「Microsoft 365 Copilot」が進化し、業務自動化の可能性を広げている。日本マイクロソフトが開催したセミナーでは、従量課金制のエージェント機能を追加した「Copilot Chat」や、アプリ連携による効率化の最新事例が紹介された。
「Microsoft 365 Copilot」は大規模言語モデルを活用したAI搭載の業務アシスタントとして注目を集めている。そして2025年1月には、無料のチャット機能と従量課金制のエージェント機能を組み合わせたサービスとして「Microsoft 365 Copilot Chat」が登場した。「Microsoft Word」(以下、Word)や「Microsoft PowerPoint」(以下、PowerPoint、)「Microsoft
本記事では、日本マイクロソフトが2025年2月26日に開催した「What's New In Copilot - Microsoft Copilot最新情報」での中村まどか氏(モダンワークビジネス本部 GTM マネジャー)と春日井 良隆氏(モダンワークビジネス本部 GTM マネジャー)によるプレゼンテーションの内容を紹介する。
中村氏は、Microsoft 365 Copilotの特徴として、AIのための一貫性のあるユーザーインタフェース、Microsoft 365アプリへの組み込み、エージェントと拡張性を考慮したプラットフォーム、セキュリティやプライバシーへの配慮、柔軟な導入オプション、効果測定ツールの提供などを挙げた。
2025年1月に発表された「Microsoft 365 Copilot Chat」(以下、Copilot Chat)は、ビジネスユーザー向けに提供されている無料のMicrosoft 365 Copilotに従量課金制のエージェント機能を追加した新しいサービスだ。
大規模言語モデルとWebの両方を参照する安全なチャット機能、ビジネスプロセスの自動化をChatでサポートするエージェント機能、エンタープライズデータ保護(EDP)やエージェント管理などのIT管理機能を備えている。
中村氏はデモを通じて、Copilot Chatの実用性を示した。まず法人向けの2つのPCの違いをCopilot Chatに質問し、詳細な比較情報を取得。さらに「それを表形式にしてください」と指示し、整理されたレポートを即座に作成させた。
次のデモでは、同僚の出社状況を尋ねた。するとCopilot Chatは「春日井さんは通常水曜日にオフィスにいることが多い」などと回答。過去のメールのやりとりから具体的な情報を抽出して回答できることが示された。
中村氏はCopilotのエージェント機能として、特に注目される2つの機能を紹介した。
1つ目は「インタープリター」で、Teams会議中にリアルタイムで通訳をするエージェントだ。参加者は自分の選んだ言語で発言や視聴が可能で、話者の声に近い音声で同時通訳をするため、より自然なコミュニケーションが実現する。パブリックプレビューが2025年初頭にリリースされる予定だ。
2つ目は「ファシリテーター」で、Teams会議中にリアルタイムで議事録を作成し、参加者全員がその場で編集、共有できる機能だ。会議終了後はワンクリックで内容が整理され、次のアクションにつながるタスクが自動提案される。
中村氏は、「Copilot」とエージェントの違いについて次のように説明した。
「Copilotはユーザー個人の業務効率を向上させるアシスタントとして機能するのに対し、エージェントはビジネスプロセスに組み込まれ、特定のタスクやワークフローを自動化する役割を持ちます。組織にはさまざまな業務プロセスが存在しますが、Copilotエージェントはそれぞれの独自プロセスに適応させて構築できます」
エージェントを利用するための最も簡単な方法は、Microsoftが構築したテンプレート(インタープリターやファシリテーターなど)を使用することだ。もちろん、独自にエージェントを開発したり、サードパーティー製エージェントを導入したりすることも可能だ。
エージェントの開発には、ユーザーのスキルレベルに応じた複数の方法が用意されている。エンドユーザー向けにはノーコードで作成できる「エージェントビルダー」がある。より高度なカスタマイズが必要な場合は、少ないコードで開発可能な「Copilot Studio」を活用できる。開発者向けには、「Copilot Studio」と「Azure AIサービス」を組み合わせたスクラッチ開発のオプションも用意されている。
続いて登場した春日井氏は、実際にCopilotを導入する価値について解説した。仕事の効率化を実現する「Microsoft Graph」の活用、Microsoft 365アプリへの組み込みによる操作性の維持、Copilot Studioを使ったカスタマイズ、1500以上のコネクターによるビジネスデータへの接続、セキュリティ・プライバシー・コンプライアンス機能、効果測定ツールの提供などが挙げられた。
Microsoft Graphとは、Microsoft 365内の情報にアクセスできる仕組みだ。このMicrosoft GraphにCopilotがアクセスして、回答や提案をする。中村氏がデモで見せた、「メールのやりとりを基に同僚の出社状況を予測する」といった高度な情報分析は、Microsoft GraphとCopilotの連携によって成り立つ。
春日井氏は、Copilotの活用において、「やりたいことや知りたいことを具体的に考え、それを伝えるためにプロンプトをどう書くか。言語化が重要」と指摘。Copilotにはプロンプトギャラリーが用意されており、よく使うプロンプトを保存もできる。プロンプト作成の負担を軽減する機能により、AIとのコミュニケーションがより円滑になると説明した。
春日井氏は続いてMicrosoft 365の各アプリでのCopilot活用事例を紹介し、それぞれの機能がどのように業務効率化に貢献するかを解説した。
Wordにおいてはプロンプトを入力するとAIが文章を作成するが、Copilotは入力途中で「ユーザーがおそらく知りたいだろう」内容を推測して候補を表示する。春日井氏はCopilotに追加指示をしながら文書を洗練させる過程を紹介した。
またWord全文書だけでなく、ユーザーが選択したテキストに対してCopilotに質問できる新機能を紹介した。選択範囲に絞った応答が返されるため、応答の精度が上がるという。将来のアップデートでは「文法、つづり、構成、トーン」などをアドバイスする文章コーチング機能も追加予定だと説明した。
Copilot in PowerPointの新機能「Narrative Builder(ナラティブビルダー)」は、説得力のあるプレゼンテーション構築を支援するもの。春日井氏はデモで、プロンプト入力によりCopilotが論理的な章立てを自動提案し、順序変更や内容追加にも柔軟に対応する様子を示した。Narrative Builderを活用することで、例えば既存の社内資料からのスライド作成もできる。
セキュリティ面では「秘密度ラベル」機能について解説。「Microsoft Purview」と連携し、生成コンテンツに「パブリック」「一般」「機密」などの情報区分が自動適用され、情報漏えいを防止できる点が企業ユーザーにとって重要なポイントとなっている。
Excel用のCopilotは、データ分析や関数の生成、タスクの自動化などをサポートする。デモでは、ある企業の店舗売上データを例に、条件に応じた値を表示する関数をCopilotが推奨する様子が示された。関数に精通していない人でも、自分がやりたいことさえわかっていれば、Copilotに質問して解決策を得られる。
新機能としてはデータクリーニング機能が紹介された。膨大なデータ内に、半角と全角が混じっていたり余計なスペースが空いていたりすることがある。Copilotはそれらを自動検出し、クリーニングの提案をする。また、プログラミング言語PythonとCopilotを組み合わせることで、より高度なデータ分析が可能だ。
Outlookでは、メールの自動整理や返信の提案、スケジュール管理などの機能が提供される。新機能としては、受信トレイの優先付け、1対1面談のスケジューリングとフォーカス時間の確保、会議のアジェンダの草案作成をサポートする機能などが紹介された。
Teams向けのCopilotでは、会議の要約や言語処理機能が特に有用性が高い。春日井氏は自身の経験として、言語処理機能の効果を強調した。英語の会議内容を日本語で要約する機能により、これまで理解度が50%程度だった会議でも70〜80%まで高められるようになったという。また、画面共有コンテンツの認識、ファイルの要約、翻訳機能付きインテリジェント会議要約などの新機能が紹介された。
なおこれらのアプリ以外にも、「Microsoft Viva Engage」「Microsoft Forms」「Microsoft Loop」「Microsoft OneDrive」「Microsoft OneNote」「Microsogft Stream」など、多くのMicrosoft 365アプリやサービスでCopilotが利用可能になっている。
春日井氏は、企業がCopilotを導入する前に、業務の棚卸しとKPIの設定をすることを推奨した。また、Microsoft 365 Copilotには「Copilot Analytics」が搭載されており、組織内の利用状況を評価するためのレポート機能や、効果をより深く分析するレポート機能を利用できる。これらを活用して効果測定することで、部門ごとの利用率の違いや、効果の高い活用法を他部門に展開するといった施策も可能になる。
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