データ活用の準備段階」(18.9%)、「データ活用に関心はあるが、取り組む計画はない」(17.2%)と続いた(図1-1)。

photo 図1-1:勤務先におけるデータの活用状況

 この結果を従業員規模別に見ると、5001人以上の企業では71.4%がデータ活用を「進めている」とした一方で、100人以下の中小企業では34.4%となり、約2倍の開きが見られた。傾向として、従業員数501人以上の企業では「データ活用に取り組んでいる」とした割合が半数を超えた。ただし、100人以下の中小企業においても「データ活用の準備段階」(28.1%)が「データ活用に関心がなく、取り組む計画はない」(21.9%)を上回り、今後取り組みが進むものと思われる。

 次にデータ活用で取り扱っているデータの種類を聞いたところ「顧客データ」(50.0%)、「売上データ」(45.3%)、「受発注データ」(30.2%)、「在庫データ」(27.9%)が上位に挙がった(図1-2)。優先度としてはまず、新規顧客の開拓やリピート率の向上、解約率の低減といった営業及び販売戦略の精度を高める目的で活用するケースが多く、次点で受発注の効率化や在庫最適化への活用と続くようだ。

photo 図1-2:社内で取り扱っているデータの種類

 この傾向はデータ活用の準備段階の企業に絞っても同様だった。一部違いが見られたのは「給与データ」や「人事データ」の活用意欲がデータ活用を進めている企業と比べて高い傾向にあったことだ。人口の5人に1人が75歳以上の後期高齢者となる「2025年問題」にあるように、昨今では国内人口構造の変化による労働力不足が叫ばれており、企業における人材活用は大きな課題の1つとなっている。人事や給与データを活用することで、労務管理や人材配置の最適化はもちろん、従業員のエンゲージメント向上で離職率低下や採用力強化にも効果的と見込まれるため、今後取り組みが促進される可能性がある。

DWH「構築済み」は31.4%にとどまる

 企業によるデータ活用が進み活用分野や範囲が広がることで、新たに生じる課題として多く耳目にするのは「データ管理のための体制構築がうまく進まない」ということだ。

データの蓄積や加工、保管などのプロセスで必要とされるDWHの構築状況を聞いたところ「DWHを構築する予定はない」(41.9%)が最多で、「DWHを構築済み」(31.4%)、「DWHを構築予定、検討中」(18.6%)と続く結果となった。半数の企業が「データ活用を進めている」と回答した一方で、その基盤となるDWHの構築は遅れているのが現状だ(図2-1)。

photo 図2-1:DWHの構築状況

 DHWの運用形態は聞いたところ、回答割合が高い順に「クラウドで運用」(45.7%)、「オンプレミスで運用」(28.3%)、「オンプレミスとクラウドの双方で運用」(23.9%)と続いた(図2-2)。

photo 図2-2:利用しているDWH製品・サービス

 DHWとして利用しているサービスを尋ねた設問では「Google Cloud(BigQueryなど)」(26.1%)や「Amazon Redshift」(21.7%)、「Snowflake」(19.6%)といったクラウドデータプラットフォームに回答が集まった(図2-3)。

photo 図2-3:DWHの運用形態

 Google Cloudや「Amazon Web Services」などインフラとDWHが同一のプラットフォームで提供されているサービスは、データ連携が容易というメリットもあることが、回答割合が高い理由として考えられる。

データ活用"成功"のカギは「社内外を巻き込んだ協力体制の構築」

 データ基盤を開発する際、SIerなどの外部事業者と協力して進めるケースも多い。調査の結果「自社と外部事業者(SIerなど)の両社で対応」(43.5%)と「全て外部事業者(SIerなど)が対応」(19.6%)を合わせると6割以上が外部事業者を利用しており、「全て自社で対応」(37.0%)を上回った(図3-1)。

photo 図3-1:どのようにDWHを構築したか

 外部事業者の協力を得る理由の一つには、本来の目的である「データ活用によって実現したいこと」を見据えた際、より中長期かつ広範囲にわたる視野でデータ活用基盤の構築要件を検討しておきたい、というニーズが大きいという点が挙げられる。顧客データや売上データを活用することで新規顧客拡大を目指す場合、より多くの現場担当者にデータ基盤を利用してもらう必要があり、いかにユーザーライクな運用にしておけるか、そして、目的に合わせたデータの加工や整理、取り出し方に工夫が必要になるだろう。

 また、現場利用が増えることによる管理コストも見越しておく必要がある。こうした取り組みで成果が認められれば、受発注や在庫管理、人事分野への展開も検討されるだろう。このような将来性も視野に入れ、幅広いデータをDWHに接続できる手段を用意しておくためには、外部事業者の技術やノウハウが必要になるケースが多いのだろう。

 当然、自社体制の整備も必要だ。データ活用の目的はもちろん、実現のためにどのようにデータを取り扱うのか。データを扱う専門チームや責任者(CDO:Chief Data Officer)を設置する企業も増えてきた。調査では「専門チームがある」(14.0%)のは1割程度だったが、内訳をみるとデータ活用への取り組みが活発な大企業帯では3割を超えており、今後も設置率は高まると予測される(図3-2)。データ分析の主管は「専門チームはない(事業部門の従業員が対応)」(40.7%)と「専門チームはない(IT部門が兼任)」(33.7%)が二分しているが、取り組みを推進するためには、主にデータを蓄積、加工するIT部門と、データを活用する事業部門の両視点を持つ必要があり、データ活用の全体最適を実現するためにはどちらの主管でもない一段上のレイヤーに専門チームを設置したほうが良い結果が生まれるだろう。

photo 図3-2:データ分析専門チームの有無

 以上、前編では企業におけるデータ活用の推進状況とDWHの利用実態を紹介した。後編では、主にDWH構築が促進されない理由や背景について調査結果から現状課題を考察する。

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