山口県が全公立中学校に生成AI「スタディポケット」を導入する。生成AIにより生徒の問題解決能力を高め、教育の質の向上に貢献することが期待されている。
スタディポケットは2025年4月8日、山口県内全ての公立中学校(特別支援学校中学部を含む)が学校向け生成AIサービス「スタディポケット」を導入すると発表した。利用するのは153校の生徒と教職員、約3万3000人に上る。2025年5月から順次導入される予定で、都道府県単位で全公立中学校に導入される全国で初めての事例となる。
この取り組みは山口県教育委員会が主導する「生成AIを活用した家庭と学校の学びの好循環創出事業」の一環として行われる。2024年度には県内7校をモデル校として実証実験を行い、一定の成果が確認されたことから2025年度から全校展開が正式に決定された。
2024年度のモデル校での実証結果によると、生成AIの活用は生徒の個別指導や学び直し、問題解決力の向上に寄与していると評価された。周南市立住吉中学校では、生徒の87.9%が「スタディポケットは学習に役立った」と回答しており、対話によって理解を深めたり、アイデアを得たりする機会が増えているという。「生成AIを使うと答えではなく考える材料をくれる。そこから考えるのが面白い」といった意見もあり、生徒自身の思考力や探究心を育む効果が見られた。
岩国市立岩国西中学校では生成AIが検索ツールにとどまらず、対話を通じて思考を深める学習パートナーとして機能している点が注目されている。山口市立二島中学校では生徒会役員選挙の演説原稿の作成やアンケート集計など授業外の活動にも活用されていることが報告されている。宇部市立黒石中学校では、生徒が生成AIへの問いかけを工夫することで深い理解につながるという意見や、英語学習において文法チェックや単語帳作成にも活用されていることが報告されている。
生成AIサービス「スタディポケット」の試験導入では、保護者からも家庭学習の質の向上や子供の学習意欲の高まりなど、ポジティブな反応が多数寄せられており、生成AIの導入が生徒の学習姿勢だけでなく家庭での教育環境にも好影響をもたらしていることがうかがえる。
山口県の事例は、生成AIを教育現場に本格導入する全国の先進モデルとして注目を集めることが予想される。個別最適化学びの実現と、教師の指導支援の新たな形を提示する意義深い試みとして、今後の展開に期待が寄せられている。
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