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世界を騒がせた「Azure」障害、Microsoftは沈黙も、ただの障害ではなかった?:847th Lap

2025年9月、「Microsoft Azure」で通信遅延や接続障害が広範囲に発生した。多くのユーザーに影響が及び混乱が広がったが、原因は明かされず、Microsoftは沈黙を続けている。一体何があったのか。

» 2025年09月19日 07時00分 公開
[キーマンズネット]

 日々当たり前のように利用しているクラウドサービスやインターネット通信は、実は非常に複雑で繊細な仕組みの上に成り立っている。普段は意識することもないが、ひとたび何かが起これば、その影響は世界中に一気に広がることもある。

 2025年9月、Microsoftのクラウドサービス「Microsoft Azure」(Azure)に通信遅延や接続障害の報告が相次ぎ、一部のユーザーに影響が広がった。問題は一地域にとどまらず広範囲でネットワークの不安定さが確認され、企業やユーザーに混乱が生じた。

 Azureのネットワーク障害の原因は明らかになったものの、Microsoftはその原因を明言しようとしない。一体、何があったのか?

 インターネットは、海の底に張り巡らされた光ファイバーケーブルで世界中とつながっている。これらのケーブルは意外なほど細く、ひとたび事故やトラブルが起これば、通信はあっさりと遮断されてしまう。

 通常は、別のルートを使って通信を迂回(うかい)させることで大きな障害を避けている。だが、世界の通信の要となる一部の海域では、そう簡単にはいかない。なかでも紅海(Red Sea)は、アジアと欧州を結ぶ海底ケーブルのボトルネックであり、いわばインターネットのアキレス腱ともいえる場所だ。

 インド洋北東部、アラビア半島とアフリカ大陸に挟まれた紅海は、北はスエズ運河を介して地中海と、南はバブ・エル・マンデブ海峡を通じてインド洋とつながる、国際貿易にとって極めて重要な航路だ。

 2025年9月6日、Microsoftはこの紅海において複数の海底ケーブルが切断され、Azureの通信環境に遅延などの影響が出る可能性があると発表した。Azureのステータスページによると、「中東を経由しアジアやヨーロッパに向かうトラフィックに影響が出ており、Azureサービス全体への波及も懸念される」という。ただし、ケーブルが切断された原因について、Microsoftは明言を避けている。

 この障害はAzureに限らず、インターネット全体にも広がっており、世界中のインターネット接続をリアルタイムで監視する独立系団体のNetBlocksも声明を発表した。「インド、パキスタン、アラブ首長国連邦(UAE)、サウジアラビアなど複数の国で接続の劣化が確認された」とした。NetBlocksによれば、切断されたのはサウジアラビア・ジッダ近郊を通る「SEA-ME-WE 4」および「I-ME-WE」の他、「FALCON(GCX)」「Europe-India Gateway」などの主要ケーブルも含まれる可能性がある。

 この問題は、同日Bloombergが報じた記事によって拡散され、9月8日にはAP通信がより詳細な内容を掲載したことで、原因についての議論が広がった。

 通常、海底ケーブルが切断された原因として、船舶が誤ってアンカー(いかり)を下ろしたケースなどが考えられる。だが、今回については、周辺国の地政学的リスクが背景にある可能性が示唆されている。

 AP通信の報道によれば、ケーブルの切断はイエメンの反政府武装勢力「フーシ派」による紅海での軍事行動の影響とみられる。フーシ派は「ガザ地区でのハマスとの戦争を終わらせるため、イスラエルに圧力をかける目的で行動している」と主張するが、ケーブル破壊との直接的な関与については言及していない。

 なお、紅海での海底ケーブル切断とそれに伴う通信障害は2024年にも発生しており、このときは「フーシ派の作戦行動に起因する事故」との見方が強かった。しかし、2025年に入り地域の緊張は一層高まり、今回は「意図的な攻撃ではないか」という懸念も浮上している。

 紅海はアジアとヨーロッパを結ぶ海底ケーブルの要衝であり、ひとたび事故や紛争が発生すれば、国際的なインターネット通信に深刻な影響が及ぶリスクがある。今後も地政学的な不安が続くことが予想される中、国際社会はこうしたインフラの脆弱性への対策を急ぐ必要がある。

 インターネットの分断が、これ以上の世界の分断につながらないことを願うばかりだ。


上司X

上司X: 紅海で海底通信ケーブルが切断されたことでインターネット通信が一部地域で切断、遅延し、Azureにも影響が及んだという話だよ。


ブラックピット

ブラックピット: 紅海というと、アフリカ大陸の右上でアラビア半島と挟まれているあそこですね。


上司X

上司X: ああ。スエズ運河があることでアフリカ大陸を大回りすることなく地中海とインド洋を最短距離でつなぐ、海運の要所だ。


ブラックピット

ブラックピット: 最短距離だからこそ、海底通信ケーブルも紅海を通すってワケですか。


上司X

上司X: そういうわけだ。ちょうど今、周囲の国家間でいろいろとあるからなあ。Microsoftが最初の発表時にトラブルの理由について口を濁したのも理解できないでもない。


ブラックピット

ブラックピット: なるほど。でも、以前にも幾度かケーブル切断はあったようですから、地政学的リスクを回避するためにも紅海を回避した通信ケーブルの敷設はできないものですかねえ。


上司X

上司X: 地上ルートは国境をまたぐことになるから、それはそれでリスクが生じるのだろう。紅海に海底通信ケーブルを敷設するというのは、理にかなっているということだ。


ブラックピット

ブラックピット: 世界のインターネットに影響することですからね。通信ケーブルが傷つけられるようなことはなくなってほしいものです。


上司X

上司X: 国家間の諍いは常にあるだろうが、それによって世界的に公平であるべきインターネットに影響が及ぶようなことは極力ない方がいいのは間違いない。インターネットにダメージを与えることが攻撃手段にならないような配慮を望みたいところだな。

川柳

ブラックピット(本名非公開)

ブラックピット

年齢:36歳(独身)
所属:某企業SE(入社6年目)

昔レーサーに憧れ、夢見ていたが断念した経歴を持つ(中学生の時にゲームセンターのレーシングゲームで全国1位を取り、なんとなく自分ならイケる気がしてしまった)。愛車は黒のスカイライン。憧れはGTR。車とF1観戦が趣味。笑いはもっぱらシュールなネタが好き。

上司X(本名なぜか非公開)

上司X

年齢:46歳
所属:某企業システム部長(かなりのITベテラン)

中学生のときに秋葉原のBit-INN(ビットイン)で見たTK-80に魅せられITの世界に入る。以来ITひと筋。もともと車が趣味だったが、ブラックピットの影響で、つい最近F1にはまる。愛車はGTR(でも中古らしい)。人懐っこく、面倒見が良い性格。


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