AWS(Amazon Web Services)は、毎年開催しているカンファレンス「re:Invent」において、Amazon Connectに関する大規模なアップデートを発表した。本記事ではアップデートの概要を紹介する。
AWSのコンタクトセンターサービスである「Amazon Connect」のユーザーにとって、最新のアップデートで追加されたセグメンテーションツールは、マーケティングチームとの連携を密にし、アウトリーチやアップセルを促進するために役立つ。
AWSが毎年開催しているカンファレンス「re:Invent」で紹介されたConnectの機能の1つである「Generative AI Segmentation」は、CXリーダーが顧客データを検索したり、生成AIにパターンや傾向を発見させたりすることを可能にし、セグメントを発見し、ピッチをパーソナライズするために役立つ。また、このツールはオーディエンスサイズの推定にも活用できる。当然ながら、生成AIによる要約機能などのサポートも含まれている。
Amazon Connect Customer Profilesの既存の機能群と組み合わせることで、クラウド型のサービスとして提供されるコンタクトセンターソリューション(CCaaS)は、マーケティングオートメーションツールと同時に使用される顧客データプラットフォーム(CDP)と一部の機能が重なることになる。
一方、調査企業であるConstellation Researchのリズ・ミラー氏(アナリスト)と、AWSのマイケル・ウォレス氏(米国ソリューションアーキテクチャリーダー)は「AWSがマーケティングチームの領域にサービスを拡大しているわけではない」と述べている。AWSは、顧客データをCX(顧客体験)の流れの中でより役立つものにし、マーケティングとサービス部門の連携を促進しているのだ。
多くのCCaaSベンダーが、GenesysやFive9を含む基本的なマーケティングツールを追加している。ミラー氏は「AWSと8x8は、それらの機能がCDPや他のマーケティングオートメーションツールの代わりになるものではなく、それらのツールを補完するためにあると強調している」と述べた。このようなコンタクトセンターツールは、マーケターやCX戦略のリーダーに対して、CDPのようなアプリケーションを単なるマーケティングデータやキャンペーンのためのツールではなく、組織全体で活用すべきものとして再考するきっかけを与えている。
ミラー氏は「カスタマーサービスデータもマーケターにチャンスを提供する」と述べた。
「長い間、CMO(最高マーケティング責任者)たちは、企業の中に堅牢で価値のある顧客データの源が存在し、そのデータはコンタクトセンターにある可能性が高いという直感を持っていた。それは顧客体験戦略の最前線である。しかし長い間、私たちはそれらのリソースに対する誤解を持っており、また誤用してきた。それらのリソースは、顧客満足度を高める活動においてのみ価値があると誤って認識していたのだ」(ミラー氏)
「CDPは多くの機能を備えているが、今のところ私たちがやりたいことと必ずしも一致していない。Amazon Connectのプロファイルの目的は、顧客体験やエージェント、管理者にとって重要な情報を提供することだ。必要なのは重要な情報だけだ。例えば、注文履歴や連絡履歴は重要だが、それ以外は必要ない。クレジットカード番号も不要で、CDPに保存されるかもしれない他のデータも必要ない」(ウォレス氏)
その他のニュースとして、AWSはQ in Connectのカスタマーサービスエージェントを更新し、特定のトピックに対する応答の生成を制御するカスタムガードレールと、質問に対する応答と意図の検出を監視する管理ツール、規制準拠のために顧客データを保護する機能を追加した。また、Q in Connectは、チャットおよび自動音声応答システム(IVR)のチャンネルと統合された。
後者の機能により、Amazon Connectのユーザーは生成AIを活用したIVRを有効化できるようになった。生成AIを活用したIVRは、「営業は1を、サービスは2を押してください」といったルールベースのメニューツリーに代わるものとなる可能性がある。ルールベースのメニューツリーのようなインタフェースは、製品やサービスの問題ですでに怒りを感じている顧客に、さらにフラストレーションを感じさせる場合がある。
ミラー氏は「生成AIは通話を素早く振り分けたり、場合によってはセルフサービスの回答を提供したりできるものの、AIのトレーニングを慎重に計画し、モデルに使うデータがクリーンで最新であることを確認する必要がある」と述べている。そうでなければ、かえって顧客の不満が高まる可能性があるという。
ウォレス氏によると、数年前に自然言語に対応したIVRシステムを導入しようとした初期の試みは、パンデミック中にベンダーや企業が実用化を急いだために失敗したという。従業員が突然オフィスで働けなくなったタイミングでAIを活用したIVRがひどく失敗し、その結果、世間から強い反発を受けることになった。
音声科学は科学である。正しく機能させるには努力が必要だ。生成AIは、従来のIVRではうまく処理できない発話を修正できる。生成AIを活用したIVRに関する取り組みが多く見られるのは、そこが従来のIVRがうまく動作しないポイントだからだ。私たちは従来のIVRに対して、人間にするように話しかけるが、それらが人間らしさを全く持っていないと気付く」(ウォレス氏)
また、Amazon Connectに関する最新リリースには、チャットチャネル上でクレジットカードデータを処理するためのツールや、ラテンアメリカなどの地域で人気のあるメッセージングアプリ「WhatsApp」との強固な統合も含まれていた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
製品カタログや技術資料、導入事例など、IT導入の課題解決に役立つ資料を簡単に入手できます。