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複数の電話システムがあることで起こる不都合とは?

社内で複数の電話システムを使用している場合、緊急通報ダイヤルの管理に課題が発生する恐れがある。これらの課題解決のために、通話ルーティングや位置情報管理を効率化するサードパーティー製プラットフォームを活用する選択肢がある。

» 2025年03月14日 08時00分 公開
[Irwin LazarTechTarget]

 米国において、緊急通報ダイヤル(911の通話)の管理には2つの主要な要件がある。1つ目は、企業の電話システムから911にかけられた通話を、適切な緊急通信センターまたは公共安全応答拠点に届けることだ。2つ目は、911の通話を発信した電話番号に関連付けられた正確な位置情報の確保だ。

緊急通報ダイヤルと2つの規制

 複数回線の電話システムには、Kari's LawとRAY BAUM's Actという2つの連邦規制への準拠が求められる場合がある。

 Kari's Lawは、2020年2月16日以降に販売またはリース、設置された複数回線の電話システムを対象としている。この法律は、外線に接続するために「8」や「9」などのプレフィックス(電話番号の先頭に付される特定の文字列)を必要とせずに、全ての電話が911に直接発信できるようにすることを求めている。また、911の通話が発信された際に、現場のセキュリティ担当者などの適切な関係者に通知することも義務付けている。さらに、緊急通信センターや公共安全応答拠点に送信される911の通話には、有効な折り返し番号の提供が義務付けられており、通話が中断した場合でもオペレーターが発信者に連絡できるようにする必要がある。

 2018年に制定された「Repack Airwaves Yielding Better Access for Users of Modern Services Act(RAY BAUM'S Act)」の第506条は、911に発信された通話に「派遣可能な所在地」の提供を義務付けている。連邦通信委員会(FCC)は、派遣可能な所在地を次のように定義している。911の通話とともに公共安全応答拠点に送られる位置情報であり、発信者の正確な住所に加え、アパート名や部屋番号など、発信者の居場所を正確に特定するために必要な追加情報を含むもの。

 派遣可能な所在地といえるためには、少なくとも建物の主要な入口を把握できることが求められるが、さらに詳細な位置情報が含まれることもある。

緊急通話ダイヤルの課題を克服する方法

 企業向けの電話システムを提供するベンダーの大半は、緊急通話時の位置情報を管理する機能を提供している。クラウドベースのサービスでは、発信者の位置情報に基づいて911の通話を適切な緊急通信センターや公共安全応答拠点にルーティングする機能が一般的に提供されている。一方、オンプレミス型の電話システムを使用している場合、一般的に911の通話管理は、PSTN(公衆交換電話網)の接続プロバイダーに依存することになる。そのため、電話システムが発信者の正確な位置情報を特定できない場合には、911の通話を全国規模のコールセンターに転送する機能が備えられている。

 調査企業であるMetrigyが998の組織を対象に実施したグローバル調査によると、約40%の企業が社内で複数の電話システムを運用している。このような環境では、位置情報の管理や通話ルーティングのために複数の異なるツールを運用しなければならないという課題が通信管理者に発生する。

 Metrigyが400社を対象に行った調査では、18%の企業が、管理効率化と法令順守の目的で、911の通話に関する位置情報および通話ルーティングを管理するために専用のプラットフォームを使用していることが明らかになった。IntradoやRedSkyなどのベンダーが提供するこれらのサードパーティー製プラットフォームの活用により、複数の電話システムを活用している場合であっても、911の通話時における位置情報と通話ルーティングの管理を一元化できるようになる。

 また、サードパーティー製プラットフォームは、テキストメッセージの送信やリアルタイムの位置情報の特定、フロア図およびカメラ、センサーへのアクセスなど、緊急通話の応答者に追加情報を提供する機能を備えており、次世代型の911の通話に求められる機能もサポートしている場合がある。

その他の懸念事項

 通話ルーティングと位置情報管理のみならず、企業は次の2つの課題にも直面している。

 ・有効な折り返し番号の確保。これは、コールセンターのようにエージェントに割り当てられた電話番号がないような場合に問題になる可能性がある

 ・個人用の電話または企業から支給されたモバイルデバイスから発信された911の通話の追跡。これらはモバイルサービスプロバイダーによって処理され、企業の電話システムを経由しない

 上記のような場合にも、複数の電話システムを使用していると管理の複雑さが増す。これらの課題に対応するための管理プラットフォームを提供しているのが、9Lineや911informをはじめとするベンダーだ。

 職場における安全性を確保し、法令を順守するためには、911の通話に関する適切なルーティングと発信者の位置情報の確実な管理が不可欠だ。複数の電話システムを使用していると、911の通話の管理に困難が発生する場合があるが、サードパーティー製の管理プラットフォームの活用により、管理のプロセスを効率化し、法令を順守したうえで911の通話に関するルーティングを一元的に管理できるようになる。

 編集部注:本記事は法的なアドバイスを提供するものではない。911の通話における位置情報管理や通話ルーティング管理の担当者は、組織のリスクや潜在的な責任を判断するために、適切な法律顧問に相談することを推奨する。

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